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125.戦略を始めました

 「これにて王位継承式を終わる。シルフィード王国に栄光あれ!」


 ハルは段の上で貴族の並ぶこちら側を見つめている。





 かれこれ1年と3ヶ月。長かったね。


 

 僕が貴族になってから、様々なことに手を伸ばした。


 まず手始めに街道などの整備。続いて馬車の改良、印刷技術の普及。

 まぁ、とりあえずそこまでやったあたりで貴族の大半は僕らの陣営についた。


 それでもこっちにつかなかった側の大半は、うまく誘導して僕が分裂させた宗教側につかせた。


 この国に存在する宗教はシャルドネを唯一神として崇めるもののみ。

 教えは”全ての者を平等に扱う”的なことを言っているが、実際にシャルドネが作り上げた種族は人間種のみだ。そのことを一部の宗教者たちに流した途端に二分した。

 ”人間こそが至高の種族である”と言いだしたものと、今まで通り”全ての物を平等に扱う”と言うものだ。


 ハル達についた方は後者。

 つかなかった方を前者の方につかせた。



 これから時間をかけてゆっくりと進めていくつもりだが、遠からぬ未来にシルフィード王国は2つに別れることとなるだろう。

 人間種を至高の種族だという国とこのまま変わらない国とに。


 準備は順調に進めている。

 貴族の家庭教師に宗教者を混ぜて貴族の子供の思考を誘導させているし、北側にハルにつかなかった貴族達を飛ばしたりもしている。

 このままいけば、近いうちに北と南で2つに別れることとなるだろう。


 楽しみだ。






 「ハル。お疲れ〜」

 「ああ、シンか。これからも頼むよ」

 


 僕は貴族達が退場した後そのまま謁見の間に残り、ハルが座っている王座に近づく。



 「うん。どう?王座の座りごごちは?」

 「シンの屋敷の方がよかったよ」

 「ははは〜。まぁ何はともあれ、うまくいってよかったよ」

 「そうだね。君にはいくら礼を言っても言い足りないくらいだよ」

 「気にしなくていいよ〜。ハルはハルの力でこの地位を手に入れたんだから」

 「それは君の力添えがあってこそだったよ」

 「ははは〜。ま、これからもよろしくね」

 「ああ。よろしく頼むよ」

 「じゃあ、僕はもう戻るよ。やることも残っているからね」

 「そうか。じゃあまた機会があれば」


  

 僕はそれだけ言うと謁見の間を出る。




 これから行くのはマドーラだ。

 マドーラのリューカス…長老会、魔道研究所のあるところだ。

 そこで今僕が関与している魔法の話し合いをする。


 僕が関与しているのは結界魔法だ。大会で死人とかを出さないために研究の手伝いを去年の大会前からやっている。

 おかげでルディが一緒にいた時以来1回も出場してないよ。

 まぁ、でもおかげでもう少しで完璧な結界が完成する。


 結界の詳しい仕組みは放っておくとして、結界は内部である一定以上肉体に傷を負うと結界外に転移させ、肉体の怪我を治癒させるものを作っている。今は結界の外に出すのまではできているので、後はほとんどルーに任せればいい。

 魔道研究室にはルーもいたので、なんだかんだ仲直りしたのだ。


 ああ、あと転生させた騎士さん…えっと、ヒュベルダードだったかな?とりあえず、彼はそこの研究室の人の息子として生まれたよ。

 ルーが結構可愛がっているんだけど、中身を知ってる僕とすると面白くてならない。

 まぁ、僕がそれを見て笑ってると騎士さんが怒った表情で僕を見つめてくるんだけど、それがまた面白くて…じゃなかった。まぁ、とりあえず英才教育を受けてるよ。



 そんなことを思いつつ、僕は城の人通りの少なく影になる場所で”扉”を開き、空間を移動する。





 移動した先はもちろん研究所だ。

 研究所はリューカスに幾つもある塔の1つで、その中で2番目に高い奴だ。ああ、1番はもちろん長老会がある塔だよ。


 僕は研究室のある塔の中の3階に移動してきた。

 僕が手伝いをしているのは3階にある結界魔法研究室。ちなみにその隣にルーがいる”治癒魔法研究室”がある。

 ルーは今、僕が教えた魔法の知識を研究所のみんなに教えて回っている。

 ま、基礎ばっかりだけど、それでもその知識は今までのものと比べるとかなり画期的なものらしく、ルーはそこらじゅうの研究室に呼ばれてまくってる状態。


 …うん。それを連れてきて手伝わせてる僕は何も言えないね。





 僕は廊下を歩き研究室に入った。


 「やっほ〜。ルーはいる?」

 「あ、シンさん。今向こうに呼ばれて行っちゃいましたね」

 「そう?じゃあいいや。じゃ、今日も始めようか〜!」

 「はい。宜しくお願いします」


 

