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5.呼び出されましょう

 かれこれ午前中を終え、昼食を時間になった。

 この時間になると、生徒が浮かれているような気がする。


 僕らは今まで通り、安井と石井がとってくれている席に行く。

 この学校の食堂は学食が結構美味しくて人気が高いので、席がすぐに埋まってしまうのだ。



 「お〜い。しんちゃん、拓巳。こっちこっち」


 石井が手を振っているのが見える。

 僕らはそこに向かう。



 「いやぁ〜、こうやって食べるのも久しぶりだね」

 「そうだな。大体の理由は新ちゃんが向こうでいなかったせいだけど」

 「うん。それはしょうがない」

 「皮肉を言ってるのに気にされないのはちょっと虚しいぞ…」

 「で、石井くんは今日は何にしたの?」

 「今日はな…へへへ」


 石井はちょっと恥ずかしそうに頬を掻いている。

 横を見ると、安いが顔を真っ赤に染めている。

 テーブルを見ると、机には弁当箱が2つ。


 …なるほど。



 「へ〜、愛妻弁当ね〜」

 「ちょっ…そ、そういうのじゃなくて…その、えっと。だから」

 「はいはい。じゃ、早く食べようよ」

 「そうだな」

 「うん。じゃ、いただきます」

 「…いただきます」


 石井が授業中から機嫌よさげだったのはこれが原因か。


 僕は普段から弁当。

 神野も家が定食屋なので当然弁当。

 安井は学食だったり弁当だったりとまばら。

 石井は基本的に学食。

 なので、石井が弁当になったら、学食まで来る意味がなくなるね。別に一緒に食べるだけなら僕らが石井たちの教室にお邪魔すればいいだけの話だし。

 ま、どうせこのままだろうけど。


 僕は弁当を開けて食べ始める。


 今日は唐揚げ弁当…正しくは竜田揚げ弁当だ。朝のうちから揚げ物というちょっと面倒な事をしてみた。

 まぁ、どうせ一晩中暇なのだから問題はなかったけどね。

 


 「でさ〜、石井くんは勉強大丈夫なの?」

 「ゴホゴホッ…!」

 「あ、察したよ。安井さん、石井くんのこと見捨てないであげてね…」

 「み、見捨てたりしないから大丈夫だよ!」

 「よかったね〜、石井くん」

 「お、おう…」

 「じゃあ神野くんは大丈夫なの?さっきから黙り込んでるけど」


 僕は神野の方を見てそういうと、神野もちょっと目をそらす。



 「…まぁ、ボチボチな」

 「せっかく2日間も徹夜したのに?」

 「いやな、授業受けてみて意外とできなかったんだよ」

 「ふ〜ん。ま、テストまではまだ少しは時間あるし、それ以前に来週は文化祭だったし」

 「「「あ」」」


 今日学校に来て、クラスの後ろにまとめて置いてある段ボールを見て思い出した。

 うちのクラスはアトラクション系の出し物…というか、無難なお化け屋敷なんだけど。石井たちはね…?



 「うん。忘れてたんだ?」

 「ま、まぁ大丈夫だろ。金子のやつがどうにかしてくれんだろ」

 「うちはそうだけど、石井くんたちは大丈夫なの?劇やるとか言ってなかったっけ?」

 「俺は裏方だから問題ないけど…」

 「どうしよう…台本ほとんど忘れてるよぉ〜」



 まぁそうだろうね。1年半もあって、劇の台本全部覚えてろっていう方が無理な話だ。


 「石井くん。勉強教えてもらうんだし、代わりに手伝ってあげなよ〜」

 「当然だろ。俺は未来の手伝いを全力でやってやる!」

 「勉強もな」

 「…神野、ちょっとは忘れさせてくれよ」

 「ははは〜。頑張ってね」

 「じゃあしんちゃんはどうなんだよ?」

 「僕?大丈夫に決まってるじゃん。元々ほとんど受けてないから、問題なしっ」

 「そんなに偉そうに言えることじゃないよね…」

 「わ〜、安井さんひど〜い」

 


 僕らは楽しい昼食タイムを楽しむ。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「じゃ、文化祭の準備しっかりな」

 「起立!…礼!「「「「さようなら」」」」


 午後の授業も終わり、放課後になった。

 僕らは文化祭の準備のためにそれぞれの役割を始める。

 絵を描く者、壁を作る者、衣装を作る者、お化けの練習をする者。


 ちなみに僕は衣装作り担当。

 デザインも僕がやった。もちろん授業中にね。

 もともと手先は器用な方なので、裁縫とかも得意分野なのだ。



 『2年6組、松井新一郎くん。至急、生徒会室まで来てください』


 僕は準備をしようと思って、後ろのロッカーに入れていた布を取り出して始めようと思ったら放送が来た。

 てっきり昼休みに来ると思っていたので、今日はないのかと思っていたら今頃か。



 「あ〜、矢辺さん依田さん、悪いけど僕呼ばれてるから行ってきてもいいかな?」

 「いいよいいよ、全然気にしないで。いつもしんちゃんばっかりに頼っちゃってるし、うちらだけでもやれるとこ見せちゃうよっ!ね?ユキ?」

 「うん。大丈夫。行ってきていいよ」

 「ごめんね〜。できるだけ早く戻ってくるから〜」

 「「いってらっしゃ〜い」」


 僕は一緒にやっている女子2人にそう言い、歩いて生徒会室に向かう。

 





