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19.街に行きましょう

 ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…ガチャ…


 ひたすら僕の後ろでアルドの鎧が…というかアルドそのものが音を鳴らしている。

 すっと同じリズムで、ガチャ…ガチャ…ガチャ…と僕の後ろで音がし続けているのだ。

 今はバドプールを出て6日目の朝7時である。


 

 「ねぇアルド〜。何にもないね〜」

 

 僕がそう言うと、アルドはガチャ…っと、首を縦に動かす音をさせてそれに答える。

 こうやって6日間ほど歩き続け、農村は幾つか通ったが、一向に次の街が見えない。



 「まぁ、しょうがないとは言ってもさ〜。暇じゃない?ほんっとに」


 やっぱりアルドはガチャ…っと音を鳴らす。

 バドプールは奴隷で栄える都市である。その付近にある都市は当然、それを養うための農村や畑ばかりの土地が多い。そうでもしないとバドプールが数日で食糧難で滅ぶのだ。仕方ない。

 だが、仕方ないとはいえど、暇なのはどうにもならなのだ。

 


 「う〜ん…あ、そうだ。楽しよう」


 僕は立ち止まり、後ろに向き直る。そして、アルドの後ろに回り込んで背中に飛びつく。そして背中をよじ登って、肩車してもらう形になる。



 「さぁ、アルド。しゅっぱ〜つ!」


 僕はアルドに肩車された状態のまま、次の街目指して進む。









 「とうちゃ〜く」


 僕はアルドの肩から飛び降り、地面に降り立つ。


 歩き続けて…もとい、歩かせ続けて6時間半。昼を過ぎて、午後1時くらいになってやっと次の街レイリドに着いた。

 僕らは外壁の入り口に並んでいる。列は時間が時間なだけあって、ほとんど並んでいない。 

 ちょっと待って、僕らの番になる。



 「身分を証明するものはあるか?」

 「はいよ〜」

 「そっちは?」

 「こっちは僕の眷属。まぁ、騎竜とかみたいなものだよ」


 僕はアルドの頭を外して、中に何も入っていないのを見せる。



 「そうか。なら、10Bだ」

 「えっと…ほい」

 「よし、通っていいぞ」

 

 僕らは外壁を通過する。 

 というか、騎竜とかって街に入るのにお金かかるんだね。あ、それともギルドとかで登録しないといけなかったりするのかな?昔はそういうの無しで普通に入れたからな〜。



 「よし。じゃあとりあえずギルドに行こうか〜」


 ガチャ…と、音がした。

 僕はアルドを後ろに従えて歩き出す。

 周囲の人たちの視線を一身に感じる。やっぱり、こうやって鎧が歩いているのは珍しいのかな?それとも、僕みたいな一般的な冒険者が騎士みたいなのを従えてるのか珍しいのかな?

 …うん。十中八九後者だと思うね。

 というか、冒険者でありながら真っ白いローブを着てるだけで人目につくのに、それが銀色の騎士なんて引き連れてたらなおさらのことだよね。

 普通の冒険者は大抵、重い鎧か部位別のプレート系の防具を付け、革のベストだとか分厚い服を下に着込んでる。そういう服装の方が、森の中で目立たなくて魔物とかに襲われにくいからね。で、さらに向こうの世界のリュックサックをちょっと大きくしたようなものをみんな持っている。

