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8話:馬乗りの朝と、のぞいた胸元

 五日目の朝。


 目を覚ますと、異常事態が発生していた。


 睡蓮さんが——俺の上に乗っていた。


 (……は?)


 足を俺の体に跨がせて、上半身は俺の胸に預けている。

 完全に、馬乗りの状態だ。


 しかも——


 キャミソールの肩紐がずれて、鎖骨から胸元にかけて、ほぼ丸見えになっている。


 白い肌。柔らかそうな胸。小さく赤く色づいた部分が——


 (見るな! 見るな! 見るな!)


 俺は必死で視線を逸らした。


でも、逸らす場所がない。


 上を見れば、睡蓮さんの寝顔。

 横を見れば、ずれた肩紐。

 下を見れば——睡蓮さんの太ももが俺を挟んでいる。


 そして——睡蓮さんのお腹が、俺の下腹に押し当てられている。


 体が、正直に反応している。


 いや——これは朝だから、ある意味仕方ない。

 男には、朝起きると自動的にそうなる「現象」がある。


 でも——今は最悪のタイミングだ。


 睡蓮さんのお腹が、俺の「そこ」に——


 (まずい。まずいまずいまずい!!)


 睡蓮さんが少しでも体を動かしたら、絶対に気づかれる。


 俺は必死で姿勢を変えようとした。

 でも、睡蓮さんが乗っていて、動けない。


 腰を下げようにも、ベッドがあって逃げ場がない。

 体をひねろうにも、睡蓮さんの太ももが俺を挟んでいて、身動きが取れない。


 どこを見ても——睡蓮さんだ。


 (起きてくれ。頼むから起きてくれ——いや、起きたらもっとまずい!)


 睡蓮さんが起きたら、俺の「状態」に気づいてしまう。

 でも、このまま寝ていても、動くたびに——


「んん……」


 睡蓮さんが、身じろぎした。


 体が——擦れる。


 睡蓮さんのお腹が、俺の「そこ」の上を滑った。


 (——っっっ!!!)


 俺は全力で声を押し殺した。


 刺激が——やばい。

 このままだと——


 (駄目だ。駄目だ。駄目だ)


 (俺は石だ。岩だ。何も感じない鋼鉄だ)


 円周率——3.14159265358979——


 でも、睡蓮さんのお腹の感触が、俺の「そこ」に——


 (考えるな! 感じるな!)


「……翔真?」


 睡蓮さんが、目を開けた。


「あ、起きられました? おはようございます」


 俺は、必死で平静を装った。


 内心は——パニックだ。


 今、睡蓮さんが腰を動かしたら、完全にアウト。


「……なんで私、こんな体勢なの」


「俺が聞きたいです——あ、ちょっと待ってください、動かないで!」


「え? なんで?」


「い、いいからです!」


 睡蓮さんが不思議そうな顔をする。


「変なの。じゃあ、私が降りるから——」


「待って! 待ってください!」


 俺は必死で睡蓮さんの腰を押さえた。


 このまま降りられたら——俺の「状態」が丸見えになる。


「……なんか怪しい」


「怪しくないです」


「じゃあ、なんで私を押さえてるの?」


「それは——その——」


 睡蓮さんが、俺の顔を覗き込んだ。


「顔、真っ赤よ? なんかあった?」


「なんもないです!」


「嘘」


 睡蓮さんが、ニヤリと笑った。


「もしかして——」


「違います! 何も違います!」


「何が違うの? 私、まだ何も言ってないけど」


 ——しまった。


 墓穴を掘った。


 睡蓮さんが、体を起こそうとした。


 俺の腰の上で——


「ま、待って! お願いだから動かないで!」


「ふうん。やっぱり何かあるのね」


 睡蓮さんが、意地悪そうに笑った。


「何を隠してるの? 正直に言いなさい」


「な、何も隠してません!」


「嘘つき」


 睡蓮さんが、わざと腰を動かした。


 俺の「そこ」の上で——


「——っっっ!!!」


 俺は声にならない叫びを上げた。


 睡蓮さんの顔が——固まった。


「……え」


「……」


「今……何か……」


「な、何もないです! 何もないですから!」


 俺は必死で否定した。


 睡蓮さんの顔が、みるみる赤くなっていく。


「……その」


「はい」


「……朝だから、とか?」


「……そうです」


 言い訳にならない言い訳をした。


 睡蓮さんが、慌てて俺の上から降りた。


 その瞬間——俺の「状態」が、パジャマ越しに——


 睡蓮さんは、それを見てしまった。


「——っ!!」


 睡蓮さんの顔が、耳まで真っ赤になった。


「わ、私、見てないから! 見てないからね!!」


「は、はい! 何もなかったです!」


「う、うん! 何もなかった!」


 二人して必死に否定した。


 でも——見られてしまった。


 完全に、見られてしまった。


 俺は布団を引き寄せて、「それ」を隠した。


 睡蓮さんは、顔を真っ赤にしたまま、視線を逸らしている。


「……ごめんなさい」


「い、いえ、俺の方こそ——」


「朝だから、仕方ないわよね……」


「……はい」


 気まずい沈黙が流れた。


 その沈黙を破ったのは——


 睡蓮さんだった。


「あ、そうだ。肩紐——」


 睡蓮さんが、自分の状況を確認する。


 馬乗り状態。ずれた肩紐。胸元が——


「きゃっ!」


 睡蓮さんが、慌てて肩紐を直した。


「み、見た!?」


「見てません」


「嘘! 絶対見た!」


「見てません!」


 本当は——ちょっと見た。


 いや、ちょっとじゃない。

 だいぶ見た。


 睡蓮さんの胸の膨らみが、あらわになっていた。

 白い肌。形のいい曲線。その先端の薄桃色の——


 (見てない。見てない。見てない)


 心の中で必死に否定する。


 でも、言えるわけがない。


「もう……信じられない」


 睡蓮さんが、頬を膨らませた。


 でも——どこか嬉しそうにも見えた。


 気のせいだと思いたい。


---


 朝食の時間。


 睡蓮さんは、まだ少し機嫌が悪そうだった。


「コーヒー」


「はい」


「トースト」


「はい」


「バター、多めに」


「はい」


 俺は、黙々と睡蓮さんの要求に応えた。


「ねえ」


「はい」


「さっきの——本当に見てないの?」


「見てません」


「……少しも?」


 睡蓮さんが、上目遣いで俺を見た。


 ——可愛い。


 いや、違う。そんなことを考えてはいけない。


「少しも見てません」


「ふうん」


 睡蓮さんが、コーヒーを飲んだ。


「つまんないの」


 ——え?


 今、なんて言った?


「睡蓮さん?」


「なんでもないわ」


 睡蓮さんは、そっぽを向いた。


 俺には——わからなかった。

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