119.話をしました
「ところでどこに行くのかな?」
「う〜ん…とりあえず、僕らの部屋の階に行こうかな。そこなら神野君たちがいるから知ってるかもしれないし」
僕らは王城に入って、階段を上る。
「さて、どこから行こうかな〜」
「そういえば神野君というのは勇者なんだったね。君の作った魔王がどうだったのか是非とも聞きたいね」
「ははは〜。結構頑張って作ったから、話は楽しみだね」
エルさんには、ルファーリオに帰ってきた日の次の日に僕が神様もどきな事を除いて魔王の件を話して、魔王たちが住む場所に連れて行った。
リューゼルドは最初エルさんを睨んでいたけど、結局最後は仲良く酒を飲み交わしてたよ。
「さて、今部屋にいるかな〜?」
僕らは4階まで階段を上ると、神野の部屋の目の前まで行く。
「さて、神野く〜ん。いる〜?」
『あ〜、新ちゃんか?』
「うん。入るね〜」
『はっ?いや、ちょっと待て、待て!』
「知らな〜い」
中から声が聞こえてきたので、入るなという神野の声を無視して扉を開けて中に入る。
「や、神野くん。ただいま〜」
「お、おう。おかえり」
さて、なんで入るなと言われたのかは中に入った瞬間にわかった。
神野が風呂から出た瞬間で、タオルを腰に巻いていた。ま、僕は気にしない。少なくとも、今はあっちの体じゃないからそんなに…ね?
「エルさんも入ってきなよ〜」
「ああ、そうさせてもらうよ」
エルさんも中に入ってくる。
「うん。新ちゃんちょっと待とうか。そっちは誰?」
「あ、こっち?エルさんだよ」
「エルさんって…いや、誰だよ?」
「エルさんは、エルさんだよ?」
「いや、わかんないからな⁉︎」
「じゃあ仕方ないね。エルさん、ちょっと自己紹介してあげてくれる?」
「儂はエルシード・グラスフェア。多分知らないだろうけど、君の前に魔王と戦ったものだよ」
神野はその言葉を聞いて、ポカーンってしてる。
「とりあえずさ、神野くん着替えたら?」
「…あ、おう。そうだな」
神野はシャワー室の目の前からクローゼットまで移動して、クローゼットから服を出して着替えていく。
神野は180cm近い身長、黙っていさえすればイケメンな顔、それにジーパンとTシャツと僕があげたネックレス…格好がほぼひきこもりだよ、神野。
外見はいいんだから、もうちょっとくらい服装を気にしようよ…
「さてと。で、どうしたんだ?わざわざ来たんだから、何かしらはあるんだろう」
「ああ、そうそう。ソフィさんはどこにいるかわかる?」
「ソフィ?あ〜…多分、部屋か王様の執務室あたりだと思うぞ」
「ふ〜ん。で、それってどこ?」
「…ったく。今から一緒に行くよ」
「お〜。さすがは神野くん。よくわかってるね〜」
「人を便利屋みたいに使いやがって」
神野はちょっと楽しそうにそう言うと、扉を開けて廊下に出て僕らを呼ぶ。
「エルさん、行くよ〜」
「ああ、わかったよ」
僕らも廊下に出ると、神野は鍵を閉める。
「ああ、そうだそうだ」
「ん?どうかしたのか?」
「え〜っと…あ、あった。神野くん、パス」
「え?ちょっ⁉︎いきなり何を投げた?」
僕はさっきネックレスを見て、う〜ん…と、何かを忘れてるような気がし続けてたんだけど、やっと思い出した。
僕が神野たちのために作った、羽を模った異空間倉庫のやつだ。
「えっと、これは?」
「それはね〜…あ、神野くんならわかるね。ゲームのアイテムボックスみたいなものだよ」
「おお〜!マジで⁉︎」
