7話:寝言で「好き」って言われました
三日目の夜。
今夜もまた、睡蓮さんの部屋を訪れる。
ドアをノックすると、中から返事があった。
「入りなさい」
俺はドアを開けた。
今夜の睡蓮さんは——薄紫のシルクパジャマだった。
サテン生地が、体のラインに沿っている。
胸元が少し開いていて、鎖骨から下が見えそうで見えない。
いや、谷間が——少しだけ、見えている。
パジャマのボタンが、胸の部分だけ少し張っている。
その膨らみの大きさを、否が応でも意識させられる。
(また、新しいパジャマ……)
睡蓮さんは、毎晩違う服を着てくる。
試されているのか。
それとも——からかわれているのか。
「早く来なさい」
俺は、ベッドに向かった。
「ねえ、翔真」
ベッドに横になった睡蓮さんが、俺を見た。
「はい」
「今日は、抱きついていい?」
「……は?」
「昨日、寝てる間にあなたに抱きついてたみたいなの。朝起きたら、すごく体調が良くて」
睡蓮さんが、少し頬を赤らめた。
「だから、今日は最初から——」
「いえ、それは——」
「何か問題があるの? まさか、逆らうの?」
問題しかない。
昨夜、睡蓮さんの胸が俺の腕に押し付けられて、俺がどれだけ苦しんだか。
そんなこと、言えるわけがない。
「……問題、ありません」
「そう。あと——」
睡蓮さんが、俺の目をまっすぐ見た。
「まさかとは思うけど、興奮とか、してないわよね?」
(!?)
心臓が止まりかけた。
「し、してません!」
「本当に?」
「本当です!」
嘘だ。
昨日の夜、どれだけ苦しんだか。
「ふうん。ならいいわ」
睡蓮さんが、俺に抱きついてきた。
腕を回される。足を絡められる。
そして——
胸が、直接俺の胸に押し付けられた。
柔らかい。
昨日以上に、柔らかい。
睡蓮さんの体温が、全身に伝わってくる。
シャンプーの香りが、鼻をくすぐる。
艶やかな黒髪が、俺の頬に触れている。
(……っ)
俺は、石になった。
動くな。考えるな。感じるな。
俺は石だ。岩だ。何も感じない鋼鉄だ。
「おやすみ」
睡蓮さんが、耳元で囁いた。
甘い声。温かい吐息。
——死ぬ。
俺は確信した。このままでは、俺は死ぬ。
四日目の夜。
睡蓮さんの攻撃は、さらにエスカレートした。
「今日はこれにしたわ」
睡蓮さんが着ていたのは——キャミソールとショートパンツ。
今まで以上に、肌の露出が多い。
肩が丸出し。細い腕。華奢な鎖骨。
キャミソールの胸元が大きく開いていて、谷間がはっきりと見える。
そして、おへそ。引き締まったお腹に、可愛いおへそがのぞいている。
ショートパンツから伸びる脚。
太ももが、ほぼ全て見えている。
白くてすらりとした、形のいい太もも。
その付け根まで——見えそうで、見えない。
俺は視線の置き場に困った。
「どうしたの? 変な顔して」
「いえ——何でもありません」
「そう」
睡蓮さんが、ベッドに上がった。
四つん這いで近づいてくる。
キャミソールの胸元が、重力で垂れ下がる。
谷間が、さらに深くなる。
(見るな。見るな。見るな)
「今日も、お願いね」
そう言って、睡蓮さんは俺に抱きついてきた。
キャミソール越しに、睡蓮さんの体が伝わってくる。
昨日以上に——生々しい。
肌と肌が直接触れ合う部分が多い。
俺の腕に、睡蓮さんの裸の肩が当たる。
俺の脚に、睡蓮さんの裸の太ももが絡みつく。
そして——胸。
キャミソール一枚だけで、その下には何もない。
睡蓮さんの胸の形が、そのまま俺の体に押し付けられる。
柔らかい。
想像以上に、柔らかい。
(——っ!)
体が、正直に反応しようとする。
(駄目だ。駄目だ。駄目だ)
俺は必死で腰を引いた。
気づかれたら終わりだ。
肩の肌。腕の肌。足の肌。
どこもかしこも、柔らかくて、温かくて、滑らかで——
(考えるな!)
俺は必死で意識を逸らした。
明日の時間割。来週のテスト範囲。部活の予定。
——無駄だった。
睡蓮さんの体の感触が、全てを上書きしていく。
「……翔真」
睡蓮さんが、寝言で俺の名前を呼んだ。
心臓が跳ねる。
「すき……」
——え?
俺は、耳を疑った。
今、睡蓮さんは——
「んん……しょうま……」
睡蓮さんが、さらに俺に密着してきた。
キャミソールの下は、何もつけていないらしい。
胸の先端の——硬く尖った部分が、俺の胸に押し付けられる。
(——っ!!!)
俺の体が、正直に反応した。
(駄目だ。駄目だ。駄目だ!)
俺は必死で腰を引いた。
でも、睡蓮さんは眠ったまま追いかけてくる。
足を絡めて、俺を固定してくる。
睡蓮さんの太ももが、俺の腰に押し付けられる。
その柔らかさが、俺の「そこ」に触れそうになる。
(やばいやばいやばい!)
俺は必死で体をひねった。
このままでは——睡蓮さんの太ももに、俺の反応が触れてしまう。
気づかれたら、全てが終わる。
睡蓮さんは、そのまま眠り続けた。
俺は——眠れなかった。
(寝言だ。寝言に意味はない)
(睡蓮さんが俺を好きなわけがない)
(俺は使用人だ。子分だ。格下だ)
(そんな俺を、睡蓮さんが好きになるわけがない)
そう言い聞かせても——
心臓は、朝まで高鳴り続けた。
そして下半身は——もう限界だった。
俺は真夏の夜なのに汗だくになりながら、必死で耐え続けた。
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