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vol.18

本日1発目の仕事を終え、ほっと一息つく。

初めての現場での仕事の後はいつもこうだ。

顔見知りが何人かいても緊張するのは隠せない。


なんとなく気になって携帯を取り出してみるとメールが1件。

誰からだ・・・! 彼女からだ。

文面から察するに帰宅途中らしい。

俺の今日の予定を聞いてきているが・・・

ふとメールの到着時間を見ると、ほんのついさっき。

今ならまだ声が聞けるかも知れない。

そう思うと迷うことなく、彼女の携帯番号をアドレスから引き出した。











コール音数回で電話がつながる。



『・・・もしもし?』


「もしもし真澄ちゃん?今まだ平気?」


『あ、はい平気です』



回りが少しざわついている。

でもこの間聞こえてきた男の声は聞こえない。

そのことに少し安堵する自分。



「メールみたよ、で打つより早いから電話しちゃった

今日は夕方までだから時間空いてるけど?」


『あ、あのカニを買ったんです。

いつもお世話になってるのでよかったら召し上がらないかな・・・って』


「ええ!?張り込んだねぇ、良いの?」


『もちろんです、いつも私が奢ってもらってばっかりだし・・・』


「気にしなくていいのに・・・

そうだ、真澄ちゃん予定なんかある?』


『? いえ?特にはなにも』


「じゃあさ、いっしょに食べようよ。お土産話も聞きたいし」



これは口実。

本当は少しでも会いたいから。



『え?』


「迷惑?」


『い、いえそんなことありません』


「今○●でしょ?そこからだとこっちにつくのお昼過ぎくらいか。

少し家で休んでから待ち合わせしよっか?スーパーで買い物もしたいし」



彼女が断らないのを良いことにどんどん話しを進めてしまう。

強引かなと思わなくもないけれど、今は開いた時間を少しでも埋めたい。



「真澄ちゃん?」



展開が急すぎたのか、反応がなくなった彼女に呼びかける。



『あ、はい大丈夫です』


「帰りは送っていくからタクシーでおいで、そのお金もだすから」


『え、でも』


「運転でつかれてるでしょ?無理言って今日来てもらうんだから

それに帰り危ないし、俺送るから」


『でもそれじゃ仁さんお酒飲めないですよ?』


「俺飲めるけどあんまり家じゃ飲まないから」


『そうなんですか・・・?』


「だから気にしないでせっかくのお土産痛まないうちに食べちゃわないと

真澄ちゃんの心遣いが台無しになっちゃうし・・・

おし!楽しみできたからこの後の仕事ちゃっちゃと片づけるよ

終わったら電話入れるから、それまでは家でのんびりしてて?

あ、なんだったら家に来て休んでても良いけど?」



彼女がうちで待っててくれると考えただけで気分が高揚してくる。

どこまで単純なのか。



『あ、いえ一端家に帰ります。荷物もありますから』



そっか、そりゃそうだ。

女の子には女の子の事情というものもあるし。

長距離ツーリングした後なんかシャワーの1つでも浴びたいだろう。

そう思うと残念だとは思うものの、素直に納得した。



「そっか、そうだね じゃあまた後でね?

家までもうすこし、気をつけるんだよ?」


『・・・はい』



「じゃあ」と言って切った電話。

かける前と明らかに違うテンションに我知らず苦笑する。

それでも楽しみは楽しみな訳で。


帰ったらまず冷蔵庫の野菜チェックだな。

そう思いながら次の現場に向かい歩き出した。

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