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5話:抱きしめられて、理性が限界です

 二日目の夜。


 俺は再び、睡蓮さんの部屋を訪れた。


「遅い」


「すみません」


「早く来なさい」


 睡蓮さんが、ベッドを叩いた。


 今夜のネグリジェは——昨日とは違う。

 淡い水色の、レースがあしらわれたもの。

 肩紐が細くて、肌の露出が多い。

 胸元のレースが透けていて、下の肌がうっすらと見える。


 俺は視線を逸らして、ベッドに横になった。


「ねえ、翔真」


「はい」


「今日は、もっと近くに来なさい」


「昨日と同じ距離では——」


「もっと近くって言ってるの」


 俺は、さらに睡蓮さんに近づいた。


 もう、二人の間には十センチもない。


「手、繋いで」


「え?」


「手を繋いだ方が、よく眠れる気がするの」


 俺は——睡蓮さんの手を取った。


 小さくて、柔らかい手。

 温かい体温が伝わってくる。


 胸が——苦しい。


「ねえ、翔真」


「はい」


「まさかとは思うけど——興奮とか、してないわよね?」


 (!?)


 心臓が止まりかけた。


「し、してません」


「本当に?」


「本当です」


 嘘だ。

 今も、睡蓮さんの手の温もりで、胸が高鳴っている。


「ふうん。ならいいわ」


 睡蓮さんが目を閉じる。


 俺は、また眠れなかった。



 夜中の二時頃だったと思う。


 俺は浅い眠りの中にいた。

 ——というより、睡蓮さんの寝息を聞きながら、半分意識があった。


 突然、体が動けなくなった。


 何か——柔らかいものが、俺に圧し掛かっている。


 ゆっくり目を開けると——


 睡蓮さんが、俺に抱きついていた。


 (……は?)


 寝返りで、俺の方に転がってきたらしい。


 腕が俺の体を抱き締めている。

 足が俺の足に絡みついている。すべすべの、白い足。太ももの内側の柔らかさが、俺の足に密着している。

 そして——


 胸が。


 睡蓮さんの胸が、俺の腕に押し付けられている。


 柔らかい。


 とても、柔らかい。


 想像をはるかに超えている。


 シルクのネグリジェ越しに、その胸の形が——潰れた曲線が、俺の腕に沈み込むように変形している。

 押しつぶされた部分の、しっとりとした重量感。

 ちょうど俺の腕を包み込むように、ふわりと触れている。


 (——っ!)


 俺の頭が真っ白になった。


 それだけじゃない。


 睡蓮さんの体温が、全身から伝わってくる。

 ネグリジェの隙間から、彼女の甘い香りが漂ってくる。

 枕の上に広がる黒髪が、俺の顔に触れてくすぐる。


 そして——ネグリジェの胸元が、ずれている。


 抱きしめる動作で身動きしたせいだろう。

 肩紐が片方の肩からずり落ちて、胸元が——


 谷間の奥まで、見えている。


 白い肌。ふっくらとした膨らみ。その境界線ぐらいまで——あと少しで「その先」が見えてしまいそうな、危うい角度。


 (まずい。これはまずい)


 (睡蓮さんの——胸が——)


 (柔らかい——じゃなくて!)


 (起きてくれ! 頼むから起きてくれ!)


 しかし、睡蓮さんは起きない。


 それどころか——


 「んん……」


 寝言と共に、さらに強く抱きついてきた。


 胸の感触が、より鮮明になる。


 押しつぶされた乳房が、俺の腕に沈み込む。

 その柔らかさと弾力が、直に伝わってくる。


 睡蓮さんの足が、俺の腕と足の間に入り込んでくる。

 柔らかい太ももが、俺の体を挟み付ける。


 そして——睡蓮さんの内太ももが、俺の太ももに触れる。


 (——っ!!)


 俺は——パニックだった。


 (落ち着け。落ち着け。落ち着け)


 (これは事故だ。睡蓮さんは寝ている。俺は何も悪くない)


 (でも——)


 (このままじゃ——)


 体が、正直に反応しようとしている。


 いや——もう、反応してしまっている。


 下半身が——熱い。

 ズボンの中で、どうしようもない変化が起きている。


 (まずい。まずいまずいまずい!)


 睡蓮さんの太ももが、俺の腰に近づいてくる。

 このままだと——触れてしまう。

 俺の「反応」が、睡蓮さんの体に当たってしまう。


 (気づかれたら終わりだ!)


 俺は必死で姿勢を変えた。

 腰を引いて、睡蓮さんから少しでも離れる。


 しかし——


「んん……」


 睡蓮さんが、追いかけてくる。


 またもや、柔らかい太ももが俺の腰に迫ってくる。


 (や、やばい!)


 俺はさらに腰を引いた。


 睡蓮さんが追ってくる。


 俺が引く。睡蓮さんが追う。

 ベッドの端まで追い詰められる。


 (もう逃げ場がない!)


 睡蓮さんの足が、俺の腰に絡みついてきた。


 柔らかい太ももが——俺の下腹部に触れそうになる。


 (——っ!!!)


 俺は全力で体をひねった。


 うつ伏せになって、下半身を隠す。


 何とか、睡蓮さんの体に「それ」が触れるのを防いだ。


 でも——


 睡蓮さんは、俺の背中に抱きついてきた。


 胸が、背中に押し付けられる。

 柔らかさが背中全体に広がる。


 (背中でも——感じる——)


 そして、睡蓮さんの手が——俺のお腹に回ってきた。


 その手が——下に——


 (止まれ! 頼むから止まってくれ!)


 睡蓮さんの手は、俺のへその辺りで止まった。


 ——ギリギリセーフ。


 あと五センチ下に手が伸びていたら、完全にアウトだった。


 俺は冷や汗をかきながら、身動きできずにいた。


 天国と地獄が、ここにはある。


 睡蓮さんの柔らかい体に包まれる天国と、

 欲情を押し殺さなければならない地獄。


 胸の感触。太ももの感触。体温。香り。


 全てが、俺の理性を削り取っていく。


 俺は、必死で自分を押さえつけた。


 円周率を暗唱した。

 素数を数えた。

 英単語を思い出そうとした。


 それでも足りない。

 下半身の熱が、収まらない。


 九九を逆から唱え、源氏物語の登場人物を思い出し、周期表の全元素を暗唱し、投げやりになって世界の国名をアルファベット順に数えた。


 そして——氷を思い浮かべた。

 南極の氷。北極の氷。冷凍庫の氷。


 それでも——駄目だった。


 睡蓮さんの体温が、背中から全身に広がっていく。

 俺の下半身は、一晩中、暴発寸前だった。


 ——三時間後。


 朝日が差し込む頃、ようやく睡蓮さんが離れてくれた。


 俺は、もうボロボロだった。

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