97.ちょっと暇潰しを見つけました
「ところでシン。君って何か出来ない事はないのかい?」
練習が終わり、休んでいたらルーが突然そんなことを聞いてきた。
「ないわけないじゃん」
「そうか。うん、そうだよな。君は料理はできるし、魔法も使えるし、武術も出来るしと、なんでもこなすから、出来ない事なんてないんじゃないかと思ったよ」
「いや、結構あるよ。例えば、弓とかは使えないしね」
「え?そうなのかい?」
「そうだよ〜。投擲は出来るんだけど、弓とか道具を使った遠距離の攻撃とかは出来ないね。なんだか、全く違うところに行っちゃうんだよ」
ずいぶん前に神野たちと行った祭りで、射的が全然当たらなかった覚えがある。
「へぇ。今度教えてあげようかい?僕は弓は人並み以上に使えるからね。あれは動かなくても使えたから」
「いや、いいよ。前にルディに教わろうとしたんだけど、これっぽっちも才能がないって言われたから」
「そうか。じゃあ他にはないのかい?」
「ん〜?どうだろ。やった事はないからわかんないのくらいしかないかな。まぁでも、弓とかは絶対に使えないし。やった事がないだけで多分色々できない事はあると思うよ」
「そうか。でも少し安心したよ」
「ん?何が?」
「君がどこにでもいるような人間なんだってね。なんというか、僕らとは住む次元の違う超人みたいに感じてたから」
「ふ〜ん。まぁでもさぁ…人間と一緒にはされたくないかな」
「え?」
想像物と創造主を一緒にはしないでほしいね。特にあんなゴミまがいなものとさ。
「ま、そんな事は置いておいて。今日はここまでね」
「あ、ああ。わかった」
「じゃ、僕は出かけるから〜」
「こんな時間からかい?もう、6時過ぎだよ」
「うん。どうせ暇だから」
「夕食はどうするんだい?」
「適当に食べるからいいよ〜」
「そうか。じゃあ僕は自分の部屋に戻るとするよ」
「じゃ。また明日〜」
「ああ。もう遅いんだ。気をつけて」
「僕に敵う生物なんかがいるとでも?」
大体の生物はデコピンで殺せるよ?今、作ってる体でさえね。
「ははは。そうだったね。じゃあ」
「うん」
ルーは自分の部屋に戻っていった。さてと。
「じゃあ、出かけるしますかな」
どうせなら明日にしようと思ったんだけど。みんなが寝ている間はやる事なんか何一つないので、外に遊びに行くのだ。
僕は”息吹”をネックレスにして首につけ、普通の布のズボンとシャツで出かける…
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さて、僕は今捕まっています。ロープで縛られて、目隠しをされてね。
「なぁアニキ。やっぱ殺しちまいましょうぜ』
『いや、こんなところで殺すのはまずい。やっぱ奴隷にして売る方が…』
『何からそれは無理っす。どうするんですかい?こいつは処分しろって言われてんすよ?』
少し離れたところ…おそらく隣の部屋から、男2人の物騒な話し声が聞こえる。
こんな事になってる原因は、約1時間前の事である。
僕は、何かないかなと思って、この街には港がある…つまり、海が近いので、海辺を歩いていたら。
浜の岩場の近くで声が聞こえてきたのだ。面白そうだったので、近づいて聞いていると。
『こ、これで仲間を助けてくれるんだろうな…?』
『ああ。きっと魔王様もお喜びになられるだろう』
『そ、そうっすよね。じゃ、じゃあ俺らはこの辺で失礼させていただきやす』
『いや、ちょっと待て。そこにいるのは何だ?』
『そ、そこってなんだ?』
魔王様なんて単語が聞こえてきたので、これはきっと裏切り者か何かだろうと思ったので、聞いていたら。
『ほう。そんなものにも気付けないとは、人間とは随分と情けないのだな』
『な、なんなんすか?』
『人がいるではないか。貴様ら、裏切ったか?』
『い、いえいえ。滅相もない。い、今捕まえてきます!行くぞ』
『へい、アニキ』
結構遠くにいたのに気付かれてしまったのだ。魔族って以外と勘がいいのかな?