「あ、うん。そうだよ〜」
突然ガッツポーズをする神野にちょっと引きながら、僕らは神野について廊下を歩き出す。
「これ、どうやって使うんだ?」
「えっと、まずネックレスに取り付けたら?」
「あ、おう。わかった」
神野はカチャカチャとネックレスを外すと、そこに取り付ける。
「よし!で、どうやって使うんだ?」
「とりあえずちょっと落ち着こうよ、ヲタクめ」
「いや。俺、なんで今軽く罵られたの⁉︎」
「ほら、わかったから」
「お、おおう…」
「で、使い方だったね。まずは魔力をちょっと込めてみて」
「了解だ」
神野は魔力をネックレスに魔力を込めたのが見える。
これで対象魔力を認識したので、これからは少しだけ維持に必要な魔力を常に神野から勝手に回収する。
「で、使い方は自分の所有物を仕舞うことを意識する、出したい物を意識しながら出したい場所を見るだよ〜」
「ええと…試す物がない」
「うん。とりあえずいくらでも入れられるから、あとで自分の剣をしまっておきなよ〜」
「ああ、そうだな」
「そうすればまた何かあったときに便利だしね」
向こうでも魔力自体は回復していくだろうから、問題なく使えるはずだ。
「新君…それは物をいくらでもしまえるということなのかな?」
「うん。そうだね〜」
「…はぁ。またずいぶんな物を」
エルさんは僕の横で頭を抱えている。
「どうかしたのか?」
「どうしたもこうしたもないよ!こんな物は今のこの世界の技術では到底作れない物なんだよ!」
「…新ちゃん。一体どうやって作ったんだよ」
「ん?普通に結構頑張って作ったよ〜。この城を出てすぐのあたりからずっとね〜」
「おおう。1年近くかけて作ったのかよ…俺は無理だな」
「そうだね〜。神野くんはそんなに長い時間何かやってられないもんね〜?」
「お、おう。なんかバカにされたような気がするのは気のせいだろうか…」
そんなことを言いつつ、部屋まで到着したようだ。
5階にある扉のうちの1つの前で立ち止まる。
「さて、いるかな?」
神野は扉をノックする。
「ソフィ、いるか?」
『はい…拓巳さんですね。どうかされましたか?』
「おう、新ちゃんが来たいって言うから連れてきた」
『そうですか。ちょっとお待ちください。今開けますね』
ガチャ…と、鍵が開く音がして、向こうから扉を開けてくれた。
「お久しぶりですね。新さん」
「うん。ソフィさんも久しぶり〜」
「ええと…そちらの方は?」
「ああ、とりあえず中に入ってもいい?」
「え、ええ。どうぞ」
「お邪魔しま〜す」
中に入ると紙の束や羽ペン、その他いろいろな勉強とかに必要な物が置いてある机と本が置いてある本棚がある。
「で、なんで来たか説明するとしようじゃないか〜」
「あ、はい」
僕は近くにあった椅子に座り、エルさんと神野は立ったまま、ソフィは机のところの椅子に座った。
「まずさ、エルさんに部屋くれない?」
「え、ええと…そちらの方ですか?」
「あ、うん。エルさん、何回も悪いんだけど自己紹介してもらえる?多分それで話は終わるだろうから」
「ああ、構わないよ。儂はエルシード・グラスフェアだよ」
「…もしかして英雄の?」
「ああ。そうだよ」
「なるほど、そういうことでしたら部屋を用意させてもらいますね。あと、国賓扱いとなりますね。そういった細かいことを話したいので、お時間をいただけますでしょうか?」
「今かな?」
「いえ、いつでも」
この分で行けば僕らは必要なさそうかな?
