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作戦会議
研究所から転移を繰り返している優也が、
次に現れる世界線の座標が特定された。
「中谷に先を越される前に、接触する必要がある」
黒い男が、淡々と告げる。
「直接会って、打ち合わせをしたほうがいいだろう」
その言葉に、係官の優也は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐにうなずいた。
「……了解しました」
千鳥もまた、覚悟を決める。
二人は同時に、くだんの世界線へ跳んだ。
⸻
視界が定まる。
次の瞬間。
「わあ……!」
驚いた声が上がった。
「僕がいる! それに……千鳥も」
転移したばかりの優也は、目を白黒させて立ち尽くしている。
研究所にいた世界線の優也だ。
――あの時、血まみれで私を突き飛ばした人。
千鳥は、そう確信した。
係官の優也は一歩前に出て、冷静に言った。
「僕は係官だから、中谷に警戒されている。
だが――君なら、囮として申し分ない」
その言葉を聞いて、もう一人の優也は一瞬だけ黙り込む。
「……囮か」
苦笑に近い表情。
「いずれにしろ、決着はつけないとな」
その覚悟に、千鳥は静かにうなずいた。
「ええ。優也」
そう言って、
千鳥は、ほんの少しだけ微笑んだ。




