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ノニサクハナ  作者: 遠藤 敦子
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 松下(まつした)友美(ともみ)は高校進学を機に、84歳の祖父の雅仁(まさひと)と82歳の祖母の夏子(なつこ)の家に居候することになった。別に家族仲が悪いからではなく、祖父母の家の方がより学校に近いからだ。父親の正直(まさなお)と母親の瑞樹(みずき)、3歳年下の妹の真凛(まりん)とは離れて暮らしていたけれど、週末のどちらかは必ず会うようにしていた。

 高校では香坂(こうさか)沙織(さおり)清家(せいけ)咲空(さら)と3人でいることが多く、周りからは「3人娘」と言われるようになる。祖母の夏子はもともと体調が良くなかったのもあり、友美が高校2年生の時に亡くなってしまった。それからは祖父の雅仁と2人暮らしになり、つとめて自分だけは気丈でいようとする。何度か精神的に限界になったこともあるけれど、その都度2人に支えてもらっていたのだ。

 友美が祖父と暮らしていることを知った他のクラスの男子生徒に、笑いながら

「松下ってじいさんと2人で暮らしてるんだろ? ワケアリ家庭か? それとも介護要員? お気の毒に」

 と言われたこともある。彼は友美をからかっているのだ。友美は彼に

「ワケアリとか別にそんなのじゃないから。人ん家の事情に首を突っ込む方がどうかしてると思うけど」

 とその場で言い返し、それ以降は彼が友美に絡んでくることはなくなった。しかし家族をバカにされたことや松下家の事情についてとやかく言われたことに悔しさが募り、友美は2人の前で涙を流してしまう。

「おばあちゃん亡くなって、私がいまどんな気持ちでいるかなんて知らないくせに……。なんで何にも知らないやつにあんなこと言われなきゃいけないの?」

 友美が泣きながら愚痴をこぼすと、沙織と咲空は

「あんな子どもみたいやつの言うことなんて、真に受けなくていいよ」

 と励ましてくれた。咲空が人生で初めての恋人だった今村(いまむら)(いつき)と些細な喧嘩で別れてしまった時も、沙織が部活で好成績を残せなくて悔しい思いをした時も、3人娘は支え合っていたのだ。



 高校を卒業し、友美は英語教師になるため大学に進学する。大学の授業が忙しく、なかなかアルバイトをする時間を確保するのが最初は難しかった。しかし大学1年生の1月に時間に余裕ができたこともあり、友美はコンビニでアルバイトを始める。高校ではアルバイト禁止だったので、このコンビニでのアルバイトが友美にとって人生で初めてのアルバイトだった。


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