 「失礼しま〜す。2年6組の松井です〜」

 「ああ、来てくれたね。そこにでも座って」


 僕が生徒会室に入ると、確か副会長だったかな?に迎えられる。

 生徒会室にはこのあいだの会長ともう一人女子がいる。誰だろ?生徒会とかほとんど気にしてなかったせいで覚えてないや。



 「じゃ、失礼するね〜」

 「今、お茶入れるねから、ちょっと待ってて〜」

 「僕そんなにゆっくりするつもりないんだけど〜?」

 「まぁ、我々もそうしたいのは山々なんだけど、そうもいかなくてね」

 「あ、そういえば悪いんだけど、僕ここにいる会長以外の名前を誰も知らないんだけど〜?」

 「そうかね。私は副会長の島村 錦司。あっちが会計の臼井 蓮香」

 「よろしくねぇ〜」

 

 臼井さんとやらが僕にニッコリと笑いかける。

 副会長は相変わらず無表情。



 「はい、お茶どおぞ〜」

 「あ、うん。ありがと〜」

 「いいえ〜。じゃあごゆっくり〜」


 なんか喋り方がちょっとラージェと被るなこの臼井さん。

 懐かしい。

 


 「さてと。では、聞こうかね」

 「何を?」

 「君、魔術という者を知っているかね?」

 「知ってるよ〜。あの、ファンタジィ〜なやつでしょ?」

 「そうだね。率直に聞こう。君、それを使えるね?」

 「…何言ってるのさ〜。あ、これが俗にいう厨二病ってやつ?右目がうずいちゃったりする?左手に封印とか?」


 会長がいるので、嘘はつけない。

 まぁでも、僕が使えるのは”魔法”であり魔術ではない。

 こういう魔法系は認識の問題でどうにかなるのだ。


 副会長は会長の方を見て、会長はそれに頷く。



 「はぁ…すまなかったね」

 「どうしたの?それだけ?」

 「あはは〜。ごめんねぇ、副会長さんって中二病なんだよねぇ」

 「ははは〜。目が嘘ついてるよ〜…で、本当は?」

 「うっ、嘘じゃないよ〜」

 「本当は〜?」

 「か、会長〜!まずいですぅ〜」

 「わかってる」


 会長は立ち上がり、結構な速度で魔力の陣を描き始めた。

 見たことはないが、ちょっと解析してみたところ記憶消去か操作だろうね。向こうの世界で紫に教わった陣の中に似たようなのがあったから。

 その陣から紫色に近い煙のようなものが発生し、僕に向かってくる。


 …あれ?これって不味くない?僕はそういう魔法にはかからないような体だし、かといって魔法にかかったふりをしても、かかったときどうなるのかを知らないからばれそうだし。

 

 僕に煙が当たり…雲散する。



 「え、えっと〜。どうするべきなのかな?これは」

 「効果が…ない?」

 「ま、いいや。本当は何なのか話してよ〜」

 「もう一度…」

 「うわぁ〜。相変わらず話を聞かない会長さん」


 再び僕に煙が当たって雲散する。



 「どういうことだ」

 「自己解決しないでほしいかな〜」

 「何をした?」

 「何もしてない」


 ()は何もしてないよ。勝手に魔法がかき消されただけで。



 「会長。これはどういうことかね」

 「不明だ」

 「はぁ…もう、どうするのぉ〜?絶対怪しまれるじゃん。これで変な噂が流れたりしたらどうするんですかぁ〜」

 「仕方ない。話す」

 「それはまずいかもしれないね。李川先生を呼んで相談を」

 「呼んだ」

 「さっすが会長ぉ〜」

 「ねぇ。話さないなら僕帰るよ?」

 

 面倒くさそうだし、帰ろうかな?

 僕が追及しなかったらよかったのだけど、ここまで面倒なことになりそうとは思わなかったんだよ。絶対これからしばらく帰れないじゃん。



 「悪いが、しばらくこの場で待ってもらえないかね」 

 「はぁ…面倒くさ〜」

 「そう言わないでさ〜。ほら、お茶でも飲んでゆっくり。ね?ね?」

 「はぁ…」


 僕は仕方なくお茶を飲んで、ついでに生徒会室にあった煎餅をかじりながらその”李川先生”とやらを待つことにした。

 しかし、その李川先生って名前聞いたことないんだよね〜。

 一応、昨日のうちに学校の名簿を見たんだけど、乗ってなかったし。

 ん?見た方法?ハッキングですが何か?




