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104.パーティに行きました

 「本当にありがとうございました!この恩は一生忘れません!」


 うるさいドワーフ…いや、ミレディだったね。最初のは偽名だったらしいし。ミレディは僕らに頭を下げた後、手を振りながら大きなバッグを背負って道を歩いていく。この後は故郷の実家に戻って、鍛治の手伝いをするそうだ。



 「…ったく。結局、エクだけでよかったんじゃねぇかよ」

 「いいじゃん。いい暇つぶしになったでしょ〜?」


 ミレディを連れて違法商人を探した僕らは、4日ほど掛けて商人たちを見つけ、軽〜く拷問して証拠となる資料とか積荷を出させた後、詰所に連れて行った。

 もちろん盗賊との商売は違法なので、その商人は商売するための営業権を永久に失い、その身を奴隷に落とされた。


 ついでにこの世界の犯罪に対する罰の基準を言うと、スリなどの軽い犯罪は罰金。殺人や誘拐などの重罪は1,2回程度のうちは禁固刑または処刑で…まぁ、その相手にもよるけど。貴族なんかは1回で処刑。で、犯罪に手を貸したりする、または繰り返し重罪を犯すと奴隷に落とされる。

 ただし、盗賊は捕まると奴隷、それ以外の場合はその場で殺される。

 なんとも分かりづらいものなのだ。まぁ、これはあくまで基本であり、言い渡される刑は判決を下す人によって違うんだけどね。




 「で、今日だったよな?魔族大陸のやつ」

 「ああ〜。うん、そうだね〜」

 「行かねぇのか?」

 「いや、行くよ〜。でも、始まるのはもうちょっとしてからだからね」

 「そうか。なら今から移動すればいいのか?」

 「そうだね〜。じゃ、行こっか?」

 「おう」


 僕らも港に向かって歩いていく。




 港が近くなるにつれ、人の数もどんどん増えてきた。

 道が人で溢れかえってる。


 「もう目障りだから、7割くらい蒸発させていい?」

 「いや、なんだよその突然の怖い発言は」

 「だって、歩きにくく無い?」

 「まさかのそんな理由で蒸発させるつもりか!いや、もうちょっとで着くんだから我慢しろよ⁉︎」

 「ええ〜。ルディの意地悪〜」

 「どう考えても俺は悪くねぇよな?」

 「ほら、置いてくよ?」

 「いや、ちょっと待て!」


 

 面倒なので、ルディを置いてさっさと道を進む。

 ルディは比較的がっちりとした体つきだから、道を通りづらいのだ。



 ルディを放置して道を進んで行くと、港の近くにある広場に人だかりができている。

 よく見ると、どうやら列のように見える。しかも、並んでいる人のほとんどはがっちりとしたガタイのいい冒険者風の人だ。



 『依頼板の提出をお願いします』

 『これでいいか?』

 『はい、通ってください。では次の方』



 なるほど、どうやらギルドで参加登録をした人だけが入れるようだ。


 「ああ、やっといた。置いてくなよ」

 「あ。ルディだ〜」

 「そうじゃねぇよ⁉︎で、どうなんだ?」

 「入れなさそう。ということで」


 僕は、気配を薄くして姿を消し、上空に昇る。

 そういえば今更なんだけどこれ、どうやって昇っているのかというと、魔力を使い空間魔法で足場となる場所を固定しているのだ。んで、その固定した空間をそのまま上に持ち上げて動いてる。でも、意識しないで放置すると、緩んで落ちるのが難点。おかげで、ソファーとかを置いとけない。ま、ルディは神力で普通に世界の法則無視して浮いてるけどね。



 「ああ、そういうことな」


 ルディも空に昇る。



 「ふ〜ん。結構いるね〜?」


 僕はついでにポップコーンとコーラを用意する。

 やっぱり何かを観戦するときはこれだと思うんだよね。



 「そうだな。で、またそれか?たまには他のやつにしたらどうだ」

 「いやぁ、他のやつの作り方をよく知ら無いから、変な味になるかもよ?」

 「なんだそりゃ?」

 「えっとね。最近発見したんだけどさ。こうやって作るのって物質とかはいいんだけど、食べ物は味をしっかりとイメージして作らないと、微妙な味になるんだよね。多分、僕の思った味になるからだと思うんだけどさ」


 この前、飴を作ろうとしたんだけど。飴=甘い、くらいにしかイメージせずに作ったせいなのか、砂糖みたいな味の飴になったのだ。甘いのはいいんだけど、少なくても飴の味ではなかったね。

 


