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105.魔族大陸に向かいました

 「さぁ、しゅっぱーつ」


 僕のその声にニーズが飛び立つ。


 僕とルディは、久々に外で飛べて喜んでいるニーズの背中に乗っている。

 まぁ、何をしているのかというと魔族大陸に移動している。



 「これ、どんぐらいで着くんだ?」

 「多分4時間ぐらい?」


 あれからニーズもさらに成長して体長30mの巨大な姿になっており、鱗や爪もより禍々しく凶悪なものとなっていて、何も知らない人が僕らを見たら襲われそうなので光魔法で姿を見えなくして飛んでいる。



 「その間は何すんだ?」

 「さぁ〜?自由時間ってことで。やることは自分で見つけてね〜」


 まぁ、ものすごい年月を生きているルディだし、4時間なんてあっという間だろう。僕は、まだ人間的な感覚が普通に残ってるから暇なんだけどさ。



 「じゃ、俺は寝てるからついたら起こしてくれ」

 「仮にも時速150km近い速度で飛んでるものの上でよく寝ようと思うね…」

 「別に固定すりゃいいだろ?」

 「あ、そうだったね。僕らは元から普通じゃなかったや」

 「じゃ、おやすみ」


 そんなことを言って、ルディは寝てしまった。

 いくら固定してるにしても、幅1mくらいのニーズの背中で寝るのってどうかと思う。



 「さて、僕はどうしようか?」


 僕は、とりあえずルディの顔に油性ペンで落書きをしながら考える。



 「ひげ〜、眉毛〜、ぐるぐる〜、鼻〜…あ、書くとこ無くなっちゃった。ま、いっか。さてと…」


 書く場所がなくなったので、別のことをしよう。内容は、



 「神野たちの武器だよね〜。あの武器、持って帰れないじゃん」


 神野たちが持つ武器だ。あの武器、大きすぎて学校に持って帰れないし、まず第一に銃刀法とかで捕まる。と、言うことで武器を小さくするものとかを作りたい。

 神野たちを含め僕のクラスをそのうちもう一度こっちの世界に呼ぼうと思っているのだ。その時、神野たちの武器はあったほうがいいだろう。



 「どこから作ろうかな〜?空間ごと圧縮?僕の息吹みたいにそのものを変化?…う〜ん、何がいいかな?」


 やり方はいろいろあるのだが、今言ったもの以外だと”武器召喚系または異空間倉庫のスキルを付与した物を作る””武器を改造”など、とりあえず…どれも作るのに手間が多い。

 例えば空間ごと圧縮するなら、圧縮する場所の設定、圧縮する時に圧縮する物の限定化、圧縮を解いた時に周囲の物に対する影響の調整、圧縮を解いた時の出現位置の設定…の最低4つを細かに設定し、さらにそれを維持するための魔力回路を刻み込み、形状を決め、使用方法を決める…など、必要な物はいろいろあるのだ。

 まぁ、つまり…面倒なのだ。



 「とにかく1つ作れば、後はコピーして設定を少し変えるだけでいいからいいけど。やっぱり使いやすいほうがいいよね〜」


 大体どれを取っても工程はどれも同じくらいの手間がかかる。ならば、できるだけ使いやすいほうがいいと思うのだが…僕は息吹をネックレスにしていて、それで満足しているので他の奴がどうなのかわからないのだ。かといって、全部試すのなら全部作らなくちゃいけないし…



 「まぁ、でも便利さで言ったら異空間倉庫つけるのがいいよね。うん、もうそれで決定〜。よし、作ろ」


 他の物も収納できる異空間倉庫をつけるのが一番便利だと思うのでそれにすることにした。

 剣とかだけじゃなくて、いろんな物をしまえたほうがいいでしょ?