 それに対して、僕は薄いローブにシャツとズボン。持ち物はポーチと剣1本のみ。

 …なるほど。今更ながらだけど、この状態でギルドとかに入ったら舐めてるとしか思われないよね。むしろ、今は後ろで騎士が控えてるせいで貴族の道楽にしか見えない。

 いやぁ、道理で僕のことを避けるようにしてる冒険者が多いわけだね。納得納得。


 そんなことに初めて気がついたところで、ギルドについた。



 「やっぱり着替えた方がいいかな?あ、どうせキレイな物しかない時点で同じか」


 ギルドに入る前に羽織っているローブだけでも変えようかと思ったけど、黒とかに変えたとしても新品のようにキレイな物なのであんまり変わらないことに気づいてやめた。

 僕はギルドの扉を開けて中に入る。


 カランカラン…


 扉が開くと、中にいた人たちが入ってきた人を確認しようと、ちらっと目線をこちらに向けて、僕の後ろのアルドを見てものすごい勢いで前に向き直した。

 …ああ、うん。やっぱり目立つよね。貴族っぽいよね。


 僕はちょっと苦笑いしつつ、受付に向かう。



 「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件はなんでしょうか?」

 「うん。僕さ、魔物使いなんだけど、眷属の登録とかって必要だったりする?」

 「必要はございませんが、登録することで街の出入りの際に通行量がかからなくなったり、その従えている魔物によって受けることの可能な依頼が増えたりしますね」

 「ふ〜ん。じゃ、お願いできる」

 「かしこまりました。では、こちらの紙を記入してください」

 「了解〜」


 僕は受付嬢から一枚の紙を受け取る。


 紙には、魔物の種族、ランク、得意とすること、を書く欄があり、それ以外に書く必要のある物はない。

 随分と簡単な物だね。

 


 「えっと〜、種族はリビングアーマーでいいのかな?ランクはBBで、特技は…ねぇアルド、得意なことって何?」


 僕は後ろで控えていたアルドの方を向き、アルドにそう尋ねると、アルドはガチャガチャと体を動かし、剣を使う身振り、馬に乗る身振り、あと…この手を前に突き出してるのは何?


 

 「それは何?突っ張り?」


 ガチャ、ガチャ…と、アルドが首を振る。

 う〜む。なんだろう?

 アルドは指に魔力を沿わせて腕を突き出す。


  

 「あ、魔法?」

 

 ガチャ…と音がする。

 なるほど、それは魔法を放っているのだったのか。アルド、それ微妙に分かりづらいよ。



 「よし、じゃああと魔法ね。他はある?」


 アルドがガチャガチャ…と首を振ったので、僕はその記入した紙を受付に持っていく。



 「では受け取りますね。ギルドカードはお持ちでしょうか?」

 「うん。えっと…ほい」

 「ありがとうございます。では、登録が済みましたらお呼びいたしますのでお待ち下さい」

 「ほ〜い」


 僕は適当な近くの椅子に座ると、アルドが僕の横に跪く。

 なんか周りの冒険者より偉くなったみたいで、ちょっと優越感に浸れるね。というか偉いのは事実だけどさ。


 周りの冒険者…まぁ、こんな時間なので、低ランクの冒険者が数人いる程度なんだけど、それらから向けられる視線が少し弱まった気がする。多分、僕が魔物使いだって公表したせいかな。この国ではステータスが低い奴は下に見られる傾向があるので、魔物使いは総じてステータスが低いので見下しているのだろう。

 ま、僕の横でアルドが控えてるので、立ち向かってくるようなバカはいないようだけど。



 「ネロ様。登録が済みましたので、受付までお越しください」

 

 僕は呼ばれて受付に戻る。まだ数分しか経ってないので、人のギルド登録より圧倒的に簡単みたいだ。

 今更なんだけど、ギルドの受付って役割分担とかはされていない。どの受付に行っても新規登録、仕事の依頼、依頼の受注、魔石なんかの換金、魔物が異常発生したりした時の情報の報告…など、全部ができるようになっている。



 「あ、いらっしゃいましたね。まず、ギルドカードをお返しします」

 「うん」


 僕は受付嬢からギルドカードを受け取る。


 

 「次に、使役されている魔物を確認させていただきたいのですが…そちらですか?」

 「うん。アルド、こっちに来て〜」

 

