リカちゃんの囁き 4
「な……何すんのよ!」
夕樹さんはもちろん、怒った。
俺、そして、紫藤さん、古谷さんは呆然としてその様を見ていた。
「あなた、うるさい」
小室さんはゆっくりとだが、はっきりとそう言った。
それを言われて、それまでニタニタと笑みを浮かべていた夕樹さんは急に真顔になった。
「あなたのいっていること、わたし、すでに、けいけんした。しどうさん、ふるやさん、もわかっている、はず……でしょ?」
そう言われると、先ほどまで俺を睨んでいた二人も気まずそうに頷いた。
「……ふんっ。だから何よ……ドーテー君がアンタ達のことどう思っているかなんてアンタにだってわからないでしょ?」
「わかる。わたし、あかいくんのことしってる。あかいくん、ちょっとぬけてるとこ、ある。でも、やさしい」
「こ、小室さん……」
俺がそう思わずつぶやくと、小室さんは一瞬だけこちらを見た。
「だ、だから何よ! 優しいからって私達みたいな人間でもゾンビでもない存在、気持ち悪いって思ってないわけないでしょ!」
夕樹さんがそう叫んでも、小室さんは動揺しなかった。
「だいじょうぶ。きっと、わたしたち、もとに、もどれる」
「……何よそれ。どこにそんな保証があるのよ」
「あかいくん、わたしにそういった。わたし、あかいくん、しんじる」
その言葉を聞いて、俺は思わず涙を流してしまった。
その時俺は明確にわかったのだ。
俺は、この女の子のおかげで、ここまで生きてこられたのだ。
小室アリスという、無表情だが、とても優しい美少女のおかげで。
「……馬鹿じゃないの。そんなの……ドーテー君の適当な言葉に決まってるじゃない。はぁ……もう、いいわ。なんか下らなく思えてきちゃったわ……」
夕樹さんのその言葉を訊くと、小室さんは俺の方に戻ってきた。
「あかいくん、どうしたの?」
と、俺の方に戻ってきた小室さんが不思議そうに訊ねた。
「え……な、何が?」
「なんで、なみだ、でてる?」
小室さんにそう言われて、俺は、なんとか無理やり微笑んだのだった。




