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6.報告させましょう

 「以上だ。これでいいのか?」

 「うん。ご苦労」


 大体のことは理解した。

 魔術とは、この世界における魔力…世界に魂が還元される最中に起こるラグの部分のエネルギーを使い陣を描き、現象を段階を幾つも踏んで発生させる技術だ。

 火を起こすにも、現象を選択し、火種を生み出し、燃料とするエネルギーを発し、世界に現象を認めさせ、発生地点を決め、発生させて、固定する。と言う、最低7つの段階を踏む必要がある。

 少し神法と似ている。あれは意思を神力に込めるだけ。こっちは手間をかけて意思を現象にする。


 まぁ、僕らが作る世界のように魔法というものを起こすのに、世界の補助がないから大変なのは当然かな。僕らが作る世界には、魔力を世界の魔力に干渉させたりすれば補助をして現象にするのを手伝ってくれる。おかげでできることに限界が生じるけど、僕がルーに教えたようなやり方みたいな抜け道があったりする。ちなみに、あれは通常の魔力より影響力の強いエネルギー…というか、自分の意思を反映しやすいエネルギーを使うことによって、現象を強引に起こす方法だったりする。


 さて、話を戻そう。

 魔術を使える者たちは、そのエネルギーを体内に貯める方法と使う方法を編み出した人の子孫…というか、血を少しでも注いでいる人間らしい。その血を継いでいる人間は魔力を体内に貯めやすい体質に変化していて、方法さえあれば魔術を行使できるらしい。

 で、この人たちはそれを悪用したりする人間を止めるための集まり。

 

 まぁ、当然だよね。普通の人間が力を好き勝手に使わないほうが珍しいと思うよ。

 だって人間だもの。クズだもの。

 しょうがない。



 「え、ええと、もういいか?」

 「うん。理解した。じゃ、話を進めるね。このあいだの騒ぎ…ああ、もちろんわかるよね?」

 「ああ、休校にした件のことか?」

 「そ。僕さ、その時からそういったものが見える(・・・)んだよね〜。君らのいう魔力とか、その魔法陣的なやつとかさ。ああ、神野君たちはなんともないみたいだから僕だけだと思うんだけどさ」


 ついでに言えば魔力以外にも、神力はもちろん、魂、不可視系の魔法がかかった状態のもの、神経伝達の動きや細胞の状態、意識した対象物、遠距離、壁の向こう側などの透視、エネルギーの動き…その他色々と見える。

 ああ、未来は無理だよ。スキルとかには”未来視”があるけど、あれは数秒先までの可能性のうち、最も高いものを幾つか表示するスキルだから。



 「なっ⁉︎」

 「でさぁ。僕面倒ごとが嫌いなんだよ。あとは想像がつくよね?」

 「…わかった。君に降りかかるもので、我々に関係するものは我々が対処しよう」

 「よろしい。ああ、このことを話しても構わないけど、ここであったことの報告は禁止ね。ま、話したら…ねぇ?」

 「あ、ああ。わかった。見えることのみを報告しよう」

 「んじゃ、僕は教室で文化祭の用意しないといけないから、帰るね〜」


 僕はドアを開けて生徒会室を出て行く。

 矢辺さんと依田さんに迷惑がかかっちゃう。早く帰ろう。

 結局、20分も時間食っちゃったじゃないのさ。


 僕は急いで階段を上る。

 そして、一番奥にある教室に戻る。



 「ただいま〜。悪いね、矢辺さん依田さん」

 「いいよいいよ。気にしないで〜。ところでなんで呼ばれたの?」

 「なんか、この間の休校の原因おあった場所に僕たちがいたみたいでさ、機械の反応した原因に関係ないか調べられたんだ〜」

 「ふぅ〜ん。そうなんだ。あ、そうそう、ここってどうやって作ったほうがいいかな?」


 そう言って、依田さんが僕に僕が描いた設計図を見せてくる。

 その設計図に書いてあるのはゾンビ用の衣装だ。 



 「ライターとかで炙って穴開ける?それとも、何か尖ってる物に引っ掛けて引っ張ってみる?」

 「ど、どっちも危ない…」

 「気のせいでしょ。で、どっちがいい〜?そのほうがいい感じになると思うんだけど」

 「う、う〜ん。ユキは?」

 「わ、私はどっちでも…いい、かな?」

 「じゃぁ…うちらそんなに力無いし、ライターとかでやろっか」

 「了解〜。じゃ、それ貸して〜。やってくる」

 「え?そんな物持ってるの?」

 「持ってるよ?」


 僕はうちポケットからライター…というか、ターボライターを取り出す。

 これ、もともと僕のおじぃちゃんのやつで、亡くなっちゃった時に遺品としてもらった。大切に使わせてもらってます。ガスさえ入れ替えれば繰り返し使えるから以外と便利なのだ。



