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PROJECT Chee-KOMACHI

作者: あきら810%
掲載日:2026/01/15

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私はポストの前に立って深呼吸した。

―――大丈夫、いける。私なら。

そしてゆっくりと書類を投函した。手の甲に当たった金属の感覚が冷たかった。

PROJECT Chee-KOMACHI。私、仇岡せめんが応募したアイドルオーディションだ。チー小町は七人組アイドルグループで、容姿よりも寧ろ歌とダンスの実力を重視する、というコンセプトが気に入って選んだ。。

私は徐ろにスマートフォンを取り出した。そしてトークアプリを開き、オーディションの書類を送ったよ、とグループラインにメッセージを送信した。

すぐに友人の絹子の返信が来た。私もさっき出してきた、とのこと。もう一人の友人、颯子(はやこ)は昨日出してきたらしい。

いや、こんなことをしている場合ではない。書類選考に受かっていたときのために、一次試験の練習をしなければ。一次試験では課題曲の楽譜を見てアカペラで歌う。私の課題は高音の張り上げだから、今日はボイトレに行こう。私は冷たい風を感じながら歩き出した。


私の郵便受けに一つの封筒が届いた。差出人はPROJECT Chee-KOMACHI本部。書類選考の合否がわかるというわけだ。

私は封筒を開けようと試みた。しかし、緊張してのりを剥がすことができない。震える手でかろうじて封を切ると、神様お願いしますと心のなかで思いながら紙を見た。


合格の二文字が目に飛び込んできた。

「やった!!!」

思わず声を上げて飛び跳ねた。

嬉しくて嬉しくて仕様がなかった。

「よかった……!!」私は胸がいっぱいになってスマホを開いた。グループラインには既に二人からの報告が届いていた。


絹子:「私受かった!!やった!!」

颯子:「ヤバすぎ!!三人とも通ったじゃん!!★最★強★布★陣★決★定★」

しかしうかうかしてはいられない。一次試験まではあと十日なんだ。

とうとう一次試験当日になった。朝ご飯を食べ、一通り発声練習をしてから急いで準備を始めた。鏡の前で髪型を整えながら指先が震えているのに気づく。いくら朝飯後とは言えども、それでも心臓は高鳴っていた。

駅の改札で待ち合わせる私たち。

「せめん、おはよ〜」

ふわりと微笑む絹子は既に完璧なメイクを施していた。彼女の大きな瞳が不安を和らげてくれた。颯子も、いつものふんわりした感じとは打って変わってバッチリ決めてきていた。さすが颯子、やるときはやる女なのだ。

私たちは電車に乗って目的地へ向かった。電車を降りスタジオへと徒歩で向かう。私達は全員方向感覚がないのでかなり迷ったが、g○○gle先生のおかげで、なんとか時間までには会場に着くことができた。

一次試験の会場であるスタジオに足を踏み入れた瞬間、空気がピンと張り詰めたのを感じた。私たちは控室に通された。そこには五十人近くの応募者がいた。みんな、オーラがある。

緊張しすぎてドアを開ける手が滑りそうだったが、深呼吸をして中に入った。扉の向こうにはアイドル志望者たちが集まっていた。

各々が集中しているのがわかった。それもそのはず、この部屋にいるほとんどの人が本気でアイドルを目指しているのだ。

私も負けてられないと思い自分を奮い立たせた。今日までの努力を信じてここまで来たんだ。

順番が回ってきてついに自分の番になった。緊張で身体が震えたが何とか平常心を保つ。

楽譜を受け取り、目を通す。私の課題は高音域での表現力だ。自分の番が近づくにつれ動悸が激しくなってくるのを感じた。周りの人達も真剣な表情でそれぞれの準備を進めていた。

――大丈夫。今まで頑張ってきたし、練習してきた。それを信じるしかない。


私の名前が呼ばれると同時に立ち上がり会場に向かった。その時背後から聞こえたのは、「がんばれ」の一言だった。

振り返ると絹子と颯子がこっそり応援してくれていた。その優しさに背中を押されながらステージへと足を踏み出した。

最初は緊張していたので、声が一瞬裏返った。しかしだんだんボルテージが上がってきて、気づけば曲は終わっていた。歌い終わった瞬間、体中から汗が吹き出すような感覚があった。成功したかどうかはわからないけれど、とにかく全力でやり遂げた感覚だけは確かだった。

結果が届くまでの日々はとても長く感じた。毎晩のように布団の中で寝返りを打ちながら何度もあの日の出来事を思い出した。あの時の緊張感や達成感、そして応援してくれた仲間たちの顔――すべてが鮮明によみがえった。