 「じゃあ、なんでポップコーンとコーラは大丈夫なんだ?これも食いもんだろ」

 「一時期、神野と学校にばれないように近所の祭りの手伝いでバイトしてたことがあってね。そのとき、ポップコーンは嫌という程食べたし、そこのおじさんが毎回「疲れただろ?これやるよ」とか言って、コーラばっかりくれたからかな〜?」


 まぁ、なんの祭りかといえば石井を告白させたやつだが。これ、実は神様を祀るような祭りではなく、自治会の祭りなのだ。それがいつのまにか拡大して、地元ではちょっと有名なものになっている。ちなみに、祭りは3日ほど続く。



 「つまりは慣れか」

 「そうだね〜。でも結構楽しかったよ」

 「つか、それなら物体の情報収集でもしろよ。構造さえ分かってりゃできるだろうが」

 「あ〜。確かにそうだね〜。すっかり忘れてたよ。今度からそうする」

 「そうか。で、これはいつ始まるんだ?結構集まってきてるし、正午まであと10分程度だぞ」

 「じゃあ、とりあえず正午までは待とうよ…」

 「あ〜…まぁそうだな」


 そんなことを言って、僕らは下を見る。

 下は、軽い立食パーティーみたいになってる。結構な料理があるけど、どこで準備したんだろ?

 あと見た感じだと集まっている人はほぼ冒険者で、あまり騎士の姿は見えない。多分、冒険者に作戦内容を伝える騎士だけで、一般兵は当日までこっちには来ないのだろう。


 …ということは、今いるのはお偉いさんなのか!

 いや、確かにそう意識して見ると、剣とか普通の兵とは違っていいやつ持ってるし、格好もそれなりだね。多分、真ん中にいるのが一番偉い人かな?なんか後ろに部下っぽいのがいるし。



 「あ、神野発見〜」

 「まぁ、顔合わせみたいなもんだし、いなきゃおかしいだろうよ」

 「そうだね〜」

 「で、どうするんだ?」

 「ん?どうするって何?」 

 「いや、会いに行ったりはしねぇのか?」

 「え?なんで〜?」

 「いや、お前。そりゃあ普通は行くんじゃねぇの?」

 「え?行くわけないじゃん。僕は戦力の調査に来てるだけだし」

 「あ〜…そういやそうだったな。で、確認はできたか?」

 「う〜ん。まぁ、弱いね」

 

 下を見るついでに、適当に20人くらい強そうなのを”解析”にかけてみたのだが、いまいちだった。5人10人でやっと魔人1匹を抑えられるくらいだね。




 「相変わらず評価がひでぇな。で、どうするんだ?」

 「宿っていつまで取ってある〜?」

 「一応、いつお前が起きるかわからなかったから、2日後までは取ってあるぞ」

 「ふ〜ん。じゃ、2日後に出発ね〜」

 「いや、どこにだよ」

 「魔族大陸。先回りして、主要都市を落とす」

 「落とすってお前…」


 まぁ、魔族大陸がどんな感じなのかは知らないんだけどね。

 


 「とりあえず、強そうな敵を弱らせて、街とかがあったら適当に壊す」

 「そ、そうか。やっぱやり方がえげつねぇな」

 「そう?」

 「そうだろ。お、始まったな」


 下の方から風魔法で拡声した声が聞こえ始めた。どうやら始まったらしい。

 


 「で、この後はどうすんだ?」

 「う〜ん、こっそり混じる?食べ物とかあるみたいだし」

 「いや、さっきは人ごみが嫌だとか言ってたやつのセリフじゃねぇよな?」

 「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいの。とりあえず、楽しければ」

 「お前な…」

 「いやぁ、僕は楽しみのためなら世界だって壊すよ?」


 楽しくなきゃ、存在する意味がないじゃん。

 僕はそのためなら結構何でもする人種だよ?

 


