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49.夜の街へ繰り出しましょう



 「おやすみ。マリー」


 僕はマリーの手を僕の腕からそっと振りほどく。

 夕食を食べ、マリーを風呂に入れて着替えさせて寝付かせたところで午後9時半。子供は寝る時間です。

 

 僕は部屋から出る。



 「さてと。じゃあ出かけますかな〜」


 夜中にやることがないんだから外に出たっていいじゃん?

 ということで僕はそのまま1階に下りる。


 

 「主、お出かけですか?」

 「うん。ちょっと出かけてくるね〜。マリーの警護はアルドによろしく。テラにはばれないように…ってもう寝てるかな?」

 「ええ。では行ってらっしゃいませ」


 僕は相変わらず緊張感全くない装備で家を出る。

 どこから見ても普通のローブに普通のシャツに普通のズボンに普通のブーツ。いや、実際ちょっと修復機能と浄化機能が付いていることを除けば普通のものなんだけどさ。

 ああ、それから息吹が剣釣りについてて、腰のベルトにポーチが3つついてるぐらいかな。

 いたって普通の冒険者だよ。能力値は別としてさ。



 「さて、どこから行こうかな〜」


 昼間のうちに目星はつけてきたのだが、どこから行こうかちょっと迷う。だってどこに行っても結構楽しそうだったし、ハズレがなさそうだったしさ。


 

 「まぁ、一番近いからあそこからにしようかな〜」


 僕は家を出てすぐの道を左折する。

 そこはオレンジ色に近い街灯が道を照らす酒場とかが並ぶ道。ワイワイガヤガヤとあっちこっちの店の中から声が聞こえる。活気があるのはいいことだ。

 そのまましばらくその道を進むと、今度は明かりはついているけど静かな通りに出る。こっちは昼間露店街だった場所。昼間はいろんな店がいて騒がしかったけど、夜になるとみんな寝静まったかのように静かだ。多分さっきの酒場の方でアホやってるんだろうね。

 そこからさらに進むと今度はピンク色の光が灯ってると言っても過言じゃないような感じがする通りに出る。要するに色街。あちらこちらで客引きのお姉さんが声をかけている。ついでに言うと声をかけているのは仕事を終え酒を飲んでこれから帰ろうという冒険者やら、昼間見回りをしていた兵士やら、店じまいしてみんなで飲もうとかいう感じの店員や店主やらだ。



 「ねぇ、そこのおにぃさ〜ん。ちょっと寄って行かなぁ〜い?」

 「ははは〜、断るよ〜。だって、君らじゃ僕が満足できないもん」


 ああ、身体中切り刻んでも文句言わないっていうなら構わないけどね。

 

 僕は時々かけられる声を適当に流してさらに道を進む。

 そこまで行くとそろそろ明かりが乏しくなっていく。ちょっと薄暗い程度。

 

 

 「まぁ要するにスラム街に近いんだけどね〜」

 

 おそらく街の南南東あたりかな?僕の家がちょうど南口のすぐそばだし。

 この辺りから4区画ぐらい。全てがスラム街だ。違法奴隷、ドラッグ、危険物、人攫い、窃盗、強姦、殺人…なんでも許される。まぁ一応スラム内でのルールはあるにせよ、ある程度は許されちゃう場所。それがここだ。

 範囲的には東京って名前のつくアレが1つ分くらい。その中心にあるちょっと大きめの家がここの元締めみたいな人…要するにヤクザみたいなやつの家。


 別にどこから入っても良かったんだけど、一番この辺がその家から遠いから全体を見ていくのにちょうどいいと思ってここを選んだ。



 「さてと。どうすれば会えるかな?」


 今日の目的は状況把握。どの程度の人がどんな状況で暮らしているのかが知りたい。

 別に助けようとかそういう考えは全くないんだけど、一応この辺に住む以上状況だけ把握しておこうかなって。

 あ、別に僕が冷徹なわけじゃないよ。僕は中途半端に助けるのは性分じゃないんだ。


 …っと、釣れたね。

 僕の探知できる範囲内に1人。おそらく僕の格好を見て窃盗に来たか、追い出しに来たかだね。



 「どっちかな〜?」


 とりあえず片手に果物ナイフ程度の大きさの刃物を用意する。

 それが僕の後ろから近づいてきて、そっと僕のポーチに手を伸ばす。

 …あ、もちろんその人的には気配を消してるつもりだよ。ただ僕にはそんなのが全く関係ないのであってね。



 「手癖が悪い手は切り落としましょ〜。はい、スパンっ」

 「……………〜っ⁉︎」

 

 伸びてきた手をポーチに触れた瞬間に手首から切り落とした。えらく細いね。

 


 「ああ。子供だったのか〜。だいじょうぶ?ボク?いたくない?ふふふ…」

 「お、おまっ⁉︎」


 僕はにっこりと微笑みながら地面でのたうちまわっている少年に手を返してあげる。

 いやぁ、僕って優しい。

 とりあえず第一住人遭遇ってことでいいかな?



