私はそこに、色を塗った
掲載日:2025/12/05
空を漂う雲は、突如として人々に襲い掛かった。
触手のように細く伸ばし、
大地の人間をめがけて降り注ぐ雲。
貫かれた人間は、一瞬のうちに絶命した。
窒息と圧殺。
その威力は建物すら貫通した。
逃げ惑う人々。
容赦なく突き刺す雲。
まるで白い槍が空から降り注ぐような、
絶望的風景が広がっていた。
さらに雲は姿形を変え、人々を食べた。
龍や虎、鯨や象となった雲は大地を暴れ回った。
白い化物は人間を次々に駆逐していく。
厳重なシェルターに逃げ込んでも無駄だった。
少しの隙間さえあれば、そこにやってきた。
やがて雲は、大地を覆い尽くし、
”大人”だけを選ぶように消し去ると、
静かにその姿を変えた。
丸い頭、二本の手足、直立二足歩行の白い知的生命体。
決して人ではない。
人に似た何か。
誰も見ていないはずの大地で、
それらはふわふわと闊歩した。
私はそこに、色を塗った。
世界が再び、繁栄していくように。
ちゃんとそれが、人間に見えるように。
これが人間だと、子どもたちが信じるように。




