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1.帰りましょう

お待たせしました。今日から今まで通り再開いたします!

 異世界に渡り、僕が人間をやめて合計で1672年ほど。国同士はかなり高い緊張状態にあり、勇者を召喚してまでも戦争を起こそうとし始めている。

 世界は今も動き続けている。

 ちゃんと僕がやった通りに戦争への道を進み、今世界は荒れている。


 これは結構必要なことなのだ。

 僕は確かに世界の構造自体の修復は行ったが、狂っている歯車を治すには一度ちゃんとした方法で直さないとどうにもならない。パーツは取り替えたが、電源を入れることは僕にはできないのだ。



 「さてと…帰ろっかな」


 僕の口から、高く綺麗な声が漏れる。

 僕は何もない空間の中立ち上がる。




 一通りやりたいことはやった。

 363個の迷宮を作り、世界の住民たちの強化と他生物の弱体化を行い、肉体のある程度だけどちゃんとした構成もできるようになった。

 ああ、あと紫たちも送り出したよ。彼らには色々と教えてもらった。武器を使い方、魔法の使い方、霊法の使い方…他にも色々。

 

 やっぱり、魔法はこの世界以外にも存在する。

 この世界の魔法は、魔力というエネルギーをイメージを込めて世界の魔力に干渉させることで、世界がそのイメージを補完し現象へと変化させる簡易なもの。

 紫がいた世界の魔法は、術式を自らの魔力のみで構成し、それを現象へと昇華させる処理を自力で行って、現象に変換する。


 以外と大変だった。

 あと、霊法については結構簡単だった。

 自分の力を使わずに、他のエネルギーのみを利用して現象を起こすこと。まぁ、合気道とかみたいな感じかな?

 幽霊のように、他のエネルギーに取り憑いてるみたいだから…っていう変な理由からそう呼んでいるらしかった。

 ああ、それを応用してみたらオオスズメバチ型魔道飛行ラジコンが神力結晶を使って作ることができたよ。


 おかげで僕はさらに強くなったよ。うん、残念ながら。

 そのせいで負けれるものが無くなったからちょっと退屈。


 他に特筆するべきなのは…ああ、僕のよく知る人はほとんど死んでしまったことぐらいかな。ルーとはちゃんと仲直りしたし、娘の顔も見れた。ハルは残念ながらすぐに死んじゃったけど、王家の子孫たちとは未だに仲良くしてる。ああ、”竜宮”のみんなは龍の都を見つけて、そこで龍に殺されて死んじゃったね。祝福すべきかどうかにちょっと迷うところ。僕の後継者たちもちゃんとやるべきことはやってくれたし、きっと思い残すことはもうないっていうのはこんな感じなのだろう。



 「さて、ロメ〜」

 「はい。どうかされましたか?」



 僕がロメを呼ぶと、影の中からロメが顔を出す。


 「向こうに帰るから、部屋に戻っていいよ。向こうの世界に帰って少したらこの世界にもう1回帰って来るし、その後に安定した住居ができたら呼ぶつもりだから」

 「承知いたしました。では、他のものたちにもそう伝えましょう」

 「うん。よろしく」

 「では、失礼いたします」



 再び、チャプンと影の中に沈んでいった。 


 「さてと。このままじゃダメだから…よっと」 



 僕は体を再構成する。

 ちなみにこの空間にいる間は、体を変えるのがめんどくさくなってずっと女の子のままだった。さすがに翼はしまっていたけど、慣れって怖いね。今着てたのは白いワンピース。

 …なんか普通に女の子やってる僕がいるよ。


 僕はそんなことを思いつつ、男の体を作る。

 疲労も食欲もほんの少しだけではあるが感じるこの体。ちゃんとできている。

 制服も着て、”息吹”は首から下げて、ポケットは”アイテムルーム”に繋いだ。


 「よし。帰ろうか…『(ゲート)』」



 僕は空間をつなぎ、時間も戻す。

 そして、僕は目の前にできた白い門の中に入る…

 


 * * *


 


 横を見ると、神野たちがちょっと惚けている。

 帰ってきたということに感動でもしているのだろうか?



 「帰って…きたんだよね?」

 「そうだね」

 「よかった〜」


 石井と安井が抱きつきあっている。

 僕は神野の方を見る。

 神野もこっちを見ている。



 「なぁ新ちゃん。ちゃんと時間とかも戻ってるか?」

 「どうだろうね?ま、少ししたらわかるんじゃないかな〜?」

 「それもそうだな」


 神野は苦笑いを僕に向けている。

 ちょっと嬉しそうにも見えるのは気のせいではないだろう。


 そんなことをしていると、階段を上る足音が聞こえてきた。

 僕らが揃ってそちらを見れば、結城がいた。



 「あ、ああ。春ちゃん。え、えっと…」

 「未来。何があったの?どこか変なところとかない?大丈夫?」

 「え?あ、ああ。うん、大丈夫だよ」

 「そ、そっか。よかった。あ〜、突然で悪いけど、何があったか聞きたいから生徒会室まで来てくれる?」


 明らかに何か僕らの足元…ああ、魔法陣か。それを見ている。

 …って、見えてるの?魔法使いか何かなの?