それなら、図書館の場所だけ教えて僕は宰相のところに行ってきたいんだけど。
神野くんたちを連れて褒美の話とかに。
「今でも構わないよ」
「それですか。では、椅子を用意いたしますね」
「ああ。ありがとう」
「エルさん、僕らちょっと出かけてきてもいい?」
「ん?別に構わないよ」
「うん。じゃ、僕らはちょっと行ってくるから、エルさんは話が終わったら図書館に行ってあげてよ。図書館は2階の一番端にあるから」
「わかったよ」
「うん。じゃ、またあとでね〜。よし、神野くん、行くよ〜!」
「はっ⁉︎いや、どこにだよ?」
「とにかくついてきてよ」
「お、おう」
僕は神野を連れて、僕らの部屋の階に向かう。
「で、戻って来たけど。どうしたんだ?」
「安井さんたちは今いる〜?」
「ん?多分いるんじゃないか?さっき昼食食べたばっかりだし」
「うん。じゃ、訪ねようか〜」
「いや、説明しろよっ⁉︎」
「あとでまとめてね〜」
僕は安井の部屋に向かい、いなかったので石井の部屋に向かった。
「お〜い。和也、いるか?」
『ああ、拓巳かよ』
「安井も一緒にか?」
『うん、いるよ。どうかしたの?』
「新ちゃんがちょっとなんかあるらしいから」
『え?しんちゃん帰って来たの?入って入って』
「じゃあ、邪魔するな」
神野は扉を開けて中に入った。
「やっほ〜。石井くん安井さん、お久しぶり〜」
「おかえりしんちゃん。いつ帰ってきたの?」
「今日。今さっき。ちょっと前。お昼食べる前くらい。11時過ぎ「ちょっとストップ!」え、まだあるよ?」
「いや、なんでしんちゃん同じ意味の単語を言いまくってるの⁉︎」
なんとなく、いろいろ言ってみたら石井に止められた。まだまだ言えるよ?
「気分かな〜?」
「そ、そっか。で、俺らに用事ってなんだ?」
「うん。まずは討伐お疲れさま」
「ああ、ありがとう」
「で、それできっと褒美的なものがもらえるでしょ?」
「おう。多分もらえるだろうな…新ちゃん、もしかしてその話か?」
神野が気がついたようだ。
「うん。でさ、神野くんたち何か欲しいものとかあるの?」
「あ〜…帰る方法とか?」
「あ、それはもうちょっとだよ〜」
「え?本当に⁉︎私たち帰れるの⁉︎」
「あ、うん。多分、あと2週間くらいで完成したのが送られてくるんじゃないかな?」
こないだ経過を確認しに行った時には、すでにほとんど完成していてあとは最終確認のみだったので、もう少ししたら送られてくるはずだ。
細かいところはきっちりできていたし、向こうに帰る時に肉体の時間をいじるのは僕が付け足すつもりで作ってあるので、もう終わった同然だ。
「じゃあ、俺らの披露宴だっか?あれが終わったらすぐに帰れるのか?」
「あ〜。多分帰れると思うよ。ま、僕は遅れて帰るけどね」
「「「え?」」」
なんかみんなに凝視された。
「いや、今まで誰にも行ってなかったんだけどさ。僕って実は空間属性を持ってるんだ〜。で、神野くんたちが帰るのを手伝うからさ。こないだ経過を聞いた結果がさ、送るのにソフィさんの魔力だけじゃたりなさそうだったし、その上に一度に送れるのは3人までみたいだったから僕はそのあとに帰るよ」
「…新ちゃん、また勝手にそんなことを」
「まぁ、すぐにあとを追いかけるから安心してよ」
「そうなの?じゃあ、大丈夫なんじゃないの?私たちのあとにきちんと帰ってくるんでしょ?」
「うん。すぐに帰るよ」
「ま、新ちゃんだし、大丈夫だろうけどな」
「ということでさ、褒美に何か欲しいものとかないの?あ、そうだ。これ僕からあげるね」
さっき神野に渡した異空間倉庫のチャームを石井と安井に渡す。
「これ何?」
「えっとね、安井さんってゲームやる?」
「う〜ん…あんまり」
「じゃ、説明するね。本当は神野くんにやらせたほうがいいんだけど、神野くん…語彙力低いでしょ?」
