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100.久しぶりでした

 さて、ルディと夕食を食べて、僕は宿に戻り、ルディはまだ足りないとか言って、別の店に行った。


 で、今。



 「ふぁぁ…眠」


 なぜか、ものすごく眠い。

 本来、僕の体は寝る必要がないから、眠気を感じないはずだし、それ以前に寝方すら忘れていた状況なのにもかかわらず、なぜだが言いようのない異常な眠気に襲われている。



 「う〜ん、これは僕に寝ろって言いたいのかな?」

 

 別に寝てて困ることはないし、寝てしまおうと思う。 


 僕は部屋のベットに横になり、目を閉じる。

 しばらくして、僕は久しぶりに眠りに落ちた…





 * * *


 僕は、ただっ広くて白い空間に立っている。目線が低い…僕の姿は、元の女の子に戻っているみたいだ。


 「…ふむ。夢だね」



 目の前には、数百、数千、数万、数億…いやもっとかな?かなりの数の椅子が並んだテーブルがある。

 そして、そこには誰も座っていない。



 「やぁ、やっと来たね。当代の僕」


 突然、僕の真後ろから声が聞こえてきた。

 僕は驚いて後ろを向くと、男である時の僕と全く同じ顔をした人が立っている。ただし、髪色は紫だった。



 「えっと…どういうこと?」

 「ああ、少し待ってくれるかい?皆、早く起きてくれ。やっと成功だ」



 彼はそう言うと、今まで誰一人座っていなかった椅子全てに、僕と全く同じ顔をした人が現れた。



 「遅かったじゃないか。なぁ、紫」


 そして、その中のうちの金髪のエルフのような種族の奴が声をかけた。どうやら、この人は紫と言うらしい。髪色と同じだね。



 「悪いね。結構これにも手間がかかるんだ。それに、代償もね?」

 「そうだったな。じゃあ、早くしたほうがいいんじゃないか?」

 「ああ、そうだった。じゃあ、話そうか。君と、僕たちのことを」


 そういって、紫は僕のほうに向き直る。

 


 「ええと。夢?なんだよね。うん」

 「いや、残念ながら夢じゃないんだ。ここは、君の魂と同じ魂を生きてきた者たちの記憶が生きている場所だよ。いわば精神世界みたいなものさ」


 う〜ん…あ、そういえば。

 ふと思い出し、僕は職業の詳細を再び開く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:嘘つきの王

説明:自らを欺き、仲間を欺き、友を家族を欺く呪われた魂の継承

者。全ステータス値の上昇に異常補正。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そういえば、継承者って書いてあった。これに関係でもするのかな?


 「継承者か何かに関係するの?」

 「えっと、いまいち意味がわからないけど。多分それであってると思うよ。まぁ、とにかく話を聞いてくれるかい?時間がない」

 「ほ〜い」

 「まず、僕らは呪われている。不幸となる運命を宿命づけられた魂だ」

 「えっと…わけがわかんないんだけど?」

 「それもそうだろうけど、とにかく話を聞いてくれ。僕らは他の魂と違って魂を受け継いでいくんだ。そして、その魂は受けた呪いを次の者に受け渡す。少しだけ、呪いを薄めてね」

 


 理解が追いつかないんだけど…


 「どういうこと?」

 「つまり、僕らの運命は不幸になるように作られているのさ。僕は、神に嫌われ、家族を奪われ、彼女を奪われた。君も身に覚えがあるだろう?僕らの魂は全てに嫌われる」

 「ふ〜ん」

 「だから、僕は神を恨み、神殺しを行った。世界を管理する神をね。ま、殺せなかったんだけどさ。ああ、今はそんなことはどうでもよかったんだった。ねぇ、ガルディという名前に覚えはあるかい?」

 「え?ああ、あるよ〜」

 「え⁉︎あるの⁉︎…じゃなくて、そいつに気をつけてくれ。そいつが、僕らに呪いをかけた張本人だ。とは言っても僕がこれを知ったのは結構最近なんだけどね…大体1千万年前くらいかな?」