一次試験の結果通知の日。今日は大学の授業に出ている余裕は無かった。ずっとそわそわしながら家で待機していた。

家にあるテレビでは今話題のグルメ番組が流れている。しかし私の意識はそこに向いていなかった。視線はただ一点、スマホと玄関に固定されていた。

絹子と颯子からメッセージが届いた。

絹子:「どうしよう!!心臓バクバクしてる!!」


颯子:「私たちは最強だから!!絶対いけてるから、大丈夫!!」

お互いに励まし合うメッセージが続いて、少し気持ちが落ち着いた。しかし胸の高鳴りは収まるどころか益々強くなっている気がした。

八時十分になって、スマホの通知音が鳴った。画面を見る勇気が出ずしばらくそのままで待機していたが、腹を括ってサイトを開いた。

トップページには『Chee-KOMACHI一次選考結果発表』と大きく表示されていた。


震える指でそのリンクをタップすると、合格者のリストがスクロールされ始める。

恐る恐る画面を見つめていると――

私の名前を見つけた。

「やった……!!!」

思わず声が出てしまった。信じられないけど、本当に合格したんだ。すぐに絹子と颯子にも知らせようと思ったところで、ちょうど彼女たちからメッセージが来た。


絹子: 「私も受かった!!」

颯子: 「ヤバすぎ!!また三人揃ったじゃん★」


喜びがさらに膨れ上がる。スマホを握りしめながら、自分の中で何かが解放される感覚を覚えた。


颯子の勢いが止まらない。

颯子: 「次の二次審査で勝つための戦略会議やろう!!三人で!!」

絹子: 「賛成!!いつにする?」

私: 「今夜はどう?」

すぐに返事が来た。

絹子: 「いいね!!じゃあ私の家で、十八時からにしようよ!!」

颯子: 「オッケー!!二次も頑張ろうね!!」

私達のテンションは最高潮になっていた。そして夜、戦略会議を迎えた。

絹子が言う。「二次試験は確か、志望者たちで何人かのグループを作って、課題曲の歌とダンスを披露するんだよね?」

人かのグループを作って、課題曲の歌とダンスを披露するんだよね?」

颯子が返す。「そうそう!!つまり、私たちの協力を見せつける時ってこと!!」

「いっちょやってやりましょう!!」と私。

「おー!!」

三人で拳を突き合わせて叫んだ。戦略会議は夜遅くまで続いた。


戦略会議から数日後、二次試験の詳細が公式サイトで公開された。

課題:三~五人編成のグループを作り、指定された課題曲を歌唱・ダンスで表現すること。


「それじゃあ、行くぞー!!」

気合を入れ私たちはグループ結成の連絡を会場運営に送信し、早速練習を開始した。

課題曲はアップテンポで振り付けも多い。特に最後のサビ前のターンが難関だった。

「ねえねえ絹子、ここのターンのタイミングってどうなってるの?」

「せめん、そこはワンツースリーのスリーで入るんだよ!!ほら、ワンツースリー……」

「ホントだ、できた!!ありがとう!!」

また、課題曲にはラップパートもあった。

私は「このラップパート誰が歌う?誰かラップできる人いる?」と聞く。

「えー、私自身ないな……」と絹子。

「私、ちょっとならできるかも……」と颯子。

そう言う颯子に任せることにした。

颯子のラップの練習が始まった。彼女は持ち前のセンスと努力でどんどん上達していった。

「さすが颯子!!すごい!!」と称賛の声が飛ぶ。

こうして私たちは練習を重ね、それぞれの役割をこなしながら課題曲を完成させていった。


オーディション当日。私たちは過去最高のパフォーマンスを披露した。驚くほど完璧なパフォーマンスで、もはや記憶が飛んでいた。


練習の甲斐あって、私たちのグループは二次試験を無事通過することができた。

運命の二次選考結果発表日。前回と同じように、私たちはサイトで結果を確認していた。

私: 「あった!!私たち、合格してる!!」

颯子: 「ヤバすぎ!!絶対通ると思ってたけど、本当に嬉しいね!!」

絹子: 「これもチームワークのおかげだね。ありがとう!!」


最終審査が行われる日。

私たちは緊張で震えながら会場へ向かった。ただ単に最終審査だからというだけではない。課題が事前に知らされていないのだ。

「ね、ねえ、私たち、きっと大丈夫だよね」

私は言う。

「うん、私達なら……たぶん、大丈夫だから、自身持っていこう!!」


最終審査の課題は、前回のグループでオリジナルソングとダンスを制限時間内に作り、パフォーマンスをすることだ。最終審査には六グループ十九人が残っている。みんな、私より可愛いし私より強そうに見えた。でも、ここで負けてる場合じゃない。私は拳を握りしめた。


とうとう私たちの名前が呼ばれた。

足を踏み出し、大きく息を吸う。

私は軽やかに歌い出した。

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