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雅仁の四十九日を終え、友美は前を向いて生きようと決意する。アルバイト先からの帰宅途中、車越しに
「あ、友美ちゃん!」
と声をかけられた。車には沙織と沙織のお母さんと咲空が乗っている。家まで送ってくれるとのことなので、お言葉に甘えた。
家に着いた頃、沙織のお母さんのパート先がアパレルショップであることもあり、3人分のキャラクターの着ぐるみパジャマーー社割で買ったというーーとお菓子とジュースが入った袋を渡される。
「良いんですか? ありがとうございます」
友美が言うと、沙織のお母さんは
「友美ちゃん、おじいちゃん亡くなって1人暮らしになったって沙織から聞いたの。それで3人でパジャマパーティーしたらって言ったらみんな話に乗ってくれて」
と返す。サプライズでパジャマパーティーをしようという話になったそうで、友美は驚いた。けれど松下家は1人では暮らすには広すぎるし、3人娘でいた方が楽しくなりそうな気がする。そこで3人娘は松下家でパジャマパーティーをすることになった。これは2人なりの友美への気遣いでもあったのだ。
松下家で3人娘によるパジャマパーティーが行われる。沙織はくま、咲空はねこ、友美はうさぎの着ぐるみパジャマを選んだ。お菓子を食べたりジュースを飲んだりして、写真もたくさん撮る。恋愛話になった頃、沙織から彼氏ができたと報告があった。実は4月から付き合っていたそうだけれど、友美が雅仁のことで落ち込んでいるのを察してくれ、今になっての報告となる。沙織本人は報告が遅くなったことを詫びていた。2人で相手がどんなひとかと沙織に訊く。
「実は、隣のクラスだった川又くんなの。バイト先にお客さんとして来てくれたことで再会して、仲良くなって付き合い始めたんだ」
と沙織は答えてくれた。川又聖真は3人娘の隣のクラスにいた男子生徒で、今は理学部に通う大学2年生だ。聖真が沙織のアルバイト先であるカフェにお客さんとして来店し、そこで再会したのがきっかけだそう。付き合って2ヶ月記念日になる来月に、何かお揃いのものを買おうという話もしているという。聖真は高校時代は眼鏡をかけていたけれど、大学生になってからコンタクトに変えてだいぶ垢抜けた雰囲気になっていたらしい。「彼氏か、いいな」と友美は考えていたけれど、授業とアルバイトが忙しいのと女友達といた方が楽しいのもあり、別に今すぐ彼氏がほしいというわけではなかった。