 「でさぁ、ちょっと聞きたいんだけど…いいかな?」

 「だ、誰が…」

 「逃げるの禁止〜」


 僕はさっき部屋で出していた鎖を1束出し、【念動力】を使って少年を捕縛する。

 ついでに南京錠をかけておく。



 「ああ、別に君に危害を加えようってわけじゃ…ああ、すでに加えてたね。それはごめんよ。治す気はないから安心して?手癖が悪い君が悪い。僕はどっちかというと儒家より法家なんだ」

 「な…にを言って…っ!」

 「ああ、うん。要するに君が悪いってこと。でさぁ、ここの仕組みが知りたいんだよ。どのくらいの人が住んでるの?その人たちはどうやって暮らしてるの?規模的にみんながみんなスリなんかしてたらここがすぐに消されてると思うんだよ」


 僕はポーチの中から椅子を取り出して座り、さらに金属の塊を取り出して作業しながら会話を続ける。

 ついでにちょっと闇魔法で血だけは止めておいてあげる。



 「だれが…お前なんかに!」

 「いや、逆ギレされても困るよ。答えてくれない?それとも答えられない?知識がなさすぎて。その場合は仕方ないんだけどさ。というか、この辺ぐらいは安全地域だったと思うんだよ。一応この街って裏表がちゃんと棲み分けられる街だと思うんだ?君それを破って出てきたんだし、結構切羽詰まってる?」

 「そ、それは……くっ。だれがお前となんか話すか!」

 「ああうん。別に君の境遇とかはどうでもいいからさ。で、そこのところどうなの?一応冒険者として暮らしてるとか、ゴミをあさって過ごしてるとか、娼婦をやってるとか、ボスの下働きとか…ほら色々あるじゃん?」


 金属の塊から数枚のプレートを作り出して組み合わせる。



 「………それは」

 「その様子だとあたりかな?多分そんなところだと思うんだよ。君だって普段は街の露店とかから食べ物を盗んだりして暮らしてるんでしょ?普通そんな子供がお金を取ろうとしてくるのは珍しいし」

 「うっ……」

 「まぁつまりお金がないとどうにもならない状況なわけだ。多分縄張りとかがあって、そこで盗みをやらかすとまずいからここでやっちゃったわけでしょ?と、まぁ僕の予想はどうでもいいんだ。結局その辺なのはわかるし。で、そのくらいの人が住んでるかは知ってる?」

 「…知らない」

 「そっか。じゃあ仕方ない。次に行こう。多分君みたいな子は親がここの生まれか捨てられたかでしょ?修道院とか孤児院とかで育てられてる子もいるわけじゃん?どうしてそっちに行かないの?追い出されるとかそんな感じ?まぁその場合はしょうがないよね。犯罪に手を染めるより他ないわけだし。僕は善人じゃないから犯罪なんてするなって言わないけど、もうちょっと手はあると思うんだ。ボスに取り入ってみるとか、ちょっとしたリーダー的な何かの子分になってみるとかさ。ま、できていない君は嫌われ者か、それとも…」

 「……?」


 組み合わせたプレートを集めて一つのパーツにしていく。



 「君がリーダーかだね。その場合みんなを守るためにしょうがなくやってるわけになる。まぁ、大方こっちで仲間が病気か何かで倒れたんでしょ?それはまぁどうしようもない。普段から悪さを働いている以上表で働くにも信用はない、冒険者になろうにも登録料がない、借りられるあてもなければ、すがる相手もなし。しょうがないね。だって君が悪い。ところで名前は?」

 「…なんでお前に教えないといけねんだよ」

 「あ、そう。じゃあ、ボサボサな髪型だから”ボサボサくん”って呼ぶよ。実に的を得てるあだ名だと思わない?ボサボサくん」

 「チッ……レイ」

 「人と話すときはちゃんと顔を見ようね?ボサボサくん」

 「レイだっつってんだろ!」


 残念だったね。君は既に僕がボサボサくんと命名したのだ。反論は認めない。

 パーツに魔力回路を描いていく。 



 「あ、そう。で、ボサボサくん。他に仕事はあるの?この辺りでやれそうなのはさっきあげたくらいなんだけどさ。やれそうなのは人攫いだとか暗殺業だとか薬商人だとかそういう表に出せないような部類と、無難に窃盗だとかゴミを漁るだとか…ああ、最終手段としては雑草とかで食いつなぐっていうのもあるね〜。で、どんな感じ?僕の予想だと表に出せない部類はボスに上納金が必要だとかだと思うわけなんだよ?それで君らはおとなしくそんな状況に入り浸ってるわけだ」

