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分岐点にて  作者: 星野☆明美、chatGPT
7/21

6

千鳥は、足がすくむのを無理やり押さえ込んだ。

逃げろ、と言われた。

それでも――逃げられなかった。


「……置いていけない」


自分の声が、思ったよりはっきり聞こえた。

千鳥は一歩、優也に近づく。


「馬鹿……」


優也は苦しそうに笑った。

その笑い方が、あまりにも“いつもの優也”で、胸が痛くなる。


「来るなって……言っただろ……」


「言われても無理だよ」


千鳥は優也の身体を支えた。

温かい。

まだ、生きている。


その瞬間、背後の気配が濃くなる。

人混みのざわめきが、完全に遠のいた。


影は、もう隠れていなかった。

堂々と、こちらに向かって歩いてくる。


顔は見えない。

なのに、わかる。

この人は――迷っていない。


(この人、ためらいがない)


殺意という言葉より、もっと冷たいもの。

目的だけで動いている視線。


優也が、千鳥の腕をぎゅっと掴む。


「……いいか……」


息が、かすれる。


「俺がどうなっても……

 お前は……生きろ……」


「やめて」


千鳥の喉が震えた。


「そういうこと言わないで。

 一緒に……」


影が、手を上げる。


その瞬間――

千鳥の胸の奥で、あの光が確かに脈打った。


でも。


(まだ……飛ばない)


千鳥は、優也を抱き寄せる。


逃げない。

見捨てない。

この世界を、選ぶ。


空気が、きしむ。

時間が、引き伸ばされる。


影の足音が、止まった。


まるで世界そのものが、

千鳥の選択を――待っているかのように。


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