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日曜日の夕方に3人娘で集まり、ファミリーレストランで夜ご飯を食べる。雅仁には作り置きして冷凍したシチューを残して、「シチューが冷凍庫にあります。レンジで温めて食べてね。友美」と書いたメモもテーブルに置いてきた。
「あのキモいフリーターバンドマン、逮捕されてバイトクビになってた」
友美が山田の逮捕を報告する。沙織が
「山田とかいうセクハラ野郎だよね?」
と言い、咲空は
「逮捕されたってなんで? お客さんに痴漢したとか?」
と訊く。
「それが女子トイレに小型カメラ設置したんだって。トイレ使ってたお客さんの様子が写ってたらしいの。そいつがいなくなったおかげで店は平和になったけど、被害に遭ったお客さんがかわいそうで……」
詳細を説明する友美に、2人はやはり
「えっ、じゃあ盗撮してたってこと? キモっ」
「性犯罪者じゃん。サイテーだわ」
と呆れ返っている。話の内容が内容なので、3人を見るお客さんもいたほどだ。
「あっ、そうそう。来月友美誕生日じゃん? 誕生日会しよう」
咲空の提案に沙織が前向きな反応をする。友美本人はもはや自身の3月12日という誕生日について忘れかけていた。コンビニでのアルバイトと山田の件で疲れもあったからだ。
「いいよいいよ、気を遣わせたら悪いし」
と言う友美に、2人は
「何言ってるの、主役は友美なんだからさ。それにセクハラ山田もいなくなってお店に平和がやってきたお祝いってことで」
と返す。平和がやってきたお祝いという言葉に友美も笑っていた。
*
3月12日の誕生日当日に、友美は咲空と沙織からレストランで誕生日を祝ってもらう。咲空からはデパートで売られているブランドのコスメをもらい、沙織からは有名ブランドのルームウェアをプレゼントされた。最後にデザートプレートが出てきたけれど、そこには3人分のチョコレートケーキといちご・オレンジ・キウイ・メロンなどのスイーツが乗っている。“Happy Birthday Tomomi!”とチョコペンでメッセージも書かれており、友美は感極まってしまう。涙が出そうなほど嬉しかったのだ。最後にスタッフさんから3人での集合写真を撮ってもらい、3人娘はそれぞれ帰路に着く準備を始めた。
あれから1週間が経ち、相変わらずコンビニは平和だ。新しく入ってきた中国人留学生のメイちゃんは1歳上だけれど、仲良くなるのに時間はかからなかった。男性スタッフも何人か入ってきて、パートさんたちに可愛がられている。この平和がずっと続けばいいのにと友美は考えた。