 「え、えぇ〜…それって、うん。なんで持ってるの?しんちゃんってタバコとかやっちゃう人?」

 「いや、おじぃちゃんの遺品〜」

 「あ、そうなんだ。へぇ〜」


 普通に納得された。

 ああ、今更だけどこの2人は矢辺 雪菜と依田 智子。

 矢辺は黒の長髪でメガネ。料理と裁縫とかが得意で、なぜかバスケ部。さっきからそんなに話さない口数が少ないほう。

 依田は短髪で小さい女の子…確か身長145とかだった気がする。威勢が良く、クラスでもいろんな人と仲良くやってるのになぜか図書委員。


 こいつら…普通逆だと思うんだよね。イメージ的にさ。

 


 「さて、じゃ」


 僕は、衣装を炙る。燃やさないように気をつけながら穴を幾つも開けていく。

 これが終わったら、さらに赤黒い絵の具をぶちまけて着色。その穴の開いたところに肌色の布を縫い付ければ完成。ズボンは膝あたりで切った黒いやつを準備済み。

 

  

 「こんなもんかな?」

 「おお〜。いい感じじゃん。さすがはしんちゃん!」

 「じゃ、あとはその下に布をお願いね〜」

 「ラジャー!…って、あれ?しんちゃんは何もしないの?」

 「ん?僕は狼男の被り物を作るよ?」


 僕はロッカーの中から灰色と黒と白の布が固まっている物を取り出す。

 これは狼の頭部になるのだ。今はまだ耳と後ろしかできてないから分かりづらいけど、顔を作れば結構リアルな狼の頭になる。

 目とかは僕が接着剤やら絵の具やらボンドやらを混ぜて作った本物みたいな物を使うし、布自体も毛皮のような素材だからね。



 「あ…ああ〜⁉︎その布の塊って、狼になるんだ!」

 「うん。まだ全然わかんないでしょ?」

 「うん。でも色的に想像できる!できたら見せてよね!」

 「まぁ、明日には完成すると思うよ〜」

 「え?そんなに早く?」

 「うん。今日持って帰って作るからね〜」

 「じゃあ楽しみしてるね!」


 僕は子供のように目を輝かせている依田を放置して、布を合わせて縫う。つなぎ目が見えないように注意し、隙間ができないようにしっかりと縫い合わせる。

 一応、視界は口の隙間から見えるように作っているので、前も見えるから安全だろう。


 ちなみに担当はさっきから、何も言わずに手を動かしている矢辺はドラキュラの衣装。

 依田はゾンビの衣装と模型の骸骨に着せる布切れ。

 僕は狼男の衣装のみ。

 僕が少ないのは他にもやることがあるから。

 特殊メイクの準備や演出、設置などのお化け屋敷本体の設計。


 僕の無駄に蓄え続けてきた知識も意外に役立つのもなのだ。

 中学生の時にクマを隠すためにやっていたちょっとしたメイクを、ついでとばかりに色々覚えて、特殊メイクに近い物ができたり。

 人を驚かす…というか、不良を半殺しにするための人を脅すために覚えた、恐怖を煽るような物の設置のやり方だとか。

  

 おかげで僕は仕事が多い。

 ま、代わりに本番の時の仕事は一切ない。

 朝のうちに役の人にメイクを施すだけ。以上。



 ああ、ついでに言っておくけど、実際に動く役の人たちは特殊メイクのせいで一日中働くはめになってるけど、それ以外の役は上から物を吊るしたり、音楽をかけたり、物を突然動かすだけなので交代制だ。

 神野はゾンビ役。

 僕が勝手に決めました。


 そんなことを思いつつ、僕は準備を進める…



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


  

 家に帰ってきた。

 結局、8時近くまで残って他のことも手伝いをする羽目になった。

 おかげでもう8時半。僕は多忙なのにね。

 これから風呂に入って、夕食を作り、明日の弁当を作る。


 …あれ?そんなに忙しくなかったね。

 まぁいいや。


 僕は制服を脱ぎ、ハンガーに掛けていつもの場所にしまうと、そのまま風呂に入る。


 服を脱ぎ、髪を結っているゴムを取り、身体を元に戻す。



 「視線が低くなるし、手が届かなくなって辛い…」


 こっちに戻ってきてから気がついた問題点なのだが、この身体は元々の僕の身長より30cmくらい小さく、本棚に手が届かなかったり、キッチンの棚に手が届かなかったり、シャワーをかけてある場所に手が届かなかったり、本棚の中が見えなかったり、押入れの上の方が見えなかったりと、色々不便だったのだ。

 まぁ、風呂に入る時はこっちじゃないと嫌なのだから仕方がないことではあるが、どうにも不便だ。


 僕は風呂の扉を開け、ガスをつけてシャワーを出す。

 少し待ってお湯が出てくると、頭や身体を洗う。

 そして、洗い終わると扉の外に置いておいた風呂用のゴムで髪を頭のてっぺん辺りでまとめてお湯に入ってしまわないようにしてから浴槽に浸かる。



 「ふぅぅ…疲れた」


 やっぱり、なんというか人間であった時の感覚が残っているせいで疲労や気だるいのを感じるような気がする。この身体には存在しないのに不思議な話だ。

 あれだ。幻肢痛と似たような感覚だね。ないのにそれを感じる。


 ピンポーン…


 僕はゆっくりとお湯に浸かろうと思っていたら、玄関のチャイムが鳴った。

 誰だろうか?こんな時間に。

 僕は仕方なく、風呂から上がって魔法で身体を乾かして、身体を元に戻して服を着る。


 そして、玄関の覗き穴から外を見る。



 『新ちゃん。いるか?』

 「ああ、神野くんか〜。いるよ。ちょっと待ってね〜」


 外には神野がいた。

 こんな時間にどうかしたのだろうか?

