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114.つくりました

 「じゃ、神野くんたち頑張ってね〜」

 「おう。新ちゃん、あとのことは俺らに任せろ。そっちはみんなで帰れるように準備を頼むわ」

 「うん。じゃ、ニーズ。行くよ〜」



 今、僕は海のそばに泊めてる船の近くで、ニーズに乗って神野たちと別れているところだ。

 戦うのは手伝ってもつまらない以外にも、神野たちに僕の能力値を知られると色々まずいことが多いから、邪魔になる前に撤収しておくとしよう。

 

 「グラァウウ!」



 僕はニーズに合図を出して、空へと飛び上がり、そのまま魔族大陸をあとにする。

 向こうの方から兵士たちの視線を感じるんだけど、とりあえず放置しよう。


 さて、僕がこれからどこに向かうのかというと、精霊大陸だ。

 精霊を作ってみようと思ったんだけど、ロメを観察して作ったのは純精霊じゃないし、適当に作ったら妖精になった。と、いうわけで実物を見に行こうと思うのだ。神野たちと一緒にいたやつは初日は船に酔ってて寝てたから会えなかったし、次の日は説明を終えてすぐに出て今に至るわけだから、結果会えていないのだ。


 「さて、どうやって行こうかな〜…?」

 

  

 僕はニーズの上で肉体を元に戻す。

 別に誰かに見られているわけじゃないし、変えていると着ぐるみを着てるみたいでなんかだるいのだ。


 で、肝心の精霊大陸なんだけど、どこにあるのかがはっきりしていない。

 初代勇者が行ったのは知ってるし、本で読んである程度の場所は分かっている。けど、それらしき場所が全くないのだ。精霊大陸があるのは、本によると今いた魔族大陸の西側らしいのだが、全く見当たるどころか影も形もないのが現状だ。多分特殊な結界か何かで覆われてるのだろうけど、未だそれを感知していないのでまだ遠くにあるのかもしれない。

 とにかく、適当に進むより他ないのだ。


 「とりあえず、西の方に進めばそのうち探知に引っ掛かるよね?」

 「グラァウ!」

 「うん。返事してくれる人がいなくて寂しかったんだ。ありがとね」



 僕はニーズと西に向けて移動を開始した。


 













 で、発見した。

  

 ええ。発見しましたよ?精霊大陸。

 でもさぁ…


 「さすがに海に沈んでるってのはないでしょ〜」

 「グウゥ…」



 探知に引っかかったのは水深10kmほどの場所。半径4kmほどの小さい円形の大陸で、それを半球状の空気の膜が覆っているようだ。

 探知に引っかかったのは、その一番上のあたり。僕が探知の範囲を半径10kmほどまで広げてなかったら発見できなかったよ?まったく…


 「で、どうやって行く〜?さすがにニーズは潜れないでしょ?」

 「ガルル…」


 

 ニーズはしょんぼりしたような申し訳なさそうな感じに首をうなだれた。

 今はその上のあたりで待機しているのだが、そこからニーズが潜るには深さ的に難しい。ちょっと前に一度、ニーズと素潜り勝負をしてみたのだが、ニーズの限界は6120m。結構最近の結果なので、今のニーズでは10kmくらいある場所までは無理なのだ。


 「さて、ということは自力で潜んないといけないのか…面倒くさ〜」

 


 ちなみにその勝負は僕の勝ちだ。というか圧勝だ。

 この体はもともと人間と同じようにはできていなくて、酸素がなくても普通に生活できるし水圧なんてほぼ感じることはない。と、いうわけで。僕はニーズが限界になってからも延々と潜り続けることができたのだ。



 「ニーズ。一回戻ってて〜」

 

 僕はニーズを帰し、空中に立つ。



 「あ、さすがにこのままじゃ潜れないや」


 今着てる物はいつものローブと黒いカーゴパンツに白いTシャツ。ここまま潜れば服に水がしみてえらいことになる。潜るのにも邪魔になるし。


 「仕方ないか〜…よいしょ」


 

 肉体を男の状態に戻した。

 なぜかと言われれば、女の状態で水着を着たくないからだ。なんか恥ずい。


 僕は水着を着て、そのまま海にダイブ。

 水魔法で自分の周りの水を操作して加速しながら海を潜っていく。


 