 「それって最近?」

 「最近だろう?僕はここではかなりの年長者だよ?今は軽く億とか兆を超えたくらいの年齢だし」

 「そうなの?」

 「ああ〜…始めから話そう。説明の仕方が悪かったね」


 そう言って、紫は話を始めた…




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 紫の話はまとめてみるとこうだ。



 ガルディが僕らの魂を作り、呪いをかけた。ありとあらゆるものから嫌われ、拒絶されるような呪いを。

 そして、その魂を受け継ぎながら全ての世界を回るようにして、僕らの魂を世界に流した。その一番最後が僕らしい。

 記憶などはこの精神世界内に封印される。

 しかし、技術や才能などはなんというか、体が覚えているらしくて受け継がれる。

 本来、当代である僕以外の意識もここに封印されているだけであり、何もできない。

 紫は246代目の魂を受け継いだ人で、生きている経験的には一番長くてここのまとめ役みたいなものらしい。

 ここのところ4800代前くらいからその時の代の意識に干渉して、このことを伝えているらしい。




 「…って、あれ?どうして、今僕に干渉できてるの?」

 

 封印されて何もできないはずじゃなかったっけ?


 

 「ああ、それはね。魔法や科学だとかを全て使って作った”霊法”っていうので干渉してるんだ。本来なら、寝ている君をこっちに呼ぶだけのもので済むのに、なかなか君が寝てくれないから新しく、対象を寝かすのを作らなきゃいけなくって大変だったよ。おかげで、普通は17歳くらいで干渉するのに、今頃になってやっとだよ」

 「ああ、うん。ごめんね〜」

 「いや、僕らが勝手にやってることだし」

 「で、最終的に言いたいことって何?」

 「ああ、そうだった。君は僕ら全ての技術と才能を継ぐことができる。それで…ガルディを殺してくれないか?僕らをこんな目に遭わせた恨みを晴らしたいんだ」


 ああ、つまり仇討ちか。



 「ははは〜残念だったね。そのガルディ、もう死んでるよ」

 「へ?」

 「だから、もう生きるのに疲れちゃって、ずいぶん前に死んだよ」

 「ふざけるな…じゃあ、この恨みはどうしろっつんだよ…」


 突然、紫の声が黒く冷たいものに変わる。



 「まぁ、落ち着きなよ〜」

 「君に…この恨みがわかるかい?この憎しみが、苦しみが、怒りがわかるってのかい?…冗談じゃない」

 「ふふふ〜…わからないし、わかりたくないね。でも、もう相手は死んでるんだし、これからのことでも考えたら?どうせ、これからも生き続けてくだろうし」


 紫が、黒く歪んだ怒りをあらわにした顔をこちらに向けてくる。

 いや〜…じつに面白いよね。人が苦しんでるのって。



 「…まぁ、いいさ。どうせ、僕らは呪われた運命を生きるものなんだ。取り乱して悪かったね」

 「あれ?意外に早い立ち直りだね」

 「当然だろう?そいつと同じで、僕も存在するのに疲れてたんだ。もう、生きる意味すら無くなっちゃったし」

 「ふ〜ん。あ…じゃあ、もう一度、人生をやり直してみる?」

 「…それはどういうこと?」


 紫は少し期待した顔をしている。

 どうせなら、憎しみとかで歪んだ表情の方が見てて楽しいけど、どうにも…自分と同じ顔だとね?



 「僕は、一応神様にたいなものになったんだ。君を意識だけ取り出して、もう一度別の世界で転生させるってのはどう?」

 「残念ながら、それは無理だよ。この封印が解けない限りはね」

 「その封印を解けばいいじゃない」

 「僕らがどれだけそれをやったと思う?」

 「それは中からでしょ?僕が外から封印を解く」

 「なるほど…一度くらいやってみる価値はあるかもね」

 「あとさ、もう一回僕をここに呼べる?できれば、封印を解く前に」

 「できるけど…どうして?」

 「霊法について知りたいのと、封印を解く前に確認がしたい」

 「う〜ん…次にできるのは、大体172年後かな。その頃で構わない?」

 「あ、うん。ところで、霊法のエネルギーって何?」

 「僕らと同じように呪いをかけられてきた魂が、神魂になって死んだあとにここに入ってきたんだ。ま、すでに意識は残ってなかったけどね。で、その魂を使ってる。元の大きさまで回復しないと使えなくて、回復するのに大体50年くらいだったんだけど、君は眠らせるのがあったからね」