 「とりあえず、素材は何にしようかな?スキルの付与に耐えられるような物じゃないといけないんだけど」


 スキルは本来生物に対してつける物であり、まがりなりにも生物という器がなければ付与できない。なので、ある程度頑丈な物でないと付与ができないのだ。

 ちなみに、最低条件は魔晶石のBランク以上…大体、中位の竜種の魔石20個くらいが必要だ。



 「異空間倉庫は、持続型スキルだから結構必要なんだよね〜。どうしよ?」


 持続するために維持に結構なエネルギーが必要で、魔晶石じゃなく魔結晶ぐらいは必要になる。

 今、僕がアイテムルーム内にある魔結晶はDランク程度のが2つ、Cランクが1つしかない。後は屑の魔石が大量にあるだけ。多分これを集めればBランク程度の魔晶石にはなるだろうけど、魔結晶にするには足りない。大体は息吹を作るときに使用してしまって残っていないのだ。

 神野、石井、安井の3人分なので、Cランクが3つは欲しいのだが…



 「足りないよね〜。僕が作ってもいいんだけど、ちょっと違う物になっちゃうし」


 一応、僕が作るとこはできるのだが、僕が作った場合は魔石ではなく神力石という別の石になってしまう。これは、魂を作り出すエネルギーの最小の結晶で、世界の核とかにするためには結晶にすることが必要だ。 

 まぁ、そんなことは置いておいて。これを使うと、世界のバランスをちょっと揺るがしかねないのだ。主に魂の循環系に。

 死んだ魂がそこに集まってくるとか、一種のホラーだよ?


 

 「とりあえず、1個だけ作っとこ。Cランク1個はあるし」


 足りない魔石は魔族大陸で調達するとしよう。創世で作れないのでしょうがない。



 「さて。『扉』…これかな?えっと〜…ああ、あってるね」


 僕は”アイテムルーム”から魔結晶を取り出す。



 「まずは、結晶を変質させないと」


 魔結晶を一部変質させ、スキルを付与できる状態に変える。

 …これ、意外に面倒くさい。どういうことかというと、常に動いている魔結晶が内包している魔力を無理やり一定の状態に押さえつけ、固定しないといけないのだ。

 地味に時間が掛かる。



 「ふぅ…これで大丈夫かな?さて次にいこう。次は…スキルの設定ちょっといじんないと」


 ”異空間倉庫”はもともと人が使うスキルであり、付与する物ではないので少しスキルの設定を変えないといけないのだ。

 主にどういうことを変えるのかというと、収納の仕方と出し方である。

 このスキルは”手で触れた自らの所有物を自らの保有する異空間へ収納し、自由に出し入れすることができるスキル”で、使い方はガリュさんに説明した通り異空間を意識しながら手を前に出すのだが…



 「不便だよね〜。わざわざ手を伸ばさなくても意識するだけで出せた方がいいし、収納方法も手で触れなくても意識すれば仕舞える方がいいよね」


 収納はいちいち手で触らないと収納できないし、出すのも毎回異空間を意識しながら手を伸ばさないといけないのは不便だ。

 それなら、意識すれば自分の所有物を出し入れできる方がよっぽど便利だろう。それなら、出す時にいろんな応用ができるし。

 


 「じゃあ。収納方法は自分の所有物を意識するで、出し方はそのしまってある物を意識しながらだしたい場所を目視するとかでいいかな」


 一応、収納可能な範囲は1m以内に設定し、出すのは半径2m以内にした。 

 これならしまってある岩なんかを敵に落とすとかいう使い方もできるし、普通に出すのも手を見ながら出せば武器とかをいきなり使うこともできる。



 「さ、スキルを付与しよ。あ〜…書き込むの面倒〜」


 僕はぶつくさ文句を言いながら、変質させた魔結晶にスキルを書き込む。










 「はぁ〜…疲れた。結構集中力がいるのがめんどい。魂に書き込むのはあんなに楽なのになぁ〜」


 かれこれ40分くらいして、やっとスキルの情報を全て書き込んだ。

 魂ならスキルの情報を一気に書き込めるのだが、別の物に書き込む時は一気にやると壊れてしまうのでゆっくりやるから時間がかかる。



 「さて、とりあえず。基本的なのはできた。後は、形を変えるのと使用できるかの確認と細かな設定の書き換えと…ああ、もうやることが多い」


 とにかく、簡単なのから済まそう。

 確認は使用者の魔力…つまり魂の情報を一部認識させることで、スキルを使えるようにするのが必要。とりあえずスキルを使用できる人間は2人分に設定してあるので、僕の神力をちょっと読み込ませて起動確認をする。