 そうして潜り続けて、約10分ほど。


 目の前に空気の膜で覆われた花畑が見えている。

 そう。花畑が見えるのだ。

 

 ここら一帯の水は魔物がいるせいなどもあってそんなに綺麗じゃない。なので光がそんなに届いていないはずなのだが、なぜか大陸いっぱいに花が咲き乱れている。

 そして、そこに光の塊が飛び回っているのが見える。

 おそらく精霊だろう。精霊は世界の魔力が結晶となり、それに魂が宿ったもの。結構上位な精霊でなければ決まった形は持たないし、強い自我もない。

 

 僕は空気の膜に触れて、内側に降り立った。


 なぜか内部には光が溢れ、幻想的な世界を形成している。


 (ニンゲンだ〜)


 どうやら1人?の精霊が僕に気がついたようだ。


 (ニンゲン?)

 (ナンネンぶりかな〜)

 (ヒトがいる。めずらしいね〜)


 それを見て僕の周りに光が集まってくる。

 意識はあるようなので、おそらく中位精霊だろう。


 精霊は、

 存在しているだけのものを下位精霊。

 それが意識を持ったものを中位精霊。

 さらに肉体を形成することができるものを上位精霊。

 自らのみで魔法を行使したり、普通の生物と同じようなことができるものを最高位精霊。

 と呼ぶ。


 ちなみに契約ができるのは中位以上だ。神野のところのエルフは中位と契約していたっけな?


 さらに言うと、精霊は気まぐれで滅多に外の世界に出て行ったりすることがない上に見えないと契約はできないので精霊魔法が使える人は少ない。ついでに契約してくれるかどうかも精霊の気分次第だ。

 ちなみに僕はロメがいるので使えるけどね。魔法より楽に使えるわけだはないが、威力は普通より高くなりやすいので人にはありがたいだろうね。


 それはさておき。


 (ジョウオウサマのところにつれていこうよ)

 (ジョウオウサマよろこぶかな〜?)

 (よろこぶよ〜)

 (つれていこうよ)

 (どうやってつれていく〜)

 (このヒトみえてるかな〜?)

 

 なんかジョウオウサマとやらのところにつれて行きたいらしい。

 きっと女王様だね。精霊の王みたいなものだろうか?



 『あ〜あ〜。聞こえてるかな?』

 

 とりあえず。念話でも話せるか試すとしよう。



 (わっ!ヒトがしゃべった〜!)

 (しゃべった〜)

 (きこえてた〜?)


 どうやら話せそうだ。

 

 さて、なんで念話じゃないといけないかと言うとなんだが。

 普通、精霊は魔力を通した言葉でしか話すとこができない。それは精霊は話しているのではなく、意思を魔力に乗せて話しているからだ。

 で、念話も同じようなものなので、できるかな〜?と試してみたのだ。


 ちなみになんで魔力じゃいけないのかと言うと、僕が魔力で話すと魔法が発動してこの辺一帯が更地になりかねないからだ。僕の魔力は神力を薄めた擬似魔力であるために、神法を使うのと同じ…神力に意思を乗せるのと同じなので魔法が発動しやすくなっている。

 ちょっとした会話で精霊を滅ぼしたらシャレにならん。

 

 『さっきからずっと聞こえてるよ〜』

 (あんないする?)

 『ジョウオウサマって誰なの?』

 (ジョウオウサマはジョウオウサマだよ)

 (サイコウイセイレイってやつらしいね〜)

 『ふ〜ん。つれてってよ』

 (わかった〜)

 (こっちだよ〜)

 (ついてきて)


 

 僕はふわふわと飛んで行く精霊たちについていく。


 ついて行きながら気づいたことがある。

 この大陸には精霊の生まれる魔力だまりが数多くあるはずなのだが、なぜかそんなに多く見ないのだ。ある場所はこの空気の膜の一番上のところに一箇所だけ。そこに大きい魔力だまりがあるのみで、他の場所には魔力だまりがない。

 大陸が海に沈んだせいで魔力だまりの場所が減ったのかと思ったのだが、周辺を探知してみても魔力だまりが発見できないのだ。

 どういうことだろうか?