 よし、とりあえずこういう時は僕がごまかすとしようか。その方が楽だし。



 「うん。そうだね、結城さんは生徒会だもんね〜。学校の風紀を守らなきゃ〜」

 「じゃあ、こっちに来てよ」

 「ほ〜い。ほら、みんな行くよ〜」

 「あ、おう」

 

 僕らは階段を下り、生徒会室へと向かった。

 








 「生徒会長。連れてきたわよ」

 「わかっている」

 「はぁ…じゃあ、その辺に適当に座って」

 「了解〜」


 生徒会室に入ると、窓際の席に生徒会長…確か、姫路なんとかだったはず。いやぁ、僕そんなことよく覚えてたよね。


 僕は壁に立てかけてあったパイプ椅子を組み立てて、そこに座った。神野たちもその辺にあった椅子に座る。



 「さて。なんで僕たち呼ばれたの?」

 「何があった?」

 

 僕がそう聞くと、生徒会長が質問で返してきた。そっちがその気なら僕にも考えってやつがあるよ。



 「突然光った」

 「何が起きていた?」

 「何かが起きていた」

 「どうなった?」

 「生徒会室に呼ばれた」

 「ちょっとしんちゃん!答える気あるの?」

 「いや、だって本当のことだし。僕の質問にも答えてくれないんだもん」

 「はぁ…そうよね。生徒会長。私が代理として受け持ちますから」

 「了解した」


 なんとも無愛想な生徒会長さんだこと。

 …そんなことを思って結城と話をしようとしたら、会長から魔力的なものを感知した。



 「じゃあ、ちょっと事情聴取がしたいんだけど」

 「ほいほい。何が聞きたい?僕が代表して答えるよ。いいでしょ?みんな」

 「おう。頼んだ」

 「うん」

 「まず、あそこで何があったのか教えてくれる?」 

 「突然地面が光って、その後僕たちは元どおりあそこにいた」

 「そう。体とかに変化とか、何かあったりはしてない?」

 「うん。大丈夫だよ〜」

 「そう。わかったわ」


 会長が使ってたものを解析してみたら、魔法…それも紫が使っているようなものに近い、自分で現象を起こすまでの演算処理全てを行うタイプの魔法を使っていた。内容は嘘の発見かな?とりあえず、僕は嘘を言ってないから問題ないよね。だって、途中を全て話してないだけだもの。

 

 僕の話を聞いて、結城は会長の方を見る。

 会長はそれに頷いた。



 「で、何があったの?」

 「よくわからないのだけど、何かがあったのは確かね。とりあえず、学校に調査が入るかもしれないから今日はみんな帰ることになりそうよ」

 「ふ〜ん…ま、いいや。僕ら帰ってもいい?」

 「ええ。たぶん」


 『全校生徒、および教職員に連絡いたします。ただいま、本館4階の階段付近にて危険物質を探知ました。生徒は速やかに教室へ戻り、帰りのH・R(ホームルーム)を行って帰宅してください。また、4階中央階段の使用は避けてください。繰り返し連絡いたします。…』


 結城が微妙な表情をした後、スピーカーから放送が流れ出した。

 どうやら、そんな名目で僕らは帰されるようだ。


 「うん。帰って良さそうだね〜」

 「そうね」

 「じゃ、神野くん。僕たちも帰ろうよ」

 「おう。そうだな」

 「じゃ、結城さん。頑張ってね〜」



 僕らは生徒会室を後にする。

 その後、教室に向かい、教室の前で石井と安井と別れた。


 僕らが教室に入ると、すぐにH・R(ホームルーム)が始まった。


 「何か連絡のある人はいますか?」

 「…では次に、先生の話です。先生」

 「え〜。先ほど連絡があった通り、今日はお前らは帰るそうだ。俺らもすぐに職員会議があるから、さっさと帰るように。以上」

 「起立…礼!さようなら」

 「「「さようなら」」」


 