 「…よし、使えるかな?」


 僕は適当に石を作って、それを収納するのを意識する。

 すると、その石はパッと消えた。



 「お、仕舞えた。あと、出すのは…」


 ちょっと上を見ながら、しまった石を意識する。 

 すると、ちゃんと石が見た場所から出現した。

 


 「うん。大丈夫そうだね」


 確認は簡単に済んだ。

 次は形を変えよう。さすがに直径15cmくらいある結晶を持ち歩くのは大変だろうし、何より目立つ。



 「とりあえず、前にあげた”警護のネックレス”に取り付ける形でいいかな」


 あれに剣とか武器をデザインしたチャームを付けてあるので、それに合わせたものがいいだろう。

 まぁ、無難に羽とかにしておこう。



 「じゃ、『改変』っと。こんな感じかな」


 綺麗な青紫色の羽をかたどった物に形を変える。

 結構いい感じだと思う。



 「はぁ…で、一番面倒くさい書き換えをやるとしますか」


 設定を一部書き換えたのでそこの修正。あと、生物以外に書き込んだのでその辺の修正が残ってる。

 



 「さてと…ここが弄ったところでそこが影響が変わったから…」


 僕は異常が出ないように設定を細かく直していく…


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「…よし、こんなもんかな」


 で、2時間半かかってやっと修正が終わった。次からはこの設定したのをコピーするだけなので、書き込む時間以外にあんまり時間はかからないだろう。



 「で、魔族大陸って…もしかしてあれかな?」


 直している最中からずっと気になっていたのだが、ちょっと遠くに日本でいう関東地方くらいの大きさの島が見えているのだ。結構小さい。



 「とりあえず、ルディ起こそ。ルディ〜起きて〜」


 僕はルディを揺さぶる。

 …が、ルディは起きない。


 よし、起きなかったんだからしょうがない。



 「ていやぁっ!」

 「ごはっ⁉︎」


 脇腹を蹴っ飛ばす。大体コンクリート塀に大きい穴が開くくらいの力で。



 「あ、ルディ起きた?」

 「…い、いきなり何しやがる」

 「起きないんだもん。しょうがないよ」

 「どうせ1回しか起こさなかったんだろ?」

 「そうだけど?」

 「だよな!1回目でこれはねぇっての!」


 なんか、こんなやり取りを前にもやった気がするね!



 「で、そんなことは置いておいてさ」

 「まさかの俺の体はどうでもいいと⁉︎」

 「だって、それくらいじゃ死なないでしょ?」

 「いや、滅多なことでもしねぇと死なねぇけど。そうじゃねぇだろ⁉︎」

 「でさぁ。あれって魔族大陸かなぁ?」

 

 とりあえず、ルディの体の心配はなかったことにして。



 「放置かよ…で、どれだ?あそこに見えてるのか?」

 「そ。あれって魔族大陸?小さくない?」

 「ああ、確かそうだった気がするぞ」

 「魔族大陸って言うくらいだし、もっとなんかあると思ったのに〜」

 「いや、帝国とか王国だって大体あれくらいの大きさだろ。一体何を期待してたんだよ?」

 「もっとでっかい塔とか街とか。魔族の国みたいなのがあるかなぁって思ってたんだけど」

 「まぁ、確かにそこまで国にはは見えねぇな」


 見た所、大きい城っぽいのを中心に4つの砦が建ってるのが見えていて、一応魔王城みたいな雰囲気は放ってるんだけど…



 「なんか…殺風景だね」

 「だな」


 そこ以外に目立った建物はなく、魔物がうじゃうじゃいるのと幾つかの建物があるだけ。

 どちらかといえば、国というより1つの城だ。シルフィードの王城をそのまんま拡大した感じ?周りを囲んでる海が城の周りの堀で砦が城門、中心の城が王様の住んでる城って感じで、その周りに兵士とかメイドが住む場所のように少し大きい館が幾らか建ってる。