で、せっかくなので捕まってやろうかなって思って、そのままそいつらの方に歩いていったら、男2人がやってきて、
「う、動くんじゃねぇぞ!死にたくなきゃ、大人しくついてこい」
「ほ〜い」
「聞こえなかったか?だから大人しく…って、やけにおとなしく捕まったな…」
「いいじゃないっすか、アニキ。きっとアニキに気圧されちまったんすよ」
「そ、そうだな。よし、つれてくぞ」
サーベルっぽい剣をこっちに向けて、二人掛かりで襲ってきた。で、大人しく捕まったら、そのままさっき話してたところに連れて行かれて、話し相手を見ると。
「ラインデル様。連れてきたっす」
案の定、魔族だった。青い肌で結構長身の燕尾服を着たやつ。ってことはそんなに身分が高くないのかな?
「そうか。で、そやつは何者だ?」
「え、えっと。おい、お前。名乗れ!」
「え〜。面倒い」
「いいから名乗れって言ってるのが聞こえねぇのか!その首切り落とすぞ!」
こいつらがバカみたいなので、弄んでやろうと思ってふざけてやると、ガチで僕の首を切り落とそうとしてきたので、
「ええと…う〜ん、何がいいかな?あ」
「さっさとしろっつってんだろ!」
「ほ〜い。はじまして、たまたまそこら辺を通りかかっただけの一般人です。お願いします、助けてください」
ふざけてやる。こういうアホは、ガチで切れさせると面白いのだ。
「てめぇ…人が大目に見てやってるってのに」
「ま、まぁアニキ。落ち着いて」
「まぁいい。こいつらはお前らで処分しておけ。では、例の件しっかりと頼むぞ」
「へ、へい。わかりやした!」
残念ながら、アホっぽい男2人は切れてくれないし。魔族は僕に興味なさげな目を向け、どこかへ消えた。
で、その後こいつらは僕に目隠しをして、どこかにある倉庫に連れてきて、ロープで縛って、今に至る。
『じゃあアニキ。どうするってんですかい』
『いや、俺らの勝手な事情に巻き込むわけには…』
『何を今更言ってんすか。俺ら盗賊じゃあありませんか』
なんかさっきから聞いている感じだと。
こいつらは元々、この街の近くで盗賊をやっていたらしい。
その盗賊団は、規模はそんなではなかったが仲が良くて、仲間意識が高いところだったらしい。
で、そこにさっきの魔族がやってきて、こいつらが仲間とやられた後、仲間を人質に取られて魔族に働かされているらしい。
そんなことを考えながら、僕は手足を縛ってあるロープを解いて、目隠しを外す。
僕がいる場所は使われていない倉庫みたいで、壁に扉があるので男2人はそっちにいるのだろう。
『ですから、やっちまいましょう』
『いや、奴隷にして売るって手も…あいつは処分しろって言っただけなんだぜ?』
『それで、どっかからばれたら。アウトなんすよ』
さっきから、僕を奴隷にして売り払うか、今すぐに殺すかで揉めているようだ。アニキって呼ばれている方は殺すのはあんまり好まないみたいで、僕を殺すのを躊躇っているが、部下っぽい方はさっさと殺してしまおうって言っている。
「さて、どうやって遊ぼうかな〜?」
とりあえず、情報を全部喋らせるのは決定事項なんだが、それ以外を考えている。いつも通り拷問じゃ面白くないし、魔族に殺されるのを見る気分でもないのだ。
「う〜ん。どうしようかな〜?」
どうせなら、魔族から仲間を自分たちの手で助けた後、軍に捕まってもらうとかが面白いと思うのだ…ちょうど、魔族大陸に攻め入る準備でこっちにいる強い冒険者とか結構いるし。それにほら、喜んだ後の絶望的な状況とか、見てて楽しそうだし。
「あ、そうだ。仲間になってやろう。裏切られて崩壊ってのがいいな。僕はいざとなったら、顔変えればいいし。うん、そうしよう」
僕がこいつらの仲間になって、内側から軍に手引きして壊してやろう。
「よし。そうと決まれば〜」
僕は男2人が話していると思われる部屋に入る。
その部屋は机があって、そこに4つある椅子にアニキさんと部下っぽいのが座っている。
そして、相変わらず言い合っているのだが、
