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ノニサクハナ  作者: 遠藤 敦子
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7

「あ、もしもし友美? おじいちゃんが……スーパーで倒れたって……」

 アルバイトからの帰り道、友美の元に母親の瑞樹から電話がかかってくる。

「えっ、嘘……。いまどこ? 病院?」

 友美は瑞樹に状況を聞き、雅仁がいる病院名を教えてもらった。すぐにタクシーを拾い現地に向かう。病院に着き、窓口で

「すみません……。松下雅仁の孫です。病室どこですか……?」

 と雅仁の病室がどこか訊く。そして一目散に雅仁がいる病室に向かった。

 友美が病室に到着した頃、雅仁はすでに亡くなったという。心筋梗塞で、突然死だった。87歳なので長生きした方だったのだ。正直と瑞樹と真凛は先に着いていたけれど、雅仁は友美が来る少し前に亡くなった。今にも起きてきそうな様子だけれど、雅仁の頬に触れると冷たかった。友美は雅仁が本当に亡くなってしまったのだと実感する。きっと夏子の後を追ったのだろうと友美は考えた。夏子と雅仁は近所でも「松下さんとこのおじいちゃんとおばあちゃんっていまもおしどり夫婦よね」と言われるほど、仲が良かったからだ。

「おじいちゃん亡くなっちゃった……。お姉ちゃん、私もう、おじいちゃんのいない日なんて考えられなくて……。これからどうしたら良いかわからないよ……」

 真凛はひどく取り乱して号泣している。友美はそっと真凛を腕で包み込んだ。一緒に暮らしていたのに異変に気づけなかったことや、早く駆けつけてあげられなかったことが悔しく、友美も真凛と一緒に泣いた。友美が幼稚園に入った頃に手を繋いで歩いてくれたり雪の日も幼稚園に迎えにきてくれたりした雅仁の姿を、友美は今でも大事に覚えていたのだ。

 松下家は悲しみに包まれている。それからは雅仁の通夜、葬儀が営まれた。友美は今は余計なことを考えず、この流れにのっていようと思う。コンビニでのアルバイトはお休みをもらい、戻ってからまた懸命に働くつもりでいた。

 雅仁の葬儀が終わるまでは実家にいたけれど、葬儀が終わってからは雅仁と暮らしていた家に戻る。広い家に1人取り残されたような気分になり、友美は1人で部屋で号泣した。今まで家族の前だから我慢していた糸が切れてしまったのだ。私もそっちに行きたいと、友美は考えてしまった。けれど沙織や咲空、家族、中塚さんやメイちゃんが悲しむようなことはできないと考え、友美は考えを思い留まる。



 友美はコンビニのアルバイトに復帰した。それから大学2年生になり、授業で忙しくしていると雅仁のことを考えずに済んだ。

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