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67.勇者神野の物語〜その4〜





 「お、戻ってきたね〜。遅いよ〜。もうみんな集まってるよ〜?」


 領主の屋敷の前には新以外にマリーちゃんともう1人、あと姫様と団長とジントと結城が待っていた。

 なぜ結城がいるのかには少し疑問があるが、とにかく俺がか最後になってしまったようだ。



 「ああ、わりぃ。ちょっと宿が予想外で」

 「予想外?まぁいいや。さ、行くよ〜」

  

 そう言って新が歩き出した。その手にはもう1人の女の子。その後ろを姫様とマリーちゃんが手をつないで歩き、その後を俺らが追う。

 中央の広場まで戻ってくると左に曲がり、そのまま入口あたりまで歩いて右に曲がった。



 「ちょっと待った、新ちゃん。もしかして…これか?」 

 「そうだけど?言ったじゃん富豪商人の別荘だってさ〜」

 「いや、聞いてたけどな…」


 そこには三階建の貴族の屋敷と大差ない、というかむしろ庭や外見ではこっちの方が高貴に見えるような家が佇んでいた。

 一体全体いくらしたんだよ…



 「さ、入って〜。ただいま〜、ロメ」

 「おかえりなさいませ、主」


 新が入口のドアを開けるとそこにはかなり若く見える青年の執事が立っていた。

 すでに待ってたってことは、もしかして新が帰ってくるのをずっと待ってたのか?…いや、ないよな?



 「さてと、どの部屋にしようか〜…あ、ロメ、1階の客間の厨房横って空いてたっけ?」

 「はい、空いてますよ。そこにいたしますか?」

 「うん。じゃあ、飲み物とか運んできて〜」

 「承知しました」

 「さ、行こうか」


 そう言って新は歩き出した。

 俺らも恐る恐る歩き出す。俺らの中で普通にしているのは姫様と団長くらいだ。


 少し歩いてついた部屋は卵色の壁紙の落ち着いた感じの部屋だった。

 そこに白いテーブルクロスの敷かれた大きな円卓と凝った装飾のされた椅子が並んでいる。



 「ささ、適当に座って〜」

 

 促されて俺らは椅子に座った。

 新の左右に新の連れていた少女2人、マリーちゃんの横に姫様、その横に団長、その横にジント、反対側の少女の隣に結城、その横に俺が座った。それでもまだいくつか椅子が余っている。



 「さてと、じゃあお話を始めようか。まずなんだけど、なんでクロリスがいるの?ねぇレイジュ〜、僕は聞いてないよ〜?」

 「いやはや、シン様には伝わってるものと思っていましたからな」

 「まったく。で、どうしているのさ?別に悪いとは言わないけど、魔法とかの勉強はいいの?」

 「その件についてはクロリス様が直々にご説明する方がよろしいかと」

 「はぁ〜…じゃあそうして。クロリス、魔法とかの勉強はどうしたの?」

 「はい。お父様…いえ、国王様がシンさまの方がお詳しいと仰せられましたので、私はシンさまの元に学びに参りました」

 「…なるほどね。要するに僕に勉強を教えてあげてくれってことかな?まったくフレルドめ。あの臆病者のおぼっちゃまが随分と図々しくなったもんだね。まぁ喜ばしいことだけど。まぁいいよ。暇があったらその時間に教えてあげるかな。とりあえず、その話は後でしようか」


 今国王を呼び捨てにしてなかったか?というかおぼっちゃまって言わなかったか?



 「わかりました」

 「で、クロリスはどうするの?僕の家にいるの?レイジュたちが面倒見るの?」

 「できればシン様にとのことですね」

 「ははは〜。まぁいいよ。マリーも友達が一緒にいられるんだから悪いことはないしね?」

 「うん…」

 「さて。マリー、クロリス連れてどこか遊びに行っておいで。テラも行ってもいいよ」

 「わかったの!」


 マリーちゃんは姫様とトテトテと部屋を出て何処かに行った。

 テラと呼ばれた女の子はうらやましそうにそれを見て、それから俺の方を見た。

 …ん?なんで俺の方見たんだ?