「だから、奴隷にすればいいじゃねぇか」
「ですか、ら…って、アニキ。逃げ出そうとしてんすけど、そいつ」
「は、何を言って…なんだと?逃げ出すって、おいおい…」
部下っぽい方が僕に気づき、アニキさんも僕の方を見て驚いた顔をする。
「おい、お前。どうやって抜けた」
「企業秘密です。で、相談なんですけど〜。僕を仲間にしてくれませんか〜?」
「ふざけんなよ?アニキの質問にはしっかり答えろ」
「え〜。普通に抜けただけですってば〜。それより、僕を仲間にしてください〜」
「「…は?」」
2人して間抜けな顔をこちらに向ける。
「聞こえませんか〜?僕を仲間にしてくださいって言ってるんですよ〜」
「い、いや。聞き間違いじゃねぇんだな?」
「そうみたいっすね…」
「ほら、僕なら力になりますよ〜。僕があそこを歩いていたのも、あなたたちの盗賊団に入るためだったんですよ〜。この辺にいるって情報を聞いて、探してたんです〜」
ご存知の通り、全くの嘘である。盗賊団なんて、ここにあるのは今日初めて知ったし。
「ほぉ。で、俺らの仲間になりてぇと?」
「はい、そうです〜。だから僕を仲間にしてくださいよ〜」
「アニキ。こんなやつ信用しちゃいけないっすよ。どうせ、今逃げるためについた嘘ですって」
「嘘じゃないですよ〜。僕、昔からあなたたちの盗賊団に憧れてたんです〜。みんなで馬鹿騒ぎして、好きなことやれる場所なんて、普通はないですから〜」
普通に好き勝手やってるけどね。
「ふん。どうせ嘘だろうよ」
「じゃあ、どうしたら信用してくれるんですか〜?」
「そうだな…今ここで、お前の小指を斬り落とせ」
「え〜?どうやってですか〜?僕は刃物なんて持ってないんですよ〜」
というか、どこのヤクザだよ…けじめでもつけさせたいのかい?君らは。
「じゃあ、これで斬り落とせ」
そう言って、アニキさんはどこからかナイフを取り出して、僕に渡そうとしてくる。
「あ、アニキ。待ってくれっす。そんなもの渡して反抗されたらどうするんすか?」
「大丈夫だろ。こいつは俺らが行ったとき大人しく捕まったんだ。お前が、抵抗されたときの準備でもしておけばいい」
「そ、そうっすね。わかりやした」
「じゃあ切れ」
そう言うと、僕にナイフを投げてよこした。部下っぽいのは、僕の後ろで剣を抜いて構えている。
…さて、どうしようか?別に切り落としても、痛みは痛覚切っておけばいいので痛くないのだが…どう考えても、ルーたちに不審がられるよね〜。
「うっ。男は覚悟だ〜。えいっ」
ポロっと、僕の指が机に落ちる。
ええ。まぁ、切り落としました。痛くもかゆくもないし、どうってことはない。まず第一にこの体は作り物のため、指の1本や100本くらいいつでも生やせる。
いや、マジで100本くらい。嘘じゃないよ、生やしてあげようか?結構ぎっしり生えててキモいから。
「ま、マジか。そうか…よし、信用するって言ってんだ。信用してやろうじゃねぇか」
「あ、アニキ。いいんすか?」
「ああ。覚悟を決めてやったんだ。俺はそう言うやつは嫌いじゃねぇ」
「…そうっすね。俺らが困ってんのも事実なんすし」
「と、いうわけだ。ようこそ、我ら”合祭盗賊団”へ。まぁ、今は団員は俺とこいつの2人だけだがな」
「…」
「おい、聞いてんのか?」
「…指」
「「あ」」
さすがに、切り落としたので血は出てるし、痛覚切ってるとはいえども変な感覚はするのだ。
「と、とりあえず、包帯もってこい。あと回復薬だ」
「へい!」
部下っぽいのがどっかに行ったと思ったら、すぐに包帯と回復薬を持って戻ってきた。
「すまねぇ、忘れてた」
「ちょっと痛むかもしんないけど、我慢してくれよ」
「…」
2人が頑張っているのだが、僕は全く痛くもなんともないので面白い。
「これでよし。すまなかったっす」
「…え。ああ、はい」
「よし、じゃあ改めて、”合祭盗賊団”へようこそ」
黒っぽい薄汚れたバンダナを頭に巻いている男が、僕を見て笑いかけてくる。
…ホモか?
