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123.尾けられました

 で、2日目。



 朝から僕はある家の前に立っている。

 アレクの家だ。


 頑張って探したよ。

 おかげで蜂を20匹も操作する羽目になった。

 人間で同時に30人分くらいの思考が必要だよ?結構大変だった。


 

 で、見つけた家は普通の2階建ての一軒家。煉瓦造りの外装に木製の扉。敷地内には木が1本立っていて、煙突からは煙が出ている。


 さて、とりあえずノックしようか。


 僕は扉についているノッカーを鳴らす。というか、これって鳴らすであってるのかな?

 少しすると中から扉に近づいてくる音が聞こえて来た。

 そして、扉が開く。 

 中からアレクが顔を出した。


 「お、新か。どうした?」

 「いや、ちょっと勧誘にね〜」

 「勧誘?まぁ、とりあえず入れ」

 「じゃあお邪魔しま〜す」



 僕は中に入った。

 中はいたって普通のヨーロッパ建築。ここに騎士団長が住んでるなんてとても思えないほど、どこにでもあるような家だった、

 僕は客間に通されると、そこにある椅子に座った。

 

 そしてアレクがどこかに行ったかと思うと、紅茶の入ったカップを持って戻ってきた。



 「さて、勧誘だったな。何に勧誘しに来たんだ?」

 「えっとね〜。騎士、やらない?」

 「騎士なら辞めたばかりだが?」

 「うん、知ってる。僕さ、これから貴族になるから私兵として雇いたいんだ。雇われてくれない?」

 「そうか。新は貴族になるのか。このことを拓巳たちは知っているのか?」

 「いや、当然知らないよ〜。それに、知ろうと知らまいと僕はそのうち向こうの世界に帰るから関係ないしね」

 「そうか。まぁ、それならばいいか」



 何がいいのだろうか?


 「…?で、どう?」

 「そうだな。腕がこれで構わないのならいいぞ」

 「うん。全く構わないよ〜」

 「そうか。騎士団はこのままやるのはさすがに格好がつかないのでやめたが、それでいいなら雇われよう」

 「じゃあよろしく頼むよ」



 というか、さっきからちびちび紅茶を飲んでいるのだが、結構うまい…


 「で、俺はどうすればいいんだ?」

 「えっとね、あと1ヶ月くらいで屋敷が出来上がるから、そしたらまた来るよ」

 「そうか。わかった」

 「うん。じゃあごちそうさま。美味しかったよ」

 「お粗末様だ」

 「じゃ、僕はもう行くから」

 「もう行くのか?」

 「うん。他にも行かないといけないところもあるからさ」



 僕は席を立つとアレクの家を出る。



 家を出ると、僕は後ろの方にちょっと意識を向け、それから歩き出す。


 次に向かうのはギルドだ。

 もう少しで帰ってくると思うし、受付嬢さんにも話をしようと思うのだ。


 僕は後ろを確認しつつ、ギルドに向かう。



 さて、なんでさっきから後ろを確認しているのかというと、この間からずっと同じような気配…というか魔力を持ってる人に尾けられているのだ。

 初めに気付いたのはカリーナのために人を呼んだ時に、宿に連れて行ったりするために外に出た日だ。

 王都に帰ってきた次の日、勇者のパーティ、式のための準備…なぜか毎回僕の近くに同じ魔力を持った人が付かず離れずな距離でついてきていたのだ。

 その後、準備で外に出て行く度に尾けられていればさすがに気付く。

 

 それからというもの、僕が外に出る度に後ろからついてきているので、一応警戒をしつつ放置しているのだ。さすがに攻撃を仕掛けられたりするのは、面倒ごとが発生しかねないので警戒は怠らない。

 勧誘が全員終わったら、どうにかしよう。




 カランカラン…と、鈴がなってギルドに入る。

 さすがに追跡者はギルドには入ってこない。


 僕は受付に向かう。


 「新一郎様。どうかされましたか?」

 「ちょっとお話があってね〜」

 「私にですか?」

 「そ。今暇してる?」

 「ええと、そういったことはお断りしてるのですが…」

 


 …もしかして、僕ナンパか何かとか思われてる?

 

 「あ。えっと、ただ単にギルド内で話しづらかっただけなんだけど」

 「ああ、そうでしたか。では、上にどうぞ」

 「ほ〜い」


 