 「…あ、そっか。テラは神のくんのこと知ってたっけ」

 「は?俺その子とあったことあるっけ?」

 「うわぁ〜。女の子を忘れるなんて神野くんサイテー」

 「いやいや、マジで⁉︎会ったことあるっけ?」

 「ま、分からなくって当然だけどね。僕のポケットにいたスライム、覚えてる?」

 「ん?突然なんだよ。まぁ覚えてるけど」

 「そのスライムだよ〜」


 新がその女の子の頭を撫でながら俺に言った。

 うん。どういうことだこれ?まったく現状が理解できない。


 

 「いや、スライムってその子どう見ても人だろ⁉︎」

 「ほら、神野くんならわかるでしょ?よく神野くんが勧めてくるやつに”人化”ってあるでしょ?あの辺と同じだよ〜」

 「な、なるほど」


 まぁ異世界だからな。

 まぁあんなラノベみたいに楽しいだけの世界じゃないってことはよく知ってるし、空想が異世界に来ても空想だったってことにちょっとショックを覚えたけど、異世界だからな。

 今でもちょっと憧れたりもするけどな!



 「さ、じゃあ本題に入ろうか。まずはどの話が聞きたい?この街について?こないだの戦争の戦闘?」

 「なんかまるでしんちゃんが全部よく知ってるみたいね。しんちゃんだって来たの数週間前よね?」

 「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ〜。で、何から聞きたい?一応レイジュとは多少話してるからとりあえず街の話からするのがいいと思うけど」

 「それでいいんじゃないのか?」

 「そう?じゃあそうするね〜。まずこの街について話そうか。今、この街は変化し始めている。多分こんな末端の街になんか興味なかったと思うからこの街の外装を除いた話をするよ。この街は一応要塞都市ってことで有名だけど、明確にいうとそんなに丈夫なわけじゃない。堀だって橋を渡そうと思えば魔法でどうにかできちゃうし、外壁も壊そうと思えば大き目の魔法何発かで壊れる。この街本来の優位は攻撃しやすく近寄らせづらいことにある。って言うのがある程度知ってれば知れてる情報だと思うよ。でしょ?レイジュ」

 「そうですな。と言うよりも私がその程度しか知らなかったというのが正確ですがね」


 いや、悪い。そこそこ調べた方だけど俺はそんなに知らなかったわ。

 まぁ多分新がどうせ俺らが調べてないだろうと思って教えてくれたんだとは思うけど。



 「まぁということだから普通は攻めづらい場所と思われがちだね。だけど、内部がダメダメなんだよ。ギルドは周囲に強い魔物がでないうえに領主が強い冒険者を集めようとしないからへなちょこ。というか攻められないと思ってたから兵士もへなちょこ。スラム街は比較的まともだけどそれでも腑抜け。おかげでこの街自体が弱いんだよ。だから今のところ兵士の訓練をレイジュと僕の眷属、ギルドでそこそこな冒険者の手で初心者講座を開講、そこそこな冒険者たちはレイジュの軍に手伝わせて強化中。そんな感じに街自体を強化してる。それに重ねて街の中の道具屋とか防具屋とかの状態を調査したんだけど、こっちはそこそこ悪くなかった。ただし、店主たちの高齢化が見れたから有志を募って商会連合を作ってスラム街の子供を中心に次世代の技術者を育成中。あとは定期的にギルドで領主、ギルド長、スラムのボス、それに僕で会議を開いて情報を共有して街を強化しているのが現状だよ。あ、ただ平和ボケしてたから趣味に近い店が大量にあるよ。しかもかなり質がいい奴。服とか買うならこの街でするといいよ。まぁとりあえず街についてはそんなとこ」