「はい、ありがとうございます〜」
「おう…って、あいつには処分しろって言われてたんじゃねぇか」
「あ、そうでしたね〜。じゃあ、その魔族から仲間を取り戻せばいいんじゃないですか〜?あと、僕がその魔族から見つかりさえしなければ」
「いや、そんなことができりゃあ。とっくにそうしてんだよ」
アニキさんは悔しそうな顔をしている。これがもっと歪むのは見ものだろうな〜。
「なんでできないんですか〜?」
「そんなの決まってんだろ。あいつは魔族だ。俺らなんかじゃ立ち向かえねぇ。それに、うちの奴らがかかってんだ。できるわけねぇだろ」
「そうですか〜?魔族って言うだけならきっと倒せますよ〜」
「はぁ?てめぇ…アニキ、やっぱり殺しやすか?」
「いや、なんでそんな事が言えるのかを聞いてからにしてやろうじゃねぇか」
「そうっすね」
「で、魔族って言うのは魔力が高くて、能力が高い種族じゃないですか〜?」
「ああ、それだから倒せねぇんだろうが」
「ですよね〜。だから、きっとあっちも油断してると思うんです〜」
「確かにそうかもしんねぇが、俺らじゃどうせ勝てねぇに決まってんだろうが」
「そう思ってるのを利用するんですよ〜。魔族だって人なんです〜。罠にかけて一気にやれば勝てますよ〜」
実際、マドーラのところのやつは気づかずに僕の空間のエネルギー源にされているのだ。騙すのは容易だろう。
「そんなもんが通用するわけねぇだろうが。第一に、俺らの仲間がどうなってんのかわかんねぇじゃねぇか」
「それはまず聞きたいんですけど〜。仲間たちに会わせてもらえてます〜?」
「あ、ああ。それなら3日に1回、何処かに連れて行かれて、俺らの仲間が檻の中に飛び込められてんのを俺らに見せてきやがるんだよ。思い出すだけで腹がたつぜ」
「じゃあ、そこを狙いましょう〜」
「そんな事言ったって、俺らじゃどうする事もできなかったんすよ」
「大丈夫です〜。1つ質問なんですけど〜、あの魔族って空は飛べますか〜?」
「いや、飛んでるのは見た事ねぇし、翼もねぇ」
「ならいけますね〜。じゃあ、作戦なんですけど〜…」
僕はそいつらに、作戦を話す。
にしても、こいつらがバカで楽だわ〜。
「な、なるほど。確かにそれなら…で、その準備はどうやってやるんだ?」
「少しずつ、準備をするんです〜。最初に、アニキさんたちが連れて行かれるのを僕がこっそりつけていきます〜」
「それじゃあばれちまうだろ?」
「今度は大丈夫です〜。僕、かなり目がいいんです〜。なので、こっちから見えるギリギリの場所からつけていきますので〜」
「そうか。じゃあ、次に合わせて貰えんのは2日後だったはずだ。それまでに、お前が準備しておけ」
「了解です〜。その間にアニキさんたちは何してるんですか〜?」
「俺らは、あの野郎に命令された事をこなさなきゃなんねぇんだよ…」
「それってなんです〜?」
「これだよ。この紙に書かれた魔法陣を、指定された場所に書くんだ」
「ふ〜ん。ちょっと見せてもらえますか〜?」
「あ、ああ。別にかまわねぇが。だが、紙を切ったりすんじゃねぇぞ?」
「了解です〜」
僕は、アニキさんに魔法陣が描かれた紙を渡される。
「ふ〜ん。ぬるいですね〜」
見た所、その魔法陣は魔族大陸だろう場所から、捕まえて契約魔法で従わせている魔物を呼び出すものらしい。しかし、それを使うのには魔族の魔力と少量でいいのだが契約者の血が必要で、陣自体も色々と細かく書かれているので、準備に時間が掛かるというものだった。しかも、陣は魔力で書いても一瞬しか起動しないので、地面などに掘り込まなくてはいけない。
「そうなのか?俺は魔法に詳しくねぇからな」
「はい〜。面倒な手間が多すぎです〜。これちょっと書き換えてやればもっと色々…じゃないですね〜。敵に塩なんか送ってどうするんでしょ〜」
「まぁそうだな。で、俺らはどうすればいいんだ?」
「そうですね…じゃあ、…」
僕はアニキさんに準備するものを告げ、アニキさんが仲間のところへ連れて行かれる日を待つ…
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