 ガチャガチャガチャ…と、アルドが僕の横に立つ。



 「な、なるほど。では、確認させていただきます。種族はリビングアーマー、ランクはBB、特技は剣術、馬術、魔法、でお間違えないでしょうか?」

 「うん。あってるよ〜」

 「ありがとうございます。では、こちらが登録カードとなります」


 僕はギルドカードと同じ大きさの赤いカードを受け取る。



 「あれ?登録にお金はかからないの?」

 「冒険者の方はかかりません。そちらのカードについての説明は必要でしょうか?」

 「うん。もちろんお願いするね。あ、簡単にでいいよ〜」

 「はい。では、ご説明いたします。そちらのカード、”魔物使役証明書”は、魔物を使役しているという証明書となっております。メリットとしては、街への出入りに料金がかからなくなったり、受けることの可能な依頼が増えたりなどがございます。代わりに、街の中での魔物は使役主の武器としてみなされ、魔物による被害は、使役主に課せられることとなります。簡単に説明いたしますとこれだけですが、何か質問は?」

 「いや、それだけわかればいいよ〜。つまり、僕が冒険者同士でのいざこざにアルドを使ったりしても文句を言われる筋合いはないってことだよね」

 「ま、まぁ。ですが、死者が出た場合は罰されるのはご存知ですよね?」


 一応、冒険者同士のいざこざにギルドは関与しないが、死者が出たりした場合のみ罰則があるのはもちろんのこと、普通に国の法で裁かれるからね。ただし、喧嘩程度(・・・・)で収まる場合は問題ないけど。あ、この場合の喧嘩程度って言うのは死ななきゃオーケーだったりするよ。



 「うん。大丈夫。殺さないから」

 「そ、そうですか。では、以上となります」

 「うん、ありがとね〜」

 「またのご利用をお待ちしております」


 僕はちょっと苦笑いを浮かべそうになってる受付嬢の受付にお礼を言い、ギルドを出る。



 「さて、じゃあこれからどうしよっか〜?」


 アルドがガチャ…と、首をかしげた。

 第一になんでわざわざまたもや街に寄ったのかといえば、歩くのに飽きたからだ。なので、やろうと思っていることもなければ、やらないといけないこともない。

 さて、どうするかな。

 


 「ねぇ、どうしようか〜?」


 ガチャ…と首をかしげた。まぁそうだとは思ってたよ。

 本当にどうしようかな。国境まで、あと4つほどの街を通過するけど、どこもこれといったもののない普通の街だし、かといっても歩くだけじゃすぐに飽きる自信あるよ。

 まぁ詰まる所、この辺で気晴らしでもしないとやっていけないのだ。これから先の街は、皇都からも結構離れてしまう上に、他国からの攻撃の防衛を念頭に置いた街が多いせいで要塞都市っぽいのが多く、冒険者とか騎士であふれる街しかない。買い物とかするにはそこそこ便利だろうけど、暇がつぶせるものがない。

 この辺なら、まだ貴族とかが結構いるためにそこそこに栄えた上に治安もそこそこ悪くない。



 「ふむ。しょうがないし、さっさと山越えしようか…」


 とりあえず、歩いている間のために食料を幾らか買って、早く移動してしまおう。このままこの街にいても何もやることも思いつかなそうだし。



 「でもまずは昼食かな〜。もう2時だし、何か食べてからにしよ」


 別に空腹感とかを感じるわけではないが、最近何も食べてなかったので、昼食にすることにする。

 僕は適当にぶらぶらと大通りを歩く。

 今がちょうどお昼時なだけあってどこの店も混んでる感じがする。どうせならゆっくりとお昼は取りたいので、空いている店がいいのだけど…なさそうだね。というか、こういうときに混んでない店とか、美味しくなさそうだしさ。

 あ、店じゃなくて露店っていう手もあるかな。さっきギルドの向こうの広場から美味しそうな匂いがしてたし客を呼ぶ声もしてたし、向こうに行けばあるかもしれないね。

 よし、そうしよう。

 僕は露店とかが好きなんだ。祭りとかに行くと色んなものを買い込んでくるタイプの人だよ。

 

 僕は大通りを歩いて、入り口とは反対方向にある広場に向かう。


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