 僕の前には15人ほどの研究員がおり、今話していたのはここの室長のハービィ。彼は現在78歳のエルフの男で、ルーが子供の頃からここにいるらしくルーと仲がいい。

 ちなみにエルフの70歳くらいは、人間ではまだ20代前半くらいに相当する。


 僕は他の研究員と挨拶を交わすと、メインで研究をやっている5人に6人の助手を加えた、合計11人で研究を始めた。

 こうやって魔法を作るだけなら、1人でやるとすぐに完成するのだが、この世界の研究室の面目を潰さないほうがいいかな〜?って思って、ここの研究室のメンバーで一緒にやっている。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「じゃあ、あとはルーに任せるよ。もうあとはできるでしょ?」

 「ああ、もちろんできるさ。ありがとう、シン」

 「うん。じゃあ頑張ってね〜」


 途中からルーも加わり、魔法の研究をしていたのだが僕がいなくてもあとはできそうなのでルーに任せることにした。

 これで僕がやることは当分ないだろう。

 結局この研究室で手伝った魔法は、遠距離と連絡を取るための魔法、魔物除けの魔法、印刷をするための魔法、今の結界魔法…の合計4つ。まぁ、前の2つは僕が計画を進めるのに必要だったから作ったので、実際に手伝いを頼まれたのは2つだけどね。


 この研究所に来るのは当分なくてよさそうだ。

 とりあえず、これからやるべきことは宗教の方向性の誘導と、貴族の分裂の補助と、国をもう1つ作って助長させることだけ。

 しばらくはこれだけに集中していられそうだね。



 「さて、帰りますかな。『扉』」


 僕は扉を開き、屋敷に帰る。




 扉を開いた先は屋敷の正面玄関から少し離れた場所。

 なんで直接屋敷の中に扉を開かないのかというと、入ってもいない屋敷の持ち主が中から出てきたらおかしいからだ。

 ほんと、ちょっとしたことで面倒事になるから貴族は面倒くさい。


 僕は屋敷に向かって歩く。


 僕が屋敷を囲う柵の門の前に立つと、自動的に門が開いた。



 さて、僕の屋敷の紹介でもしておこう。


 屋敷はデザイン性に富んだ柵に囲われた400m四方くらいの広さの敷地に、明るい緑色の芝生が植えられている。

 ロダンの地獄の門をモチーフに作った門をくぐり、中に入れば正面玄関までに僕が作った4つの天使の石像が立ち並び、玄関までの道には白いタイルが敷き詰められている。

 屋敷は全体が白塗りの3階建で多くの窓がついた、ヨーロッパの昔の貴族の屋敷をイメージした横長で中心が他に比べ少し高い見た目をしている。

 入り口の扉は他の部分に比べ普通に作られているが、それでも高さが2mちょっとあり、細かに装飾を施したものだ。ちなみに扉についているノッカーはケルベロスが咥えている物だったりする。

 


 僕は中に入り、扉を開けて屋敷の中に入った。


 

 扉を開けて中に入ると、そこには無駄に豪華に作った玄関ホールがある。ついでに来客用の応接セットとかも。床には赤い絨毯がひかれ、壁には僕が気に入り買ってきた絵が、金縁に入れられて幾つも飾られている。

 玄関ホールを抜けると大広間がある。パーティや舞踏会を行えるように結構な広さを備えている上に、3階まで天井が吹き抜けになっていて、日中は太陽の光が入って明るい。さらにそこの隣に厨房と客が控える用の部屋を幾つか。

 他にも幾つかの部屋を用意しているが、まぁ1階はこんなものだ。

 他にあるものと言ったら、応接間と遊戯室と入浴場くらい。

 本当は執務室とかをここに置きたかったのだが、広さの問題で2階に設置した。

 

 僕は通り過ぎていくメイドたちを無視して、2階に上がる。



 無駄な装飾をした階段を登れば、そこには赤というより朱色のカーペットがひかれた廊下がある。

 2階には僕の執務室以外、全てが客用の宿泊部屋だ。 

 さて、3階に上がろう。


 僕はそこまでの装飾がされていない階段を上っていく。


 

 3階に上がると、そこにも朱色のカーペットがひかれた廊下があり、僕の部屋とアルとかアレクとかに使ってもいいと許可を出している部屋がある。

 

 僕は自分の部屋に入る。



 僕の部屋は向こうの世界で言う所の”キングサイズ”のベットと少し大きめのクローゼット、さらに鏡と机がある以外は天井からちょっと華美なシャンデリアがぶら下がっているだけの部屋。