 受付嬢さんは受付から出て、僕らは階段を上って上の階の応接室に向かった。




 「それで、どういったご用件でしょうか?」

 「うん。受付嬢さん、僕の下で働く気はない?僕さ、これから貴族になるんだ。楽しいと思うよ?」

 「き、貴族ですか。なるほど、確かにそれは話せませんね。貴族ですか…そうですか…」



 受付嬢さんは考え込んでいる。


 「あ、もちろん今答えなくってもいいよ。さすがにちょっと考える時間は必要でしょ?」

 「え…いや、そうですね」

 「できれば私兵を集めてるからそこで働いて欲しいんだけど、秘書とかメイド長とかでも構わないよ」

 「なるほど。では、秘書としてならいいですよ。貴方といれば退屈しなさそうですし。そろそろ、受付にも飽きてきたところです」

 「そう?じゃあお願いするよ。とりあえず、1ヶ月後くらいに屋敷が完成するから、そしたらまた来るよ」

 「わかりました。それと、私はバーニスです。これからもよろしくお願いしますね」

 「うん。じゃあよろしくね、バーニス」



 受付嬢さんの名前、初めて知ったわ。

 前に聞いた時は、ギルドでの取り決めでギルドに面倒ごとを持ち込まないように名前とか素性はできるだけ話さないように言われているらしかったのだ。


 「はい。では、戻りましょうか」

 


 バーニスは扉を開けてくれる。

 僕は廊下に出て、1階に降りた。


 僕らが一緒に1階に降りてきたのを見て、一部の冒険者が騒いでいるが気にしない。

 そして、さらに運のいいことに受付にフェルナンの姿が見える。

 どうやら竜宮は帰ってきたようだ。


 僕はエリックとユーグのところに行く。



 「お!新じゃんか。どうした?仕事してたのか?」

 「う〜ん…これも仕事?まぁいいや、ちょっと話があるんだけど…いい?」

 「おう、かまわないぞ。どこに行く?」

 「う〜ん。とりあえず人がそこまで多くないほうがいいな」

 「じゃあ俺らのホームでいいか?」

 「うん、そこでいいよ。で、それってどこ?」

 「南側の表通りから2つ目の通りだ。どうせ今から一緒に行くからどうだってよくないか?」

 「まぁそうだね。というか、他のメンバーは?」



 そう。今ギルドに来てたのはフェルナンとエリックとユーグのみ。

 女性陣がいない。どうしたのかな?


 「いや、なんか体調が悪いって言って、先にホームに戻ってんだよ。俺が付いて行こうか?って聞いたら断られるしよ…まったく、何なんだ?」

 「あ、うん。とりあえず、そっとしておいてあげなよ。あ、フェルナンさんも終わったみたいだね」


 

 なんかだいたい想像がつく内容だった。

 そんなことをしている間に、フェルナンが報告を終わらせたようだ。


 「お、終わったみたいだな」

 「そうっすね」

 「お〜い」

 

 

 フェルナンは僕がいるのに初めて気がついたようで、ちょっと驚いた表情をして僕らのところまで来た。




 「シンか。どうした?仕事か?」

 「いや〜。ちょっと用があったんだよ」

 「でよ、俺らのホームに呼んでもいいよな?」

 「いいっすよね?」

 「はぁ…また勝手に人を呼んで。怒られるぞ?主にベルは今不機嫌だからな」



 フェルナンが疲れた表情を浮かべる。

 

 「別に今じゃなくてもいいんだけど…」

 「そうか?」

 「で、何の用なんだ?」

 「少なくてもギルド内でできない話〜」

 「そうか。ならとりあえず、外に出よう」

 「ほ〜い」



 僕らはギルドの外に出た。




 「で、何の話だ?」

 「ああ、あのさ、騎士やるつもりない?」 

 「俺はないぞ」

 「あ、俺もっす」

 「俺もだ」

 「お、おおう。一刀両断されたよ…」

 「てか、なんでそんな話をしてんだ?何かあったのか?」

 「えっとね、僕がこれから貴族になるからさ」



 僕がそう言うと ユーグはなんか凄く眠そうに目をこすり、エリックは自分の背負っている大きな盾を触り、フェルナンは呆然としている。

 とりあえず、これがどういうことなのかを2人がまったく理解できていないのは理解した。

 

 「シン、いったい何をしたんだ?」

 「いや、色々?」

 「色々じゃないだろ…ほんとにお前、何者だよ」

 「う〜ん…一般人かな?」

 「それはないだろうよ。それにだいたい色々やって貴族になるって言っても、相当のことをしないと無理だろ?俺はその色々が聞きたいよ」

 「そう?」

 「そうだろ。というかこいつらはどういうことだかを理解してないようだな…貴族になるっていうのはな、相当国に貢献しないと無理なんだよ。それも俺らみたいなAランクでも到底成し遂げられないようなレベルのな」

 「「ええっ⁉︎」」



 さっきまで、それがどうかしたのだろうかとでも言うような態度だったのが、今は本気で驚いている。

 今、2人は立ち止まってその場でプルプル震えてる。


 「別にそんなにやってないよ〜?ただ、ちょっと宰相脅しただけで」

 「はぁ⁉︎脅しただと?」

 「あ、いや、ちょっと違うかな?」

 「ちょっとだけかよ⁉︎ほぼ脅したに等しいってことか?」

 「あ〜…とりあえず、その話は終了〜!」


 

 そのうちえらいこと言っちゃいそうなので、話をぶった切る。

 