 

 「ま、とりあえず。魔物を狩るとしようかな〜」

 「そうだな。あの量を人が倒すのは骨が折れそうだ。つーか、魔族もいるんだったら間違いなく全滅だな」


 結構近くまで来てみれば、魔物の数がかなりいるのが見える。

 しかもその魔物達は館や城の周りを普通に歩いていることから、



 「もしかして、これ全部契約済ってことかな〜?」

 「まぁそうだろうよ。てか、どっかに魔族はいねぇの?」

 「そういえばいないね〜。魔族って、青い肌をしてるだけの人間に近い形をしてる種族だけど、一部は羽とか尻尾がある奴もいるはずだし、空飛んでる奴が一匹くらいいてもいいと思うんだけど…」

 「だよな。みんな引きこもってんのか?」

 「もしかしてもう攻めに行っちゃったとか?」

 「そりゃないな。どう見たって誰かしらはいるだろ?その辺煙出てるし」

 

 僕はルディが指をさす方向を見てみると、確かに城に近くから生活感溢れる煙が立っている。多分、料理とかに使う火だろう。



 「あ、向こうにスパイがいるんだよ〜!時折魔族と戦う羽目になったし、向こうに何人かいてもおかしくないはず」

 「ああ、だからまだこっちに到着しないことがわかってるから、中でぬくぬくとしてるってか?」

 「きっとそうでしょ?というか、それ以外にちゃんとした理由思い付く?」

 「…ないな。多分それが正解だろうよ」

 「わ〜い。あったり〜。じゃ、魔物を殲滅しようか〜。1ヶ月でどのくらいの魔物が復活すると思う?」

 「さぁ?大体魔族がどうやって魔物を従えてるのかわかってんのか?」

 「あ、それは魔物って魔石を核にして生きてるでしょ?そこに直接魔力で隷属系の闇魔法を書き込むっぽいね」


 マドーラの時の魔石にうっすら魔力痕っていう魔法の使用した形跡が残っていた。それを解析したら、隷属系の闇魔法だった。ついでにその辺の魔物で実験もしたので間違いないと思う。



 「へぇ…で、それを考えると1ヶ月でどのくらいの魔物を従えられそうなんだ?」

 「う〜ん…多分3000がいいとこかな?魔族の量にもよるけど、この島内の人型生物の数を見てもそれが限界だと思うよ〜」

 「じゃ、全滅させて良さそうだな」

 「そう?じゃ、全滅ってことで〜。お、到着。ニーズ、着陸して〜」

 「グワァウウウァアアアア」


 僕の声を聞いたニーズが4つある砦のうちの一番近い砦の上に着陸した。

 


 「…なんで砦の上に着陸したんだ?」

 「さぁ〜?じゃ、ルディ。この砦占拠しておいて〜。僕は殲滅してくるから」

 「はぁ?俺もそっちの方が楽でいいんだが」

 「じゃ、頼むね〜」

 「いやいや、俺の文句は無視かよ。まぁいいけどよ。じゃあ、ここを占拠しときゃいんだな?」

 「うん。じゃ、よろしくね。ああ!できるだけ殺さないで、捕まえておいてね〜」

 「おう」


 ルディはそう言うと、砦の海に面した方に飛び降りていった。

 じゃあ、僕も行くとしようかな。



 「ニーズ。お疲れ様『帰還』」


 僕はニーズを帰して、ルディが飛び降りた方と反対の島の中心に向かって飛び降りる。

 重力に従って落ちる風が気持ちいい。大体、砦が15mくらいだったからかなりのスピードだ。


 そして、そのままの勢いで地面に着陸する。ちゃんと衝撃は魔法でかき消したので地面に埋まるなんてことは起きないよ?



 「じゃ、殲滅しましょうか」


 僕は息吹を元の大きさに戻した…


意見、感想等ありましたらお願いします。

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