113.押し付けました
かれこれ騒ぎまくって、1日休んでもらって次の日。
現在、午前9時半。
ここに元からあった会議室的な場所に神野たちと隊長的な人たち13人に集まってもらっている。理由はもちろんこれからのことだ。
「え〜っと。これで隊長さんは全員いる?」
「ああ。私と12人で全員だ」
「じゃあ、神野くんたちはいるから、もう始めてもいいかな?」
「おう。俺らは問題ないぞ。ノーブル隊長のほうも大丈夫だろ?」
「ああ。我々も始めてもらって構わない」
ちなみにここは机が木の字型に並んでいて、僕を上座に他の人たちが座る形になっている。
まぁ、当然だよね。ここは僕…もとい、ルディが占拠したわけだし。
「じゃあ、まずどこから話そうかな…ああ、あれがいいや。じゃ、話を始めるよ〜。まず、ここ魔族大陸のことから始めるね〜」
「おう、わかった。で、俺らが来るまでに新ちゃんは何をしてたんだ?」
「ちょっと調べてたんだよ。ここの魔族を拷問し…お話して情報を聞いたり、こっそり魔王城に忍び込んで内部を探ったりとかね〜。で、話を戻すけど。まず、この島はほぼ半径20kmくらいの円形をしてるんだ。そして、東西南北にそれぞれ1つずつ砦がある。ここは南の砦で、多分他も同じ作りをしてる。で、この砦を越えて城に近づくと魔物が30匹ぐらいいる。この魔物は胸のあたりに魔石みたいなのを持ってて、それを壊すと倒せるみたいだよ〜。1体だけ倒してみたけど、兵士十数人くらいでどうにかできると思う。さらに城に近くなると、そこまで強くない魔族がいるんだ。こいつらも同じくらいの兵士でどうにかできるかな。そこから城のかなり近い場所にかけてだんだんに魔族が強くなって、城壁のあたりには魔族の兵士みたいなのがいる。こいつらは20人くらいの兵士で倒せると思う。まぁ、城壁まではこんな感じだけど、どう?」
ま、全部僕らが楽しく作ったわけなんだけどね〜。
隊長さんたちは難しい顔をして、神野たちは微妙な表情を浮かべている。
「その魔族はどのくらいいるんだ?それによって我々が動かす兵数も考えたい」
「う〜ん…見た感じだと100人近くいるんじゃないのかな〜?わかんないけどね」
「そうか。そうすると、最低でも500人近い兵士が必要ということとなる。我々が700で、冒険者を含めると983人。余裕をもって考えたとしても、600。あとは内部だな。よし…私からは以上だ」
なんか1人で納得してる。そういえば、冒険者は呼んでなかったけどいいのかな?
「で、神野くんたちからは〜?」
「いや、特にはないぞ。進めてくれ」
「了解〜。じゃ、続けるね。城壁は結構厚い物みたいで、多分城門以外の場所を破るのは無理だと思う。まぁ、でもこれは威力が強い魔法を大量に当てればどうにかなるかな〜。で、内部なんだけど、さっき配った物の中に地図があるでしょ?大体がそんな感じだったよ。いくらか見逃してる場所とか魔族の情報と食い違ってる場所があるかもしれないけど、確かめた感じは大体あってる。で、その中の丸が付いてる場所に魔族が住んでて、それ以外は多分空き家。警戒のためとかで外にいる魔族の家だと思う。それでその丸が付いてる場所に住んでる魔族なんだけど、どうやら貴族とかみたいで、魔法とかに強く体力的にはそんなでもない奴が多いかな〜。そこのうちの1つの召使から聞き出したから、全部が全部そうかはわからないけどね。ということで、魔力を使い果たすまで魔法使わせれば倒せると思うよ〜?こんなところかな。何かある?」
相変わらず、みんな難しい顔をしてる。
「その貴族の魔族はどれほどの魔力を持ってる?」
「う〜ん…聞いた感じだと、数値で200?多分そんな感じだと思うよ」
「そうか。なら私からは以上だ」
「神野くんは〜?」
「いや、大丈夫だけど。新ちゃんはどうやってそんなに調べたんだ?」
「あ〜、それはね。僕の持ってるスキルに”隠密”っていうのがあってね。それと風魔法で僕が出してる音とか匂いを全部カットして忍び込んで、弱そうな奴をここまで連れてきて聞きだしたんだ〜」
普通に自分で作ったからとは言えない。
言ったら色々まずいしね〜。
「聞きだしたってどうやって聞いたの?」
「安井さん…聞きたいの?」
「え、えっと…遠慮しておくね」
「うん。その方が精神健康的にいいと思うよ〜」