 床には廊下よりちょっと濃い色のカーペットがひかれ、壁に3つほど窓がついている。まぁ、寝る以外は使わない…正しくは疲れて寝転がるため、だけの部屋だ。まぁ、疲れたとは言ってもそんな気がするだけだけどね。


 僕はそのクローゼットのうちの1つを開ける。


 そこにはパーティや貴族らしい格好が必要とされる時用の服がしまわれている。




 そして、僕はそのクローゼットの中に入って、扉を閉めた。

 さて、まぁ想像がつくだろう。秘密の部屋的な何かであるということは。



 僕はそのままクローゼットの奥に進む。


 そして、少し進んだ先には扉がある。

 まぁ、横開きな上に取っ手とかはほとんど見えないような作りなので、見つけるのはかなり困難だろう。

 

 

 僕はその扉を開ける。


 すると、そこに階段が現れた。

 


 僕はその階段を下っていく。


 そしてそのまま4階分程階段を下った先に、再び扉が現れた。



 僕はその扉を開くと、その中に入る。


 そこは地下1階。

 僕が作り変えた黒光りする金属の壁で覆われ、フローリングの床と向こうの世界にあるような蛍光灯風の光源が天井についた部屋だ。

 広さは大体10畳くらいで、そこまで広くない。そして、そこにあるのは26個の椅子のみ。


 さて、この部屋が何の部屋かといえば集会の部屋だ。

 僕の暗部たちとのね。



 僕はその部屋に用意してある椅子に腰掛け、他のメンバーを待つ。


 この部屋に繋がる道は4つあり。僕の部屋、教会と王城の内部、裏通りの壁の後ろだ。


 今現在は王城に1部隊、目をつけている王都内にいる貴族に11部隊、王都と他の教会に合計で5部隊、北のほうにいる辺境貴族たちに8部隊だ。あと一応僕側にいる貴族たちにも少し監視をつけている。


 

 この場所に来るのはその部隊の各隊長のみ。

 ちなみに、部隊は僕がセビアの奴隷商で有能なのを連れてきて教育した。おかげでほとんどの部隊が獣人か亜人族ばっかりになっている。


 だってあいつら能力値とか才能が高いんだもん。しょうがない。


 ちなみに、奴隷の首輪をちょっと改造して、喉のあたりに遠距離で連絡が取れる魔道具を取り付けてある。おかげで、北のほうのいる貴族にところにいる奴らとも連絡が取れる。




 僕が椅子に座って待っていると、少しして燕尾服の隊長たちが集まり出す。

 


 なんで燕尾服なのかというと、貴族の屋敷とかに侵入している奴らと連絡を取るとき以外は普通にうちの執事をやってるからね。

 



 「さて、みんな集まったみたいだね。報告会を始めよう」


 

 燕尾服のエルフ、人間種、獣人種、鬼人種、有翼種、九孤種、竜人種、小人種、巻角種…その他いくつかの種族が席に着いた。


 こいつらは奴隷の中でもなかなかに知脳が高いやつらを集めてきた。

 纏め役としてはぴったりな能力を持った種族を中心にね。


 まぁ、ちょっと亜人と獣人との差の説明もしておこう。

 獣人は獣、または他生物の特徴を持つ人型種族だ。で、亜人はどちらかというと妖怪に近い種族。

 より、九孤種は亜人族。孤族は獣人に含まれていたりする。


 で、なんでこんなことを言うのかというと、今ここにいる種族にはちょっと特殊な能力などを持つ者を中心に集めているからだ。


 例えば鬼人種、この種族は能力を底上げする方法を持っている。角に魔力を込めるだっけな?それにより能力値が一時的に上昇する。

 例えば九孤種、この種族は幻影を使える。魔力を特殊な使い方をすることで、自分の魔力の干渉可能な範囲内で幻影を作り出す。

 例えば竜人種、この種族は体にある竜鱗を魔力によってかなり硬化することができる。それによって少し身体強化の効果も。



 他にもいくつかの特殊な能力を持っている者が。

 より、今僕の屋敷内にいる執事は全て多種多様なことができる。護衛、盾、剣、料理、掃除、家庭教師、冒険者、官司…その他いろいろ。なので、普段僕の屋敷にいない間は貴族の屋敷で仕事をしていたり、冒険者として街に紛れていたりして、暗部の伝達を中心として働いている。



 「じゃ、1番隊から報告を始めて〜」

 「はっ。では」


 

 1番隊の隊長の犬の獣人が紙を取り出し、僕の手渡して情報を報告し始めた…



意見感想等あったらお願いします。

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