 そんなことを思っていると、少ししてガラガラ…と扉が開いた。



 「問題とはなんだ?何が起きたんだ?」

 「これだ」

 「アレが効かないみたいでしてね」

 「明らかにこっちに不信を持っててぇ…」

 「どうしようかと〜」

 「「「なんでお前が入ってくる!」」」

 「あれ?ダメだった〜?」


 同じような内容に合わせて介入したら怒られた。



 「はぁ…とりあえず、話を聞こう」


 李川先生とやらは近くにあったパイプ椅子に座った。



 「この間の件について尋ねたところ、知らないのは本当であり、こちらに対して何か隠し事があるのに気がついたようですね。さらにそれについて追及してきたため、姫路に処置をさせたところ効果がなく、2度繰り返しましたが効果がなかったようですね」

 「なるほど。で?どうした」

 「ですので、話をしっかりとして余計な詮索を辞めてもらうべきかという件ですね」

 「ふむ…少し待て」


 おお〜。しっかりといっちゃまずそうなことを一言も言っていない上に、僕の周りに僕に触れないよう気をつけながら音を遮断するような魔法が。

 ああ、口を読むのくらいはたやすいので。内容はわかってるよ?

 

 僕が脳内でふざけたことを考えてる間にも、李川先生は悩んでいる。



 「姫路。解いていいぞ」

 「了解した」


 僕の周りの音を遮断してたものがなくなった。



 「悪いね。待たせてしまったようで」

 「うん。悪い。もっと早くしてよね〜」

 「うっ。で、では、話そうか」


 僕はしっかりと悪いことは悪いと言える人間なのだ。

 僕がやってることは気にしないけどね。


 僕がニヤニヤとしていると、李川先生が話し始める。



 「この世界には”魔術”と呼ばれる特殊な能力を持つ者がいる。それがここにいる彼らだ。こういった能力は世界的には存在しないものと思われている。だから、それが公となりこの子らが国に捕まったりさらし者とされたり実験台にされるするのは避けたい。黙っていてはもらえないだろうか?」

 「嫌だ…って言ったらどうするつもり?」

 「その時はありとあらゆる方法を使って黙らせる。なんといったかな?神野くんだったか?」

 「なるほど…殺されたいなら早くそう言いなよ」


 僕は僕の物に手を出す奴は誰であろうと許さない。

 その可能性は全て排除しないと。 


 僕は制服に入れていたバタフライナイフを取り出し、目の前の机の上に飛び乗り、その李川先生に急接近して、パイプ椅子ごと後ろへ蹴り飛ばす。そして、椅子と一緒に転んだ李川先生の両腕を左手でつかみ、僕は先生の胴体の上に乗り、ナイフを首に当てる。

 ああ、なんでバタフライナイフなのかと言うと、単なる僕の趣味だね。



 「で?なんだっけ?」

 「は、離せ…こんなことをしてもいいと思っているのか⁉︎」

 「さて、このくらいのことなら今まででもやってるし、今更幾つか増えても構わないさ」

 「くっ…クソ」

 「それに、僕は嘘つきは嫌いだよ?そういった人たちって、結城さんとかあのカフェの人たちとかもだよね〜?ごまかさないでよ〜。隠し事はいけないよね〜。ねぇ?臼井さんだっけ?その今やってるものを止めようか。この人死ぬよ?」

 「や、やめてっ…」

 「ふふふ…敵に回す人間を間違えるからこうなる。理解した?」

 「わ、わかった。俺らは手を出さない」

 「よろしい。で?」


 僕はすっと手を離て立ち上がり、李川先生はそれを見つめている。



 「で?とは?」

 「お願いには対価が必要だよね?」

 「…金か?」

 「いや〜。僕はそんな物はいらないよ〜。それにそういうのはしっかりと身元調査もしてから言ったらどう?僕の父親は結構なお金持ちだよ?」

 「だが、すでに離婚して…」

 「さすがに一応父親だよ?お金くらいは出してくれるよ〜」

 「なら…何が望みだ?」

 「しっかりとした説明と紹介。僕を君らの中に入れろ。拒否は許さない」


 僕は李川先生ににっこりと微笑む。

 会長は僕をにらみ、副会長は唖然とし、臼井さんは恐怖で怯えている。



 「わ、わかった。話そう」

 「よろしい。ああ、僕を殺そうとかは思わないでね?どうせ無理だから」

 「そ、そそんなことは思わないさ」

 「火事とかもやめてね?アパートの人たちに迷惑がかかっちゃう」

 「あ、ああ。そそうだな」

 「暗殺とかも無理だね。僕寝てないし、君らごときが敵うわけもないし」

 「ね、寝てない⁉︎」

 「ああ、それと僕のこと話さないでね?生徒会の皆さん」

 「…了解した」

 「わかった」

 「う、うん…」


 相変わらずの反応どうもありがとう。

 さてと。



 「じゃ、話してくれるかな?」



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