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分岐点にて  作者: 星野☆明美、chatGPT
19/21

18

中谷の手に、黒い銃が現れた。


ためらいはなかった。

狙いは、最初からひとつだけ。


千鳥。


「……終わりだ」


引き金にかけられた指が、わずかに沈む。


「千鳥!」


叫んだのは、研究所から来た優也だった。


「中谷、やめろ! 撃つな!」


その声に、千鳥は一瞬だけ振り返った。

血に染まったあの時と、同じ目をしている。


――大丈夫ですか?


あの声が、胸の奥で重なる。


銃声が、響いた。


火花が散り、乾いた音が世界を裂く。


千鳥は、目を閉じなかった。

逃げなかった。

跳ばなかった。


弾丸は、すぐそこまで来て――


止まった。


空気の中で、歪んだまま。


「……なに?」


中谷が、目を見開く。


世界は揺れなかった。

千鳥の足元も、現実に縫い止められたままだった。


「転移しない……?」


その瞬間だった。


「確保!」


複数の声が重なり、空間が開く。

係官たちが一斉に現れ、千鳥の前に壁を作った。


「千鳥、下がれ!」


係官の優也が、腕を伸ばす。

その手が、確かに千鳥を引き寄せた。


同時に、中谷の背後から拘束具が打ち込まれる。


「くっ……!」


銃が床に落ち、乾いた音を立てた。


「なぜだ……」

中谷は、信じられないものを見るように千鳥を見た。

「なぜ、跳ばなかった……!」


千鳥は、係官たちに守られながら、静かに答えた。


「……危険にさらされたのは、私だけじゃなかったから」


研究所の優也が、息を詰めたまま立っている。

その手は、まだ震えていた。


中谷は、最後に一度だけ、千鳥を見た。


憎しみとも、後悔ともつかない表情で。


「……そうか」


その呟きは、拘束音にかき消された。


こうして、

分岐点は、閉じられた。

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