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55.面接しましょう 〜その2〜


 「あー、入ってもいいか?」

 「どうぞ〜」


 次に入ってきたのはタガーと長剣の2本を持った男。背はそこそこあって、髪は左右を刈り上げてツーブロックにしたイケてる感じ。見た目的には少し威圧的とも言える。

 だが気の抜けた声のせいであんまり話すのは威圧的じゃなくなりそうだね。



 「座っていいんか?」

 「うん。座って〜」

 「じゃ、遠慮なくっと」


 男はどっかりと椅子に座った。足を組んでなんか偉そうに見える。

 


 「さてと、じゃあ面接をはじめま〜す」

 「おーう」

 「じゃあ名前は?」

 「俺の名前は大橋夏樹だ。女っぽい名前だろう?」

 「そうだね〜。見た目とのギャップで笑いそう」

 「うっせぇよ。そういやお前は?」

 「あれ?ちゃんと名乗ったよ?君らと最初に会った時にさ〜」

 「んー?あ、ああ。確かに名乗ってたな。確か…なんだったっけか?」

 「忘れるなんてひどいな〜」


 記憶能力が低いのかな?

 まぁ最初が衝撃的だったかもしれないし、覚えてなくってもしょうがないかな。



 「わりぃ。で、なんだっけ?名前」

 「僕は松井新一郎。この世界だとネロって名乗ってるよ」

 「へー。じゃあ、なんて呼びゃいいんだ?」

 「好きに呼んでいいよ〜」

 「了解っと。じゃあ新一って呼ぶわ」

 「はいはい。さて、質問を始めるね〜。まず趣味は?」

 「趣味…ってマジで面接みたいだな。んー、趣味か。俺の趣味は…プラモデルだな。最近は戦車にハマってる」

 「ふ〜ん。やっぱり見た目に合わないね〜。バイクとかもっとやんちゃしてそうなのに」

 「そうかー?」

 「うん。じゃあ特技は?」

 「あんまねぇかな?一応、走るのは得意だけどよ」

 「へ〜。あ、もしかして大橋くんも野球部?」


 野球部同士でまとまってるとかならあの鼻血くんが中心だったのもうなずける。



 「お?よくわかったな。ちなみに速水と竹内とさつきはマネージャー」

 「ふ〜ん。じゃあみんな野球部つながりで一緒にいたんだ〜。じゃあもしかして死んじゃった他の二人も?」

 「いや。あいつらはこっちに来て初めてしゃべったな。一緒にここに来てたのはたまたまだったぞ」

 「じゃあ死んでもなんとも思わなかったわけだ?」

 「あ…いや、もちろんそうじゃねぇんだけど、なんつうか、その…な?死んだっていう実感がねぇんだ。俺らともあんま仲良くしてたわけじゃねぇし、戦ってる最中に突然いなくなっちまったから、もしかしたらどっかで生きてるんじゃねぇかって」

 「そっか。まぁ生きてれば帰った時に会えるかもしれないしね」

 「そうだな」

 「ところで、さっき”さつき”って1人だけ呼び捨てだったけどさ…付き合ってるの?」


 今の雰囲気をぶち壊すようだけど、僕は誰が死のうとどうせ帰ったら会えることを知ってるし、それ以前に身も知らずの誰かが死のうと気にも留めないからね。


 僕の質問に大橋がちょっと顔を赤らめる。

 男のそんなん見ても誰も喜ばないよ?