 「了解。つまり、魂力に近いものを使ってるってことでいいのかな?」

 「そうだね。ああ、もう時間だ。そろそろ君が目覚める」

 「わかった。じゃあ、外から頑張ってみるよ」

 「ああ、期待してる。次に会える時を待ってるよ」



 そう言った紫の声が聞こえたあと、僕はベットの上で目が覚めた。
















 起き上がると、灰色の髪の毛が目にかかる。



 「あ、起きたか。随分よく寝てたな?2週間も寝っぱなしなんてよ。眠り姫にでもなりたいのか?お前は」


 目の前にルディの顔がある。

 …ん?



 「えっと…2週間?」

 「そうだ。2週間。全く変に心配したじゃねぇか」

 「あ、うん。おはよう」

 「おう。おはようさん、眠り姫様」

 「ん?あ…」



 そういえば、向こうで体が戻ってるってことは、こっちでも戻ってもおかしくないんだった。


 「ルディ…僕が寝てる間に何かした?」

 「え、えっと、何もしてねぇぞ」


 一応聞いてみたけど、ルディが目をそらすんだけど…



 「なんで目をそらすのかな〜?」

 「うっ…それは」

 「それは?何かやましいことでもあるの?」

 「あ〜…ないか。いや、布団をかけ直したくらいだ。ああ、そうだそうだ」

 「ふ〜ん。で?」

 


 相変わらずルディは目をそらしてる。


 「…お前が寝ぼけて、俺を腕に1週間ほど抱きついて離れなかった」

 「…うん、聞かない方が良かった。なんかごめんね」



 僕の顔が少し熱くなってる。やっぱり不便な体だ。


 「とりあえず、宿の更新だけはしといたからな」

 「りょうか〜い」

 「じゃ、俺は部屋に戻る」



 そう言ってルディは僕の部屋から出て行った。


 さてと。


 「じゃあ、解析を始めるとしようかな」



 僕は自分の魂の中に記録されている情報の中に、意識を潜り込ませる。


 ひどい頭痛がするし、気持ちが悪い。

 大量の情報を処理するので、知恵熱出して寝込みそうだ。まぁ、僕の体は寝込めないけどね。


 僕は、紫たちの意識の封印されている場所を探す…













 「あ、見つけた」


 かれこれ、2時間。やっと見つけた。


 封印されているのもわかる。



 「あれ?以外に封印はあまいみたいだね」


 その封印は、結構単純なものではあった。しかし、確かに外からなら封印は簡単に解けるが、内側からはほぼ絶対と言ってもいいほど頑丈な作りに見える。


 

 「まぁ、これで封印を解くのはできそうだね。後は、呼ばれるのを待つだけ」



 これで、後は待つだけである。絶対に無理と言われたのに、これじゃあ拍子抜けだ。

 ま、楽なのに越したことはないけどね。


 「じゃあ後は…って、もう2週間経ってるなら兵とかほとんど集まってるじゃん!」


 