 「…ああそうだよ!なんか文句あっか!」

 「いや、面白いからないね。でだよ。僕はそのボスとやらに会って話がしてみたいんだよ。ああ、勿論依頼があるとかそういうわけじゃなくって、普通に興味本位?というかこれからしばらくこの街に住むわけだから邪魔しないで欲しいからさ。で、会える方法って知ってる?わからないんだったら僕はその辺をぶらついてこれでもかってぐらい大量虐殺するんだけどさ。そうすれば誰かしら出張ってくるでしょ。さすがにやばいってさ?」

 「……っ!おお、おまえ」

 「ふふふ〜。安心して本気だからさ。で、そこのところどうなの?普通に行ったら会えるかな?やっぱりダメ?その場合は扉でもぶち破ってみようかと思うわけなんだけど」


 魔力回路を描いたパーツを組み合わせ一つの作品へと昇華させる。



 「む、無理だ。ボスが…誰かと会うのは」

 「じゃあしょうがないね。とりあえず扉をぶち破ってこようか。別にそんなに問題ないと僕は思うんだよね。だって扉の一つや二つ壊れるのは日常茶飯事でしょ?何せ兵士たちが乗り込んでくることがないわけじゃあるまいしさ。ああ、一応賄賂とかでどうにかしてるって可能性があるかな。いや、むしろその表有情からするにそうなんだろうね。となるとギルドまで関わってるのかな。まぁ、表に出てないなら構わないんだけどさ、その場合は領主もギルドも街全体として容認しちゃってるってことになるわけなんだよね。裏社会をここが一挙にまとめて支配してくれてるわけだから文句言うつもりはないけどさ、それってどうなのよって話だよ。見た感じだとみんな見て見ぬ振りっていうより知らないって感じだし、表に出ないようにしてるのはいいやり方だと思うけど、完全に綺麗さっぱり切ってわけちゃうのは今後問題が発生しかねないんだよね〜。やっぱりこれからすぐに戦争が始まるわけだし、多少なれど交わっておいてくれた方が都合がいいわけだよ」

 「え…?戦争?」

 「まぁ、毎日を生きるのに精一杯の人たちは知らないだろうけど、すぐに困ることになるよ。だってあと数日で攻めてくるわけだし、攻め込まれて占拠されたら今までの体制全てが崩れちゃうわけじゃん?…あ、これをネタにゆすりに行こう。それなら会えそうだね」

 「ゆ、ゆするっておまえ…!」

 「よしそうしよう。ということで完成〜」


 作品を微調整し、ボサボサくんの切り落としてあげた方の手を鎖を絡ませて引き寄せる。

 


 「お、おまっ⁉︎オレに何を…っ!」

 「ちょっと痛かったかな?まぁいっか。とりあえず今までと同じように動かしてみて。まずはグー」

 「……こうか?…ってじゃねぇ!」

 「よしよし。次はパー」

 「って人の話を…痛っ!」

 「はい、パー」

 「……」

 「よし。いい感じだね」


 ボサボサくんにしたことは一つ。義手をつけてあげた。俗に言う機械義肢っていうやつ。ただし導力は魔力だし、そんなものとは比べ物にならないほどの性能を兼ね備えている。

 簡単に説明しよう。内装は軽さ重視の合金を基本に可動部分を形作り、それらの芯として魔力を通しやすいように魔石で主軸を作り、それら全てを覆うように高度を重視した外装でできている。とっても簡単だ。大体のパーツは人の骨格標本とかを記憶を頼りに作ったから正確なはず。

 それより大切なのは機能だ。魔力の浸透性をあげたことで魔法媒体としての使用が可能であり、魔法の使用を補助ができる。さらに、幾つかの付与がされているおかげでサイズ調整は完璧、常にきれいな状態も保たれるし、一定以下の傷は勝手に修復する。そして何より根本的な能力強化だ。重さ的にこの子供がつけているのは辛いと思い、常に一定の身体強化の付与がなされる。その使用される魔力は空気中にあるものを勝手に使用するため負担もない。


 

 「簡潔に言うと魔道技術の集大成とも言えるのだよ。わかるかい?ボサボサくん」

 「いや、何言ってんのか全くわかんねぇ」

 「だろうね〜。ということで軽く地面殴ってみ?」

 「は?いや、何言ってんだよ」

 「いいから〜」

 「はいはい、やりゃあいいんだろ。やりゃあよ」


 鎖から解放されたボサボサくんは地面に自分が痛くない程度のパンチを入れる。

 そして拳を中心に地面に亀裂が走った。



 「うむ。実験成功〜」

 「…………は?」

 「ということであとは頑張って生きたまえ〜。じゃあ僕はボスの家に殴り込んでくるね〜」


 未だキョドってるボサボサくんを放置…ついでに銀貨数枚をすれ違いざまにポケットに突っ込んであげてから僕はその場をあとにした。


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