 僕は鍵を開けてドアを開けた。



 「お、わりい。こんな時間に」

 「そう思うなら明日にしてよ〜。僕はお疲れなんだよ?労わいたまえ」

 「はいはい。ちょっとお邪魔するわ」

 「いや、その前に要件言おうよ〜」

 「あ、それ中でいいか?ちょっと…」

 「はぁ〜…しょうがないな〜。とりあえず入るなら早く入って〜。虫が入るからさ〜」

 「おう。お邪魔します」


 そう言って神野が僕の家に入ってきた。

 さっきの言い方からするに、向こうの世界でのこと関連かな?


 僕はそのまま神野をリビングまで連れて行く。

 そして、僕はソファーに座る。



 「で、ご用は何だい?」

 「えっとだな、これ…どこか使える場所ってないか?」


 神野は自分の首元…僕があげた収納用のネックレスチャームを指差す。

 


 「隠れて使えばいいじゃん」

 「いや、そっちじゃなくて。中身の方だ」

 「え…1週間も経たないうちに殺人衝動に?」

 「いや、ちげえから⁉︎訓練だよ訓練(・・・・)!」

 「ああ〜。まぁ、確かにそんな物振り回したら、1発で危険物所持で捕まるよね〜」

 

 神野のやつなんか特に見つかりやすいだろう。

 何せ、幅48cm、刃渡り130cm、全長160cmもある大剣だ。目立つこと間違いなし。



 「そういうことだ。で、どっかいい場所ってないか?」

 「う〜ん…どうだろうね?」

 「いや、その顔は絶対知ってるって顔だ。新ちゃんだってどっかで訓練してたんだろ?」

 「はぁ…しょうがないな〜。付いておいでよ」


 廃工場なんか神野の罪悪感を刺激するだけの場所だから、神野にとってはそんなにいい場所ではない。

 そんなこともうどうでもいい僕からすれば、人は来ないし、色々と物を置いておけるし、都合のいい場所なんだけどね。


 僕は家を出て、神野が出ると鍵を閉めて歩き出す。


 

 「というかさ〜。神野くんは普段から部活やってるからいいじゃん〜」

 「いや、それとこれとは違うんだよ。剣を振る感覚?そういうのを忘れないようにしておきたいんだよ」

 「ふ〜ん。ま、いいや」


 僕は工場に向かう…










 「はい。とうちゃ〜く」

 「新ちゃん…ここって…」

 「そうだね〜。ま、もうあいつらはここに近寄りもしないし、あいつらのせいで人も滅多に来ないし、ちょうどいいでしょ?」

 「で、でもそれって…」


 僕は神野を廃工場に連れてきた。

 まぁ、反応は予想どうり。



 「教えて欲しいって言ったから連れてきてあげたんだよ?もっと喜びなよ〜」

 「いや、でも…新ちゃんは、いいのか?」

 「別に〜。もう復讐はしたし、気にしてないよ〜。神野くんももう忘れなよ。面倒くさいからさ〜」

 「…ああ。そうだな」

 「あ、そうそう。その辺に色々置いてある物、使っていいよ〜。僕はもう来ないからさ」

 「へ?いや、来ないって」

 「僕にはもう必要ないの。じゃ、帰るね〜」

 「おい、ちょっと!待てよ!」

 「いやだよ〜。じゃあまた明日ね〜」


 僕は何か言っている神野を背に家に向かう。



 「よし『(ゲート)』」


 というか、面倒くさくなって人気のない場所で”(ゲート)”を開く。


 で、家の目の前に転移した僕は鍵を開けて家に入る。

 そして、わざわざ着替える羽目になった服から、部屋着に着替え直す。


 

 「ふぅ。まったく、面倒くさいな〜。神野くんは根に持ちすぎなんだよ〜。ま、そんなところが面白いんだけど。『浄化(クリーン)』」


 僕はもう一度風呂に入り直す気にならなかったので、魔法で身体をきれいにする。


 

 「さて。じゃあ夕飯にしようかな…って、もう11時…」


 夕食を作ろうと思い、キッチンに行く途中で時計を確認したらもうすでに11時21分。

 これから夕食を作ったら12時過ぎ。狼の顔を作るのに4時間くらいはかかると思うし、弁当作るのに1時間はいる。さらに、今日はたまったデザインを掘り出すのもやりたい。

 …夕食は諦めるとしよう。


 僕はバッグから狼の顔を取り出し、裁縫道具その他を持って洋室へ行く。

 最近、洋室が読書スペースから作業場になりつつあるが、まぁいいだろう。


 

 「さて、始めようか」


 僕はチクチクと布を縫い合わせ、作業を始めた…


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