「うっせ」
「ということで、説明するよ。それには異空間倉庫っていう魔法が付与されているんだ。僕が1年近くかけて作ったんだよ?で、それには名前の通り物を収納することができるんだ。容量とサイズの制限はなし、いくらでもね?もちろん重さも感じないよ。ここまでで何かある?」
「ちょっとストップしてもらっていいかな?つまり、それはいくらでも物を持つことができるようになるってことでいいの?」
「うん。まぁそうだね。容量に制限がない上に重さを感じないバッグとかだと思ってくれればいいよ。で、使用方法は、神野くんに実際にやってもらうよ」
「え?俺に?」
「うん。さっき説明したでしょ?」
「あ〜…まぁ、やってみるよ。何を仕舞えばいい?」
「あ、神野くんの持ち物じゃないとしまえないからね〜」
「おう。じゃあ…」
神野は部屋の中をキョロキョロと見回す。
そして、何かを見つけたようで、それを持ってきた。
「こういうのはどうなんだ?」
「あ、大丈夫だよ〜。水は誰の物でもないから、神野くんが”自分の物だ”って意識しけやればできるんじゃないかな?」
「よし、じゃあいくぞ…お、消えた」
神野が洗面台から持ってきた水はコップの中から消滅した。
「ま、こんな感じに仕舞いたい物を意識しながら、しまおうと思えばしまうことができるよ」
「へぇ〜。ちょっと俺もやってみていい?」
「うん。まずはネックレスに取り付けたら?」
「そうするわ」
石井はネックレスを外し、そこにつける。
安井は…なんか申し訳なさげにこっちを見ている。
「どうかしたの?」
「えっとね?魔王と戦ってる時に私を守ってくれて壊れちゃったから…その…」
「あ、そうなんだ。じゃ、今度はもっと女の子らしい物を作っれあげるよ。チェーンはある?」
「うん。ちょっと取ってくるね」
そう言うと、安井は部屋を出て行く。
なるほど。警護のネックレスはこの世界に来てすぐに作ったから、一度使うと壊れちゃう作り方で作ったんだったね。
今度のやつは自分の魔力で動く方でもう一度作ってあげよう。せっかくだし、ハートとかをモチーフにしたやつとかがいいかな?
…向こうの世界に帰ったら、ネットとかでアクセサリーでも売ろうかな?
やってて思うんだけど、僕こういうことに対する能力が無駄に高いんだよね。デザインとかそれを作るとかね。小学校こ中学校で図工とか技術で作った物は、毎年デザイン賞的な物を市に貰ってたし、美術も毎年集会とかで何回か表彰されてるし。
うん。やってみよう。材料費は創世で作ればいいからかからないし、損はないからね!
「しんちゃん、つけたよ」
「あ。じゃあ、それに魔力を込めてみて」
「わかった…よし、これでいいの?」
「うん。じゃ、やり方は今やったみたいにね」
そう言ってやると、石井は部屋にある物を色々としまって試している。
神野は水道とこっちを行ったり来たり。
…どんだけ水を仕舞うつもりなんだ、神野よ。
そんなことをやっている間に安井が帰ってきた。
「取ってきたよ!」
「じゃ、それにつけてみて〜」
「は〜い」
安井はそれにカチャカチャと羽のチャームをつける。
「これでいいのかな?」
「うん。じゃあ、それに魔力を込めて、つけてみてよ」
「うん。わかった」
安井は魔力を込めた後、それを首につけた。
「こんな感じ?」
「そそ。で、さっき神野くんがやってたみたいにね」
「わかった…お、できた」
「で、ちょっと聞いてくれる〜。出し方は出したい場所を見て、出す物を意識すればだせるから〜」
「おう」
「うん」
「わかったよ〜」
そんな感じに神野たちは物を出したりしまったりをしてる。
…あれ?話がしたかったんだけど。
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