 そんなことを考えるうちに階段の前に連れてこられた。

 場所は島のほぼ中心で、花で隠れるように人1人が通るのが限界くらいの大きさの階段があった。 


 周りの精霊たちはそこで立ち止まった。


 (ジョウオウサマはしたにいるよ〜)

 『あれ?君達はいかないの?』

 (ワタシたちははいっちゃいけないの)

 『ふ〜ん。案内してくれてありがとね〜』


 僕の言葉を聞くと、精霊たちは思い思いの方向へ散らばっていった。


 「さて、入るとしますかな〜」



 僕は狭い階段を1段1段降りていく。


 「うん。すごく短い階段だね」



 10段程度を降りたら、もう下の階に着いた。


 『おや。お客さんですか?』



 ついでに言えば、その階段を降りた先は10m四方くらいの部屋になっていて、こじんまりとした机や椅子などが置いてあり、その椅子の1つに150cmくらいの身長の細身で髪の長い女性が座っていた。


 その女性は座っていた椅子から立ち上がり、僕の方を向いた。


 「あ、このままで聞こえる?」

 『ええ。聞こえてますよ』

 「ああ。そうなの」

 『まぁお座りください。久しぶりのお客様ですからね』



 その女性は僕を部屋の真ん中にある丸いテーブルへ案内して僕を座らせた後、お茶を入れ始めた。


 「ねぇ。君がジョウオウサマ?」

 『ええ、そうですよ」

 「なんで精霊たちはここに来ないの?寂しくない?」

 『もちろん寂しいですよ。ですが、ここに来れば彼らは私の魔力に酔ってしまうので」

 「ああ。なるほどね〜」


 

 言われてみれば、この部屋には結構濃密な魔力が漂っている。下手したら魔力だまりといってもおかしくないくらいに。

 …もしかしてここが魔力だまりだったりして。


 「ねぇ。ここから精霊は生まれたりしないの?」

 『いいえ。ここでは生まれませんよ』

 「じゃあどこで生まれるの?」

 『それは私にもよくわかりませんね。気づけば増えていますので』



 女王さまはテーブルにお茶を運んできた。

 黄色というか茶色というか、とにかく透明でそんな感じの色の紅茶だ。


 「ねぇ。これなんのお茶なの?」

 『ここにある花のものですよ。ここにある花たちのほとんどがハーブですので』

 「ふ〜ん。ま、いただきます」



 僕はそのお茶を一口飲んで気がついた。

 …これ、麻薬に近い成分が含まれてる。しかも下手したら廃人とかになってもおかしくないような成分も。


 「ねぇ。なんのつもりかな?」

 「…それを飲んで無事な人は初めて見ましたよ』

 「で、なんのつもりか聞いてるんだけど?」

 


 明らかに僕をどうにかするつもりだったようにしか思えない。


 『…ここまで一体どうやってきたのですか?』

 「…ねぇ。聞いてるのは僕だよ?」



 面倒だ。脅そう。

 僕は体から神力に怒りのイメージを込めて垂れ流す。

 

 『ひっ…⁉︎』

 「聞こえたかな?僕の質問に答えてくれる?」

 『は、はい』

 「ほら。はやく〜」

 『こ、こんな場所まで来るようにな人間を警戒して…』

 「警戒してどうしようと?」

 『…せ、洗脳して。その人間の性格などを調べようと思いまして』

 「ふ〜ん。よろしい」



 僕は流していた神力を止める。


 『はぁはぁはぁ…い、一体あなたは何者?』

 「しがない神様だよ。せっかく遊びに来たのにこんな出迎えなんてひどいじゃないか〜」

 『…え?』

 「でさぁ、僕が来たのだけど」

 『ちょっと待ってください。神様などとおっしゃいましたか?』

 「うん?言ったけど?」

 『あ、あのぉ…シャルドネさまではありませんにょ…よね?』

 「ああ。違うね〜」


 あれ?知ってたりするの?