 「あ、あはは。うっかりしてたわ。誰にも言わないでくれよ?うちの野球部のマドンナが俺と付き合ってたなんて知られたら俺の身があぶねぇ」

 「ふ〜ん。じゃあ今日貸してあげる部屋を一緒にしてあげよう。ちゃんと防音の部屋にしておくからね?」

 「いや、何をしろと⁉︎別にそんなことは…その、だな…えっと」

 「ん?そんなことって何かな?僕はバレないようちょっと気を使って話し声が廊下に聞こえないようにするだけなんだけど?」

 「うっ…」

 「ははは〜。面白いね。あとで彼女さんの方とも話しておくよ」

 「新一、お前楽しんでるだろー!」

 「ははは〜、当然じゃないのさ〜。男女の惚れた腫れたは僕の好物だからね〜」

 「言い切るなよっ!はぁ…」

 「ははは〜。まぁ、さっきのは冗談として…あ、一緒の方がいい?それなら一緒にしてあげるけど?」

 「…頼むわ」

 「正直でよろしい」


 面白いね〜。ちゃんと一緒にしておいてあげよう。

 あ、その場合僕が部屋をあてがう作業をしないといけなくなっちゃうのか。ちゃんと最後まで2人を残して部屋を割り当てないとだし。

 面倒だけどまぁいいか。面白いからね。



 「うぅぅ…こいつ絶対バラしちゃいけなかったやつだわー…」

 「もう遅いよ〜。さて、じゃあ話を進めようか。こっちの世界で職業は何を取ったの?」

 「えっと、こいう情報ってあんま言いふらさねぇ方がいいんじゃないのか?」

 「うん。まぁ君らは一応僕のおかげで処刑されずに済んでるわけだし、今僕が君らを皇国の兵だって詰所に差し出せば君ら死んじゃうし?」

 「脅しかよっ。卑怯だなー、おい」

 「ははは〜。まぁそれは冗談として、君らの情報を知っておきたいのは事実だね。これがあるのとないのでは君らのこれからをどうするかを考えるのに関わるからね」

 「あー…一応聞いとくが、どうするつもりなん?」

 「聞きたい〜?」

 「なんか嫌な予感しかしねぇ…」

 「ふふふ〜。まぁ能力値次第で考えないといけない場合もあるわけだしさ」


 どうせあとで話すけど、最初の判断は各自に任せたいんだよね。

 というわけでできるだけ聞かない方がいいような雰囲気を出しておく。



 「あー、もういいや。俺の職業は聖剣士だよ」

 「ほ〜。なかなかいい職業じゃん。結構ポイント高かったと思うんだけどな〜。ステータスとかスキルとかちゃんと取ってる?」

 「取ってるよ」

 「どんな配分?筋力メインとか、魔力メインとか」

 「だいたいバランス良くだな。強いて言うと魔力と体力が多め」

 「スキルは?聖剣顕現とかは必須で…あとは剣術とか体術とか?」

 「ああ、魔力操作とか便利そうなのを入れたのと剣術だけ。魔法は光を取ってる」

 「随分細かくバラしちゃうね。いいの〜?」

 「新一は俺らを悪いようにするつもりはないんだろ?なら、言っちまっても問題はねぇだろ。その方がちゃんとしてもらえるような気がした。以上」


 うん。後半は正解だね。

 残念ながら場合によっては悪いようにするよ?この街の怒りの矛先にしたりとか。

 


 「じゃあ最後。これからどうするつもりでいる?」

 「って、新一が勝手にどうにかするんじゃねぇの?」

 「嫌だな〜。一応参考程度に聞くに決まってるじゃん。流石に無理だってなったときは僕が行き先を強制的に設定するわけなんだけどさ」

 「おおう。これからかー。あんまりないんだよな、そういうのって」

 「ふ〜ん。それは今まで思ってたことが嘘だったから?」

 「いや、それが嘘だってのは薄々思ってはいたんだけどな。いやさすがに都合が良すぎるだろ?あんな話しんじんのはアホだけだ」

 「じゃあ君のお仲間はほとんどアホだね」

 「おう。アホだ」


 うわぁ。すっぱり言い切っちゃったよ。

 こいつも相当アホなんじゃないの?ちょっと困らせてやろうか。



 「ちなみにこの壁って結構薄くって向こうに結構声が聞こえるんだよ?」

 「いや、嘘だろ。さっき聞こえてなかったし」

 「さっきは魔法で聞こえなくしてたからね。でも流石に僕の魔力も尽きちゃってさ〜」

 「え…⁉︎マジで?嘘だよな?な?」

 「ははは〜」

 「だよな、嘘だよなー」

 「さてと…で、どうしたい?」


 僕はすっと視線を逸らしてから話を続ける。



 「ちょっと待てよー!否定しろよー!」

 「ははは〜。冗談だよ。まだ魔法貼ってるから安心して」

 「ふぅ…」


 焦りまくってて見ものだった。

 まぁこいつはこいつの意思に任せて良さそうだな。任せるって言われれば神野たちのところに行くか、ここに残って戦争が終わるまで冒険者とかをやるかの選択肢をやるつもりだけど。