 そういえば、もう2週間が経つならシルフィードの軍とかが集まっててもおかしくはない。

 せっかく兵力とかを確認するためにここに来たのに、意味がなくなるところだった。


 「とにかく、ギルドとかに行けばわかるかな?」



 僕は、宿を出てギルドに向かう。




 ギルドは町の中心部にある。そして、行く途中には武器を持った人や大きいバッグとかを持った人など、魔王討伐に参加すると思われる人にすれ違う。

 その人たちの能力値は総じてあまり高くはないが、それでもこの世界における結構な実力者ぐらいはあると思う。

 宿からの道では、兵士はあまり見ていないので、まだ軍は到着していないのだろう。




 カランカラン…


 ギルドの中に入ると、前にルディの登録に来た時からは考えられないほどの人がギルド内にいる。


 『討伐隊への参加ですね?』

 『ああ、登録を頼む』


 『では、頑張って下さい』


 『登録したいんだが』

 『では、こちらの列にお並びください』

 『わかった』


 『Cランクパーティ以上ではないと参加できませんが、カードの提出をお願いします』

 『大丈夫だ。ほれ』

 『失礼いたしました。では、登録完了です。6日後、これを持って港に集まってください。一度顔合わせを行うそうです』

 『はいよ』



 今聞いた感じだと、6日後には集まるようだ。その日に見にいけばよさそうかな。



 「みろよ。こんなとこにガキがいるぜ」

 「マジかよ。俺も魔王を討伐するんだ〜とか思ってんじゃねぇの!笑えるぜ」



 僕の真後ろから、男2人の声がする。


 うん。どうせこうなるとは思ってたよ。


 「そういう奴には俺らが現実ってもんを見せてやらねぇとな?」

 「おうよ。へっへっへ…」


 

 後から、僕の方を掴もうとしてくるのがわかったので、それをひょいっと躱して受付に向かう。


 「なっ、てめぇ何避けてんだよ」


 スルーする。



 「無視するとはいい度胸じゃねぇか!こっちを見やがれ!」


 パンチが来たので、それも躱す。

 なんども殴ってきているが、1回も当たらないで受付に到着。

 


 「ええと…冒険者ギルドへようこそ?」


 受付嬢さんが困った顔をしてる。

 ま、殴ろうとし続けてるし、しょうがないかな?


 「ちょっと聞きたいんだけどさ。今、魔族大陸に行く人ってどれくらい集まってる?」

 「ええと…あ、その前にギルドカードの提出をお願いします」

 「ああ、忘れてた。ほい」


 僕はAAAランクの方のカードを渡す。



 「あ、”悪霊”様⁉︎…あ、すすすっすみません!」


 受付嬢さんがそう叫んだ瞬間、ギルド内がシーンと静まり返ってしまった。後ろから殴ろうとしてた奴は、すごい勢いで逃げていくのがわかる。

 


 『おいおい、お前なんてことしてんだよ…』

 『ししししっ知らなかったんだ。と、ととにかく早く逃げようぜ!』

 『あいつが”悪霊”だ?まだ、成人したての子供じゃねぇか』

 『後ろからの攻撃をずっと軽々避けてたし…もしかして本物か?』

 『あの人が大会で戦ってた人…』



 う〜ん、これは…まずい


 「ちょっとギルドで空いてる部屋ってある?」

 「え?あ、はい。そこの上の階に…」

 「ちょっと借りるね〜」

 「ちょっと、許可なくギルドの…!」


 僕は急いで上の階の部屋の1つに飛び込み、扉を閉める。

 その次の瞬間、下の階から大騒ぎしている声が聞こえてくる。

 


 『サインだサイン!』

 『俺を弟子にしてくれ!』

 『私に魔法を!』

 『あ、あたしと付き合ってください!』



 ほら、こうなる。

 絶対に騒ぎになると思ったよ。



 「で、僕が入った部屋はなんの部屋かな?」


 扉に鍵をかけて、後ろを振り向くと…



 「はっはっは。すまんの。うちの受付嬢が迷惑をかけたようで」

 「えっと…おじぃちゃん、誰?」

 

 立派なたてがみを持った、ライオンの獣人のおじぃちゃんが座っていた。

 なんというか、威厳があるね!



 「ワシか?ワシはここのギルド長よ。ここはギルド長室だしの。確認せずに入ってきたのかの?」

 「急いでたからね〜。全く、やっぱりこうなちゃった」

 「まぁ、少し収まるまではここにいるとよい。紅茶でも出そう。紅茶は嫌いかね?」

 「いや〜。結構好きだよ〜」

 「そうかそうか。獣人は嗅覚のよい者が多いから、あまり理解してくれる者が少なくての」

 「あ〜。確かに」

 「今入れるから、少し待っておれ」

 「ほ〜い」


 おじぃちゃんは、壁の棚をガサガサやってコップとかを出してる。


 僕はそれを待つことにした。

 ま、どうせしばらくは帰れなさそうだしね。


意見、感想等あったらお願いします。

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