 「そ、そんなにも調べていたのか?」

 「えっと君だれだっけ?レイジュの部下の人…いいや、部下Aで」

 「ジントだ。この数週間の間にそこまで調べ、そしてあなたが運営しているのか?」

 「うん、まぁね。というか、そうしないと街が勝手に皇国に落ちちゃいそうだったから。僕の家があるのにそれは困るからさ」


 なんとも新らしいふざけた理由だな…

 まぁ多分自分の身近な人を苦しめたくないとかが本来の理由だと思うけど。



 「それって、しんちゃんがそれを全部運営してるの?」

 「うん。どうせ暇だから独り立ちするまでは手伝うつもりだよ〜。さて、何か質問はある?なければ次に進むよ?」

 「ひとついいだろうか?」

 「どうぞジントくん」

 「く、くん…先ほどスラムと言ったが、そこに危険性はないのか?」

 「大丈夫だよ〜。たまにいる悪い奴はちょっと話ししてきたから、どの街でも起こるぐらいの事件しか起きないし。なんなら会議にでも参加すればいいよ。みんなお金がないとか元孤児なだけで根っから悪い人はいないから」

 「そ、そうか」

 「他にはない〜?」


 気にはなるが、話がそれるようなことしかないので俺は首を振った。

 他の人も首を振った。



 「そ。じゃあ次にいこうか。このあいだの戦争のことだね。このあいだの戦争は多分想像してると思うけど

君らが来るのに不意を打とうというのが作戦だったみたいだよ。そのために大雪が来る少し前にそこにところにある丘の上に陣地を構えて攻め込んできた。向こうは1000近い兵でこっちは500程度。まぁ途中経過は除くけど、2日は死者はそこまで出てない程度でどうにか防衛した…というかさせてた。この街が想像以上にダメダメたった話しはさっきしたでしょ?そのおかげでその街の利を生かせず、仕方なく地上で戦うハメになったのが主な原因だけど、もうひとつ理由があってね敵が坂を利用して岩を大量に転がしてくるなんていうたち悪い攻撃に出てきたから怪我人が増えてね。おかげで戦える人が少なかったんだよ。まぁでも向こうが呼んだ2000人くらいの援軍分まではしっかり防衛しきったよ」

 「いや、よく防衛しきれたな…」


 つまり6倍の敵をどうにかしたってことだろ?

 単純に1人で6人分働くことになる。よくそんな命令聞いたな…



 「ではまた攻めてくるのか?」

 「いや、それはないよ。多分向こうの目的はそれ以外にも勇者を戦争に慣らすってのがあったんだと思うんだけど、援軍まで呼ばないといけない状況になったせいで自分たちが弱いことが勇者に露見しかけたからね。次からはしっかりとした戦争を仕掛けてくる。ただしこの街以外にね」

 「それはまた何故?」

 「援軍を含めて向こうの軍は全滅したからね」

 「はぇ?」

 「だから全滅したんだって」

 「ちょっと待って。それってどういうことなの?やったことを簡潔にでいいから説明してくれない?」

 「了解〜。2日間は街の人だけで頑張ってもらった。僕が司令塔に指示を出して、そこから色々とやってね。それで皇国側にこの街の人だけでも頑張れば戦えるってことが伝わったでしょ?しかもあんな少量で。で、3日目にはさすがに街の人だけじゃどうしようのない量の援軍が来たから僕が皆殺しにした。以上」

 「え、えっと…2日目まではかろうじてわかるわ。3日目は一体どういうことなの?」

 「そのままだよ。言葉通り皆殺し。あ、少し残してたっけ。向こうの勇者のみ捕獲したよ」


 とんでもない発言をしてるのだが、新はいたって普通のことのように話す。

 やっぱり…いや、考えるのはやめよう。



 「それではまるであなたが2000もの軍勢と1人で戦い、その上で倒したように聞こえるのだが?」

 「うん、そうだよ〜。まぁそんなのはレイジュと後で話して。話を続けるよ。1つ聞くけど、2000の軍を1人で壊滅させるような奴のいる街に攻めようと思う?」

 「思…わないな」

 「でしょ?ということでこの街に攻め入ることはない。だから安心して陣営として利用するといいよ。それに向こうからこっちに攻め入る時は無理やり山を越えたり川を渡ったりしない限りはこの街からわかるからね」