 「で、本当にどうしたい?皇国に帰る?王国側と合流する?自分で旅にでも出る?」

 「そうだな…できればさつきを危険にさらしたくねぇんだわ。けどこの世界でそんな安全な場所なんてねぇだろ?」

 「あるよ〜。僕の保護下」

 「いやー、それは論外だわ。確かにあんなのと戦って勝てるやつなんていねぇだろうけどさ。で、多分守るんなら王国の奴等と合流するのがいいんじゃねぇかって思うんだよ」

 「うん。確かにそうだね。多分いい情報源ってことで喜んで受け入れてもらえると思うよ〜」

 「そうか。ま、一応参考にするんだろ?頼むわ。俺はさつきと一緒にいてぇし」

 「うん。じゃ、次を呼んできてくれる?」

 「おう」

 「あ、ちなみに次って君の彼女さん?」

 「…おう」


 ちょっと照れながら出て行った。

 なんか良い奴そうだね。憎めないようなそんな感じ。


 僕はポーチからクッキーの残りを出してかじっていると扉がノックされた。



 「入って良いですか?」

 「うん。どうぞ〜」

 「失礼します…」


 扉が開いてうっすら茶色がかった長髪の少女が入ってくる。 

 結構長身でスラリとして綺麗。確かに野球部とかにいればマドンナだね。



 「さ、座って〜」

 「はい…ところで、何を話すんでしょうか?随分となっちゃんが帰ってくるのが遅かったので」

 「なっちゃん?あ、大橋くんね〜。基本的にこれからの君らをどうするかについてだよ。ついでにどんな人柄かも知っておきたいかなって」

 「そうですか…」


 そう言うと壁の向こうのほうへ目線を向けた。


 なんというか話しづらい。

 と言うか僕が大橋くんって言った瞬間の目つきが怖かった。何これヤンデレとか?



 「まぁさっさと終わらせようか。まず名前は?」

 「大野颯姫です」

 「ところで大橋くんとは付き合って長いの?」

 「中学生の時からです。その、昔から仲がよかったので」

 「ふ〜ん。幼馴染とか?」

 「はい…」

 「ははは〜。まぁわかるよ。僕にも幼馴染がいるし。どうせ気づいてもらえなかったんでしょ?」

 「そうなんです。私がこんなにも想っているのに…」

 

 目が怖いよ〜。



 「じゃあ一緒になれてよかったね〜」

 「はい。本当に、よかったです…」

 「さて、じゃあ話を進めようか。趣味は?」

 「料理です。毎日お弁当を作って美味しいって言ってもらえて…」

 「そ、そうなんだ。で、この世界で取ってる職業は?」


 それって料理じゃなくって美味しいって言ってもらうほうだよね?それ趣味じゃないよね?



 「魔女です」

 「へぇ、珍しいものを取ったんだね。となるとスキルとかは魔法関連?」

 「いえ、サポートに特化したものです」

 「およよ?それだと戦えないじゃん。いいの?」

 「はい。だってなっちゃんが守ってくれますから…うふふ」

 「あ〜、そう。うん」


 というかこれ普通に野球部内でばれてんじゃないの?

 なんか絶対普通に大橋とビッタリくっついてそうだしさ。



 「それになっちゃんも私を守るって言ってくれましたし…」

 「ああ、さっきも言ってたよ。君を危険な目にあわせたくないってさ」

 「え…?」

 「え?」

 「聞きたかったです…どうして私の前で言ってくれないの…?」

 「あ、そう。なんかもういいや。うん。というか本当野球部内でバレないようにしたいとか言ってたのにこれじゃあバレるような気がするんだけど…」

 「大丈夫ですよ。だってなっちゃんがそう言ってるんですから、私が協力しないわけがないじゃないですか。当然ですよ…ねぇ?」

 「ははは〜…もう最後の質問ね。これからどうしたい?」

 「なっちゃんと、一緒にいたいです。それ以外はありません」

 「はぁ…一応聞くけど、一緒にいられなかったらどうするの?」

 「一緒にいます」

 「答えになってないよ〜…」


 ダメだわ〜。ぞっこんだね。

 うん。大橋、よかったね。きっと一緒にいたいっていうお願いは叶うよ。



 「あ、そうだった。今日貸してあげる部屋、大橋くんと一緒だよ〜。よかったね」

 「本当ですか?…うふ、うふふ」

 「うん。大橋くんが一緒がいいってさ〜」

 「うふふ、うふ。なっちゃんが…うふふふふ…」

 「じゃ、とりあえず次の人呼んできてくれる?」

 「うふふ…なっちゃん。一緒に…」

 「お〜い」


 ダメだ。トリップしてる。

 どうしようか?



 「隣の部屋で大橋くんが待ってるよ〜」

 「はっ…!次の人ですね。任せてください。急いで呼びに行きます」


 ものすごい勢いで部屋から出て行った。 


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