「しんちゃん、いったい何したんだよ…」
「軽い拷問系?」
「ああ、もしかしてあの事件の感じの奴か?」
「神野くんが知ってるアレを向こうじゃできない感じに強化したやつかな〜?」
実際にやるならそうなるな。
四肢を切り落としたりしてもつけ直せるから、そういうやつも何度もできるしね。
「そりゃ聞かなくて正解だな…」
「で、他に何かある〜?」
「じゃあ、魔王城の地図はしっかりできてないんだ?これは結構空白あるよ?忍び込まなかったのか?」
「ああ、それはこれから話すね。最後に魔王城なんだけど…僕は入れない。いや、正しくは神野くんたち以外は入れないと思うんだ。一応、ゴミとかを捨てるために外に出てきた魔族から内部の構造は聞き出せたんだけど、結構空白が多くなってる。なんでも、魔王が魔族以外を拒む結構強力な結界を作ったらしくて、勇者である神野くんたち以外は入れないと思う。まぁ、その中で戦えるのは魔王を含めて5人だけみたいだし、召使たちはすっごい弱いから安心して。で、こんな感じだけど。どう?」
「ああ、そういうことか。わかった」
「聞きたいことは他にある〜?ないなら僕らは帰るんだけど?」
やることは終わったし、僕らは人の大陸の方に帰りたいんだけどな〜。
「我々は特にはないな。できれば兵力を分けることについて何か助言があればありがたいが」
「俺らはないな。つまり、俺らには魔王城内をどうにかしろってことみたいだし」
「ま、神野くんたちはそうだね。助言って言われても、そっちの隊の情報がないから僕はなんとも言えないし」
「ああ、そうであったのだな。失礼した。我々の隊は軍を10に分け、11,12を冒険者たちの隊で構成されている。1~3をシルフィード王国軍、4~8をルクシオ帝国軍、9,10をマドーラ連合国、スリング共和国の者たちで構成している。そして、それらを統率しているのが今ここにいる者たちだ」
「ふ〜ん。で、魔法を使う方が武器を扱う方が両方を使う方が得意とか、対人戦が得意だとか対魔物戦が得意とかは分かれてないの〜?」
「いや、特には分かれていないな」
おいおい。それはさすがにまずくないかな〜?
「それなら即刻分けなさいな〜。魔法系職業及び魔法を得意とする部隊、剣士系職業及び武器使用を得意とする部隊、どちらも使いこなすことができる部隊、あとはそれ以外の回復系とかの部隊。で、大体1隊あたりを5,60人くらいを基準にね」
「それはどうしてだ?」
「その方が兵を動かしやすいから。魔法部隊を剣士部隊とセットで動かすようにして、両方部隊を陽動と遊撃に回復系部隊を砦で怪我人の治療にまわす。それで少しずつこの砦から他の砦を占拠して、魔物を先に倒してから魔族を倒し始めるようにする。城門付近までを倒したら、全部隊を連れて一気に城壁内へ侵入。神野くんたちを魔王城まで送り、他のやつに邪魔をさせないようにすることを第一にする。まぁ、細かいことは状況やその時の現場の判断に任せるけど、順序的にはこんな感じに〜。とりあえず、できるだけ兵力を減らす行為は避けるべきだね。魔族は1人1人が強いから数で押しつぶす。油断さえしなければほとんど無傷で勝てるからさ〜。貴族の魔族は魔法の射程距離のギリギリまで離れて兵を分散して魔法を防ぐようにする。一ヶ所に集中してると、範囲系の魔法で全滅するからね〜。ま、こんな感じかな〜」
色々言ったけど、基本的に魔族は僕らで洗脳してるから簡単に倒せる戦略をとることが可能だ。
「そ、そうか。わかった。それらを元に戦略を立てることとするよ」
「うん。じゃ、神野くんたちは魔族たちを兵士に任せて、魔王を倒すことに専念してね〜。魔物と魔族を倒す時は協力しててもいいけど、中に入ったら魔王城に直行。他の魔族は全部無視ね。他の兵士がどうなっても君ら以外は魔王を倒せないんだからさ」
「おう。にしてもあんだけ色々言いながら、新ちゃん結局一番貢献してんじゃん。ツンデレか?」
「いや〜。神野くんたちには生き残ってもらいたいし、第一に神野くんたちがどうにかしないと帰れるものも帰れなくなるしね〜」
「まぁ、俺らがどうにかしないと魔族に俺らがやられるわけだしな」
「そ。じゃあ、あとは頑張ってね〜」
「「「「「は?」」」」
「え?」
なんか、みんなにものすごい顔を向けられてるんだけど?
僕何かしたかな〜?