 「はぁ…とりあえず、言いたいことはわかった。つまり、俺らにシンの騎士をやらないかってことだろ?」

 「あ、そうそう。やらない?」

 「俺はやるつもりはないし。多分、他も同じだぞ」



 ま、しょうがないか。冒険者は結構自由に色々できることが売りな職業みたいなものだし。

 騎士には制約が色々あるからね。


 「ふ〜ん。じゃあいいや」

 「…断られたのに断った理由は聞かないのか?」

 「いや、別に強制するつもりはないし、ただ単に僕の要望より優先することがあるってことでしょ?」

 「まぁそうだな」

 「聞いて欲しいなら聞くよ?」

 「いや、聞かないなら別にいい。話はそれだけか?」

 「うん。まぁね〜。じゃ、1ヶ月後くらいには屋敷が完成するから遊びに来なよ。場所は前にアーノルドっていう貴族が住んでた場所だから」

 「そうか。まぁ、暇だったら行く」

 「俺は絶対に行くっす」

 「俺も行くぞ」

 「…俺にも行けって言いたいんだな」

 


 エリックとユーグはものすごく目を輝かせている。

 さっきまでプルプルしてたと思ったら、いつの間にか復活していたようだ。


 「じゃ、またそのうちね〜」

 「おう。また今度な」

 「絶対遊びに行くっす!」

 「はぁ…迷惑をかけるかもしれないが、たのむな」

 「うん。じゃ、僕は行くね〜」



 僕は別れを告げ、その場を後にした。 


 


 さてと。じゃあ、追跡者をどうにかしてやろう。


 どうやってやろうかな?

 今から突然突撃するか、接触があるまで待つか、気にせず放置し続けるか…


 よし、しばらく同じ行動を繰り返しておこう。

 暗殺者的な何かとかなら、そのうち手を出してくるはず。


 

 * * *


 3日目。今日も追跡者に変化はない。


 * * *


 4日目。今日も変化はない。


 * * *


 5日目。今日は追跡者がいない。どうしたのだろうか?


 * * *


 6日目から8日目。追跡者がいなかったので、街を満喫するだけの日々を過ごした。


 * * *


 9日目。追跡者が帰ってきた。今までに比べ、殺気を放っている気がする。


 * * *


 で、10日目。


 今日も追跡者は強い殺気を放っているね。

 

 「でも、さすがに殺気が隠せないようじゃ暗殺者としてはアウトだね〜」



 殺気は隠せないとダメだよね。なんというか嫌な感じが漂っていれば、外とかに出てこなくなっちゃうよ?


 それに朝から街を歩いているのだが、ずっと僕の後ろ4mくらいの範囲にいる上に、人通りが多いからか手を出してくる気配もない。

 …いっその事、人通りの少ない場所に行こうかな?


 そんな事を思いつつ昼までふらふらと街をぶらつき、昼食を食べるためにアルバートの店に入った。



 昨日と今日はアルバートの店は休みの予定だったが、昨日は暇してたみたいだから今日は閉まってるけど気にせず昼飯を食べに来たのだ。どうせ暇してるのだろう。ついでに幾つかレシピでも教えてやろう。


 僕が得意とする料理は中華料理なんだけど、この世界に豆板醤とか甜麺醤とかの中華系の調味料がなかった上に、この世界の料理は和風か洋風の2択だったので諦めてイタリア料理を教えたのだ。

 教えた料理はピザとかをメインに、肉料理とパンをいくつか種類を教えた。

 なんだかんだで肉料理系を作るのがうまかったので、僕はそういった料理ばっかり食べてるけど、本来この店はピザの店なのだ。なんかこの世界にはピザが今までなかったらしく、一気に人気になった。


 いやぁ。一時期料理にはまって色々と覚えたんだけど…意外なところで役に立ったね。

 材料とかをネットで取り寄せてまでやってみたりした甲斐があったよ。



 「お〜い。アルバート、暇でしょ?働け?」


 

 僕は扉を勝手に開けて入り、厨房で自分の昼飯を作っているアルバートに言い放つ。



 「まず第一になんで勝手に入って来てるんだよ!」

 「いいじゃん。僕と君の仲でしょ?」

 「まぁいいんだけどよ?ノックぐらいしろよ」

 「ほ〜い。で、遊びにと教えに来てあげたぞ。ひれ伏すがいい〜」

 「なんでひれ伏すんだよ。お断りだっ!」

 「え〜…ダメ?」



 僕は上目遣いでアルバートを見つめる。


 「男がやっても嬉しくねぇ!むしろ汚ねぇから!」

 「ま、そんな事はどうでもいいとして、なんか作るか、僕に教わるかどっちがいい?」

 「お、またなんか教えてくれんのか?大歓迎だぞ。是非そうしてくれ」

 「じゃあ、とりあえず…」


 

 僕は厨房に入り、勝手に材料を漁り、作る品を考えて、アルバートに説明をしながら料理を作り始めた…


意見感想等あったらお願いします。

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