 生徒たちは教師に礼をして、ガタガタと帰りの準備を始める。

 僕も久しぶりに座った机から、筆箱と熱工学や流体力学の本を取り出しカバンにしまい、残りのプリントなどをそのままにしてカバンを持って立ち上がる。

 僕の席は、窓際から2番目の一番後ろ。

 僕は教室の後ろを通って廊下に出た。


 僕が廊下に出ると、神野がそれを追いかけるように走って教室から出てくる。



 「じゃ、帰ろっか」

 「おう。なんかこうやって帰るのも久しぶりだな」

 「そうだね〜。普段は部活があったし、最近は向こうにいたしね」

 「だな」


 僕らは廊下を歩き、言われた通り階段を避けて遠回りして1階の下駄箱に向かう。

 一度に全生徒が帰るために、珍しく渋滞している下駄箱の人だかりをかき分け、下駄箱に入っているローファーを取り出して履き、外に出る。



 「神野くん。そういえば、自転車の鍵ってなくしたりはしてない?」

 「……げ」

 「あ、そう。じゃあ、歩いて帰ろっか〜」

 「新ちゃんもか?」

 「うん。ま〜ね」

 「ははっ」


 神野は苦笑し、僕らは校門を出て歩き出す。

 まぁ、いくらでも複製できるけど、今ここで余計なことして自体を荒らげるのは避けておきたい。


 いやぁ、でもさすがに歩いて帰るのは面倒だな。

 ここから神野の家は歩きで20分くらいで着くが、僕の住むアパートは少し遠くて30分くらい歩く羽目になる。



 「そ、そういえば、新ちゃん」

 「どうしたの〜?」

 「俺ら向こうで1年半も何も勉強してなかったけど、後1ヶ月後には中間テストだったような気がするんだけど」

 「あ…ははは〜、気にしない気にしな〜い」


 そういえばそうだった。

 今までのテストは、クラスの授業中の進行速度と生徒の理解度、先生の出すテストの傾向を見てしっかりとテストの平均点を予測していたんだけど、大丈夫かな?いきなり点数が上がったら不審がられそうだし。



 「はぁぁ…マジでどうしよう」

 「早く帰って勉強でもすれば?神野くんは頭はいいし、しっかり授業も受けてたから1週間ぐらいあればどうにかなるよ…きっと」

 「きっとかよ⁉︎でも本当に早く帰ろうぜ」

 「じゃあ走る?」

 「そうだな。こんなカバン、俺の大剣に比べればなんてことないからな!」


 そう言って神野は走り出す。

 僕も同じように走り出した… 



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「じゃ、また明日?…とりあえず明日も学校があったら明日な」

 「うん。じゃね〜」


 僕は神野の家の前で神野と別れた。

 神野の家は定食屋”蔓屋”。店名の由来は自分の力だけでは蔓という植物が直立できないのと同じように、客がいなくてはやっていけないということかららしい。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。



 「さて、夕食の準備は…確か今日は水曜日だったから…うん。大丈夫だね」


 僕は結構細かに冷蔵庫内の食材の管理とかをしていたので、金曜日にスーパーに行き、次週の金曜日の夕食分でちょうど使い切れるようにして材料を買っていた。つまり、今日は家に帰れば準備はできているはずだ。

 …一体全体、何年前のことだろうか?軽く1000年以上前の記憶なんてほとんど忘れてるよ。さらに言えば、記憶を完全にすることができるようになったのはオービスに渡った後のことだから、この世界における記憶が結構曖昧になってるよ。


 「じゃ、ゆっくり帰りますかな〜」



 僕はテクテクと道を歩き始める。

 

 神野の家から少しした場所のコンビニの横を曲がり、またしばらく歩いて、住宅街の細い道を曲がり、これまたしばらく歩いて、スーパーの前を通り過ぎ、少ししたところで家に着く。




 「ふぅ…疲れた」


 

 しっかりと体を作っているせいで、ちゃんと疲労感がある。まぁ、この体自体が元々かなり鍛えていたせいでそこまで疲れないとはいえど、久しく感じる肉体の疲労は気分がいい。


 階段を登り、2階の僕の部屋に入る。

 僕の部屋は、DK5帖に6畳の洋室と和室があるだけの一般的な部屋。

 洋室にぎっしりと本棚が詰めてあり、和室を寝室として使っている。DKにはテーブルを置いてリビングにして、それ以外は椅子があるのと食器棚があるくらいだ。

 まぁ、暮らしやすいので文句はない。


 僕はバッグを降ろし制服を脱ぐと、和室に制服をかけ部屋着に着替える。

 そして、そのままキッチンに向かい持って行っていた弁当箱を洗い、ワイシャツときていたシャツを洗濯機に放り込み、ベランダに干しておいてあった洗濯物を取り込み、畳んで押入れの洋服を入れている場所に入れる。

 どうやら、日頃からやっていたことの癖はそう簡単には抜けないらしい。僕はさっさとやることを済まし、洋室に向かう。


 洋室は窓と扉以外は全てが本棚になっている。

 その真ん中にクッションが置いてあり、小さい折りたたみ式のテーブルがちょこんと置いてある。

 僕はそのクッションの上に正座して座る。



 「さて、覚え直さないと。『影人(シャドーマン)』」

 

 僕の影から人型の塊が7体出現し、本棚から本を取り出して読み始める。

 この影は人間としての五感は全て兼ね備えていて、視覚もちゃんと存在しているので、それを通して僕は8冊の本を同時に読む。 

 ちなみに、7体しか出さないのは単純に部屋の広さの問題だ。



 そうして、この世界に帰ってきて1日目が過ぎた。

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