 つか噛んでるし。



 『ふぅ…そういえばお名前をお伺いしてませんでしたね。貴方さまのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?』

 「僕はエクレイムだよ。あ、見た目も戻したほうがよかった?」

 『え?それが本来のお姿ではないのですか?』

 「え?違うけど。なんでそう思ってたの?」

 『いえ。シャルドネさまはどこか違和感があったのですが、エクレイムさまにはそれがなかったので…』

 「ふ〜ん。どんな違和感があったの?」

 『なんと言いますか…体を別のもので形成しているような、そんな感じが』

 「ああ、なるほどね。君らは魔力でできた存在だから、似たような構成であるとわかるのかな?」

 『え。ええ。そのようなものだと思います』


 というか、随分と僕に対する態度が硬くなったね。



 「で、戻したほうがいい?」

 『い、いえいえ。とんでもございません。私などのような者にそのようなご立派なお姿をお見せになられるなんて』

 「なんでそんなにへりくだってるの?」

 『へ?い、いえ。そんなこと当たり前ではございませんか』

 「もしかして、シャルドネのやつになんかされてたの?それなら気にせずに普通にしてよ。なんかうざったい」

 『で、ですが…』

 「ああ、シャルドネは死んだよ。というか、僕が消した?」

 『え?ええ?えええええええ⁉︎』


 なんかものすごいびっくりしてる。

 美人だから余計に面白く見えるよ?残念美人?



 「うん。どうしたの?」

 『い、いえ。あ、あのシャルドネさまには…その、色々とされていましたので』

 「例えば〜?」

 『え、ええと…精霊たちを差し出させられたり…おかげで私を除いた最高位精霊はもういませんし』

 「ふ〜ん。ま、結構色々やられてたんだね〜」

 『はい…』


 あれはやっぱりろくでもないゴミだったようだ。



 「ところで君の名前は〜?」

 『い、いえ。ありません』

 「え?ないの?」

 『は、はい。我々最高位精霊は名前を受けることで契約をしますので…』

 「あ、そうなんだ。あ〜!だからロメの契約が既にされてたのか!納得、納得」

 『え。ええと…』

 「うん。なんでもないよ。気にしないで〜」

 『は、はぁ。ところで、本日来られたのはどのような御用件でしょう?』

 「ん?いや。特にないよ。ただ普通の精霊の肉体と魂とかの構成を見たかっただけ〜」

 

 ロメとの違いは確認できたので、結果的にやることはもうないね。



 『そ、そうですか』

 「ねぇ。なんでそんなに怯えてるの?」

 『ま、また私たちを連れに来たのかと…』

 「ああ、心配しなくていいよ。ほら『創世:精霊』僕は精霊は作ろうと思えばいくらでも作れるようになったし」


 僕の指先にオレンジ色をしたフレアスカートとタンクトップを着た小さい女の子が座ってる。髪色や目の色もオレンジの火属性の最高位精霊。ショートカットで、活発なイメージを抱かせるような姿をしている。


 

 『え?』

 「そうだな…名前は”フレア”でいいかな?」

 

 僕の指に座ってた精霊は手のひらの上で踊ってる。生まれて間もないからしゃべれないのかな?ま、そのうちどうにかなるでしょ。

 


 『ええと…その…えっと』

 「ま、こういうこと。ほら、そんなに怯えないでよ〜。僕悲しいな?」

 『いい、いいいえ。申し訳ございません』

 「いいよいいよ〜。で、そういえばなんだけど。なんで海に沈んじゃってるの?」


 聞くの忘れてた。そういえばなんで沈んでるのかな?



 『えっと。シャルドネさまが…私の箱庭にするとかなんとかで…ここを』

 「あ、うん。了解。戻してほしいなら戻すよ?」

 『え?よろしいのですか?』

 「うん。別に僕が困ることはないしね〜」

 『それならば是非お願いします。海に魔力が流れていってしまうので、魔力だまりが減って精霊が生まれる数も減ってしまっていましたし、外にも出れないので契約ができなくなっていましたし』

 「あ、そうなの?じゃあ今外にいる精霊は?」

 『それはおそらく運良く海上近くの場所で生まれることのできた精霊だと思います』


 ふむ。魔力だまりが見つからなかったのは、海に魔力が流れていってるせいだったようだ。

 


 「じゃ、今からあげていい?」

 『あ、少々お待ちください。(皆。島が動きます。何かに捕まりなさい)では、お願いします』

 「何したの〜?」

 『下位の精霊たちに指令を出しました。こうでもしなければ彼らは死んでしまうかもしれませんし』

 「ふ〜ん。じゃあ行くよ〜。『周囲海域…確認。上昇開始』さて、上がれ上がれ〜」


 周りの海にいる魔物たちを追い出し、島は上昇を始める…

 

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