「いや、え?じゃないでしょ?私たちと一緒に戦うんじゃないの?」
「え?なんで僕が戦うのさ?僕は勇者でもないから魔王城には入れないし、僕がやれる限りのことはもう終わってるし」
「いや、魔族を倒すとかさ」
「やだよ〜。つまら…ゴホン。僕には無理だしさ〜」
せっかく僕が神野たちのために作ったゲームを自分でやるとかありえないでしょ?
というか、自分で作ったから簡単にクリアできてつまらない。
「いや、今つまらないって言おうとしてたよな…」
「少なくとも僕は情報収集はやったし、できるだけのことはしたんだよ〜?もう疲れたし、いろいろ行かないといけないところもあって忙しいんだ。あとは頼んだよ」
「お、おう。いや、でも俺らだって戦うんだしさ、一緒に戦わないのか?」
神野は相変わらず諦めが悪い。というか、根に持つことが多い。
前回の話のことでも考えてるんだろうな〜。
「僕は神野くんたちが戦ってる間に向こうに帰るための研究を手伝いに行ったり、必要な魔道具の研究をしたりしないといけないの〜。だから僕らは帰るね〜。隊長さん、神野くんたちのことをくれぐれもよろしくお願いね〜」
「…そうか。ならば我々が彼らを守る。後のことは我々に任せてくれ」
「うん。じゃ、よろしくねってことで、かいさ〜ん」
僕は手を振って部屋を出る。
そういえば、ルディはどうしたんだろ?昨日、色々食いまくってたのは見たんだけど、その後は部屋に戻るって言ったきり見てないな。
「ま、行ってみればわかるかな」
そのまま、僕は砦の中の部屋に入る。
「ここなら大丈夫かな?『扉』」
僕は”メインルーム”へと帰る。結構久々に戻って行く気がする。
「おや?おかえりなさいませ、主。どうかされましたか?」
ロメが大量の本を持って移動している。
多分、書いてそのまま部屋に放置してたのを運んでいる途中なのだろう。
「うん。昨日、ルディが戻ってから来てないからどうしたのかな〜って」
「そうでしたか。でしたらキャルディ様は部屋におられますよ」
「わかった。ありがとね〜」
「いえ。主の質問に答えるのは当然ですから」
相変わらずの忠誠心というか、僕とロメの間に絶対的な上下関係的なものを感じる。ま、構わないけどさ。
僕はルディの部屋に行ってみる。
ここからルディの部屋まで直線なのですぐに着く。
僕は部屋の扉をコンコンとノックする。
『誰だ?』
「僕だよ〜」
『ああ、入っていいぞ』
「じゃ。おじゃましま〜す」
僕は扉を開けて部屋に入る。
部屋に入ると、ルディはベットに寝転がり天井を見つめていた。
「で、何してるの〜?ついに頭が…あ、元からだったね〜」
「俺がいなくてもいいか?」
「…ん?突然どうかしたの〜?」
ふざけてるのに変な返事が返ってきたよ。何かあったのかな?
「いやな。お前と魔族で色々やってて、なんというか…創作意欲?的なものが湧いてきてよ」
「ふ〜ん。で、どうしたの?」
「また、世界を1から作ってみようかと思うんだ。細かく設定して、それをしばらく眺めてようかと思ってんだよ。だから、俺がいなくてもいいか?ガルディがいなくなって、俺は一つも世界として成り立つものを作ってこなかったんだが、また作ってみようと思えてきた。今やらないときっかけを逃すような気がしてな」
珍しく、いつにもない真面目な目を向けてくる。
まぁ、そういうことならしばらくの間いないだけだしいいかな。
「うん。そういうことなら構わないよ。僕らはどうせこれから何億何兆と存在してるんだし、しばらくいないくらいはどうってことはないでしょ?」
「あ〜…そうだったな。じゃ、俺はしばらく出るわ。そのうちここに帰ってくる」
「うん。じゃあ、いってらっしゃ〜い」
僕はルディをベットから立たせて、背中を押して扉に向かっていく。
「いや、さすがに今すぐじゃねぇよ⁉︎幾らか準備してからな?」
「え?ちがうの?」
「いや、ちがうわ。ここにあるものをいつくか持って、それから行くからな?」
「あ、そうなの?じゃ、僕は戻るから行くときはロメに声かけて行ってね〜」
「おう。じゃ、行ってくる」
どうやら、ルディもなんか子供が新しいおもちゃをもらったように純粋な表情をしていたので、心配もないだろう。最近濁ってた目がましになってきてたので良かったよ。
ま、暇なときはルディの空間に遊びに行こう。
「さて、帰ろっと。『扉』」
僕はそのままルディの部屋を出てすぐに扉を開いて砦に帰る。
意見感想等あったらお願いします。