 「いや、できる限りやめてくれ。特に、お前がもともといた世界は」

 「あ、そう?じゃあ、別の世界と繋げるとかは?」

 「召喚ならいいが、そっちの世界をどうにかすんのはやめろ。俺らが最初に作った世界だ」

 「思い入れが深いみたいな?」

 「そうだ」

 「ふ〜ん。じゃあ、この世界に召喚程度にしておくよ」

 「そうしろ…って、混じるとか言ってた話はどこいったんだよ⁉︎」

 「いや、話逸らしたのルディじゃん」

 「あ、いや、そうだけどよ」

 「じゃ、僕は下に降りるね〜」


 僕は下に降りる。



 「ああ!ちょ、待てっつの!あ、見えなくなったし…」


 後ろの方から、ルディの声が聞こえる。

 まぁ、放置しますけどね。




 『…ことだ。本日は集まってもらってすまない。共に魔族に立ち向かう者同士、親交を深めてくれ』


 さっきのお偉いさんぽい騎士の挨拶が終わり、準備されたステージに…



 『ええ、次は勇者である、タクミ様にご挨拶をお願いします』

 「えっと、初めまして。ご紹介に預かりました神野 拓巳です。今回は集まってもらって本当にありがとうございます。俺はこの世界に…


 神野が出てきた。

 軽い正装を着て、ピシッとした格好で出てきているのだが…いかんせん。似合わない。

 僕のよく見る神野は学校以外は普通のシャツにジーパンが多く、なんというか違和感満載だ。この世界に来てから戦うための鎧とかも着ていたが、あれはあんまり違和感がなかった。しかし、こっちの似合わなさが半端ない。 

 なんというか、馬子にも衣装の失敗例みたいだ。


 

 「さてと、話は無視して適当になんか食べよ。かれこれ寝っぱなしだったせいで、ご飯最後に食べたの3週間前ぐらいだし」


 神野の話を無視して、僕はテーブルの上に並ぶ料理に手を伸ばす。

 鶏肉っぽい肉の唐揚げやエビっぽいやつの天ぷら、なんかのチャーシューにポテトみたいな野菜のサラダ…など、いろいろな食べ物が並ぶ。味もいいし、食感なども悪くない。しかし問題は…



 「なんでこの国の食べ物って、色が違うんだろ?」


 色に文句があることだ。シルフィードではそうでもなかったし、スリングもマドーラでもそうだ。だけど、このルクシオ帝国のみ色に違和感がある。

 鶏肉は鶏肉でも、少し黒っぽい肉ってなんか嫌だと思うし、薄緑を帯びたエビとかって毒とかありそうな気がする。他にも、野菜系は色鮮やかな緑や赤、ピンクに水色。なんというか、



 「毒々しい気がするのは僕だけかな?まぁ、僕の体自体毒は聞かないんだけどさぁ。でもなんか気分って物があると思うんだよね」


 みんな美味しそうに食べているのだが、なんというか…食欲をそそらない。むしろ落ちる。

 周りを見渡せば、周りの冒険者と話していたり酒を飲んでいたり。みんな食べ物の色を気にしていない。なんでだろうか?

 というか、そういえばなんで誰も僕に話しかけてこないんだろ?



 「あ、いた。エク、いきなり降りてくなよ」

 「お〜、やっと見つけた?遅かったね〜」

 「遅かったね〜じゃねぇよ!いきなり降りやがって。この人ごみで探す俺の身にもなれ。しかも、気配まで綺麗に消しやがって!イジメか⁉︎また俺の扱いがひどくなってきた気がするぞ⁉︎」

 「あ〜、気配消しっぱなしだったっけ。そのせいだったのか〜」


 どうやら、うっかり気配が消しっぱなしだったようだ。

 …あ、もしかして周りから見ると、ルディって可哀想な人になってるんじゃない?そういえば、さっきからルディに冷たい目線が向かってる気がするし。



 「ねぇ、ルディ〜」

 「なんだ?」

 「僕は周りから見えてる?」

 「いや、多分見えてねぇと思うぞ。ま、よほど感がいいやつなら気配くらいは少しは感じるかもしんねぇがな」

 「じゃあ、ルディは見えてる?」

 「そりゃ、見えて……謀ったな⁉︎」

 「いや、勝手にルディがやってるだけでしょ〜?」

 「ちょ…いや、確かにそうだけどよ。教えてくれてもいいんじゃねぇの?」

 「いや、僕も今気づいたんだもん」

 「やっぱイジメか!」


 そう言いながら、ルディも気配を消して見えなくなる。



 「さて、この後はどうする〜?」

 「どうするってなんだよ。どうせ2日後まではこの街にいるつもりなんだろ?」

 「うん、それはそうなんだけど。それまでの間、何かしたいことある?ないなら、今日はここで時間潰すんだけど」

 「あ〜。なら、ちょっとその辺の店を回ってくるわ」

 「じゃ、2日後までには宿にいてね〜。魔族大陸に行くから」

 「わかった。2日後までには戻る」


 そう言ってルディは再び空中に戻り、どこかへ行ってしまった。



 「さて、じゃあ僕はここで時間を潰すとしようかな〜」


 僕は、姿を見えるようにしてパーティを楽しむことにした。


意見、感想等あったらお願いします。

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