 「で、その捕獲した勇者ってのがさっき俺に言ってたやつか?」

 「うん。ロメ、中に入れてくれる?」

 「承知しました」


 俺の後ろにいつの間にか待機していた執事がドアを開ける。

 するとその向こうには4人の召喚された仲間と思われる人がいた。



 「さ、入って〜。で、彼らが向こう側に召喚された勇者。向こうではこっちが悪い的なことを言って召喚された勇者を戦わせようとしてる。事実を話して説得すれば大抵はこっちの陣営に入ると思うからこれからは敵に勇者がいる時はちょっと話しかけるっていうのも1つの手だって覚えておくといいよ。で、彼らにはすでに実際のことを話してる。その上でこちらに協力したいって言うんだけど、どう?一応レイジュには了解を得てる。後は君ら次第。ああ、あと神野くんと結城さんを呼んだのは一応の監視ってことでできれば同じ宿とかにしてもらえるといいなって思ったからだよ」

 「あー…少し話してみてもいいか?さすがにどんな奴かもわからずに信用はできないし」

 「そうね。話しをする時間をもらえるといいわ」

 「了解〜。じゃ、この話しは一度保留しておくね。あと僕から話しておくべきことはとりあえずないかな。何か質問はある?なければ僕から一つ聞きたいことがある以外話は終わりなんだけど」

 「じゃあ私からいい?」

 「どうぞ〜」

 「ステータス…見せてくれない?しんちゃんは魔物使いでしょ?それだとはいえど1人でそんな大量の人に勝ったってのが…」

 「ああ、別にいいよ〜…ていうか、偽装してないかって話しでしょ?すでに【鑑定】してから言われてもなんだけど偽装はしてないよ。これが僕のステータス。なんなら開示しようか?『ステータス』ほら」


 新は自分の前にステータスを表示して俺らにそれを見せてくる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前:松井 新一郎

 種族:人

 性別:男

 年齢:16

 称号:異界人 天使の加護 白き暴虐

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 職業:魔物使い レベル:35 

               状態:通常

 筋力:77

 体力:152

 耐性:89

 敏捷:82

 魔力:337

 知力:101

 属性:闇 風

 種族スキル:

 スキル:【武器創造Lv.max】【眷属化Lv.max】

【天歩Lv.max】【威圧Lv.max】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ステータス低くね?前に来た時よりは高いだろうけど、少なくともその時の俺よりも低い。

 ただ、スキルが全部Lv.maxだ。それにまた訳のわからない称号持ってるし。また何かしたのか?ってか今話してる戦争で手に入れたのか?



 「本当にそのまま…これでどう戦うのよ?召喚するのにも魔力はいるんでしょ?それにしたって魔力は少ないわ。こんなので戦って勝てるなんて思えない。しっかり説明して」

 「え〜。めんどくさ。というか僕今回眷属誰も呼んでないよ。普通に僕だけで戦ったし。そんなに知りたかったら街で聞けばいいじゃん。わりと有名だよ」

 「…私と模擬戦してくれない?」

 「やだ、面倒くさい。第一、向こうで僕が何やったか知ってるんだから戦った結果ぐらい予想できるでしょ?魔術師は僕の敵じゃないよ」

 「ふむ。ならば私と模擬戦をしてはくれないか?」

 「えっとジントくんだっけ?まぁいいや。とりあえずこの話も後回しにしよう。したかったら明日ギルドに来て。昼過ぎぐらいでいいいから」

 「わかった」

 「じゃあ、他にある?ないならこれからどうするのかだけ聞きたいんだけど…ああ、神野くんたちはいなくってもいいね。ロメ、神野くんたちを…そうだね〜。この2つ隣の食堂の横の部屋空いてるよね?そこに案内してあげて」

 「承知しました」

 「じゃあ、そっちはそっちで話してきてね〜」

 「おう」


 俺は執事に連れられて部屋を変える。


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