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ヤンデレ後輩がつよすぎる!!!  作者: 五月屋もみじ
1章 黒き太陽は屍人を呪う
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5、美少女騎士とか萌えるよね

「美少女騎士……だと?」

「美少女とは言ってないし騎士なのかわかんないですよ」

「いや、美少女騎士だ。俺にはわかる」

「美少女なんかじゃ……」


 ノアは納得していないようだが、それは彼女が鍛錬に夢中でラノベを読まないからだ。剣を持った女の子であればもうそれは確定で騎士。しかも美少女。メインシナリオが進む予感がする。


「よし行くぞ!」

「え!? 危ないですよ!?」

「シナリオ進行だ、俺たちも首を突っ込むぞ!」


 不思議そうなノアの手を引いて外へ出た。


「で、どこにいたんだ?」

「ふわわわわわっ……」

「おい、大丈夫か?」


 ノアが固まって動かなくなってしまった。目の前で手を振ってみても反応しない。軽く叩いてみてようやくこっちを向いてくれた。


「すっ、すみません!」


 ぎゅっと手に力を込められた。そのまま引きずられるように歩くと、こちらへ近づいてくる人影が見えてくる。


「あれか?」

「はい。まだ何もしてないですよ。仕掛けたトラップにも引っかからないので、まあまあ動ける人だと思います」

「あれに引っかからなかったのか?」


 山に侵入してくる輩から俺を守るためにノアが開発した殺人トラップ。

 相手の不幸を一切考えない無慈悲な攻撃をさばいてここまで来たとなれば、やはりメインキャラの可能性が高いだろう。


 ようやく人影の姿が見える距離まで近づいてきた。


「あれは……」


 その美しさに、俺は思わず息を呑んだ。

 幻想的に空にたなびく、赤紫と藤色の艶やかなグラデーションの長髪。思わず惹きつけられてしまうような深い紫紺の瞳は、アメジストを思わせた。そしてすらりと伸びた四肢は光に反射して白く輝いている。さらには腰に携えた剣。


間違いない、絶対に美少女騎士だ!


「ノア、接近だ」

「わかりました。襲ってきた場合は?」

「傷を残す殴打、後遺症、内臓破裂、骨折、気絶、全部ダメだ。周りの環境破壊も禁止」

「ええ、なんにも出来ないじゃないですか」


 普通の人はもっと穏便な暴力行為を出来るんだと教えてやりたいが、二割の力で壁を粉砕するコイツに何を言っても無駄だろう。


「よし、行け!」


 言うが早いか、ノアは弾丸のように飛び出し彼女に迫った。だが向こうも多分手練れ。後退しながら剣を構える様子に怯えや緊張は見られない。ノアはファイティングポーズを取ったまま彼女と相対した。


「……貴方は誰ですか」

「こっちのセリフよ。貴方たちは何者なの?」


 その問いにノアは少し首を傾けた。


「……通りすがりの旅人、とでも言っておきましょうか」


 意味不明な回答に彼女は苛立ったようだ。鋭い視線をこちらに向ける。


「何が言いたいの? 魔物が生息する山で暮らすなんて、相当の実力者じゃなければとても無理だわ。でも、貴方たちはそう私と変わらない年に見える……もしかして魔術師? それともエルフの末裔?」


 その言葉に俺は人知れずワクワクした。そうか、魔法とエルフが存在してるのか。


「どちらも違うとだけ言っておきましょう。さあ、早くお帰りください」

「そうは出来ないわ。この山に生息する知性を持った怪物の目撃情報があるの。それを討伐するまで私は帰れない」


 貴方たちなんでしょう? と言いたげな視線をノアは無視した。多分なんのことかわからなかったんだろう。


「貴方の事情はわかりませんが、こちらもここを出る訳にはいきません。どうかお引き取りください」

「そう。平行線ね」


 スッと目が細められ、剣が振りかぶられた。ノアは数歩後ろに下がって避ける。


「これを避けるの? なかなか動けるのね」

「まあ、それなりには」


 ノアは化け物パワーを隠し通すつもりのようだ。


「じゃあこれならどうかしら」


 俺ならなすすべなく斬られるであろう一閃を、ノアはジャンプして避けた。その勢いで近くの木を殴り倒して攻撃する。全然隠せてないな。


「はっ!? 木を殴って……?」

「わかるよ、その気持ち」


 コイツはなんというかその、暴力行為の基準が違うんだ。許してくれ。


「何それ、もしかして魔法?」

「魔法、ワクワクする響きだけど違います!」


 ノアは彼女に肉薄すると素早く拳を振りかぶった。


「真剣・白刃割りっ!」

「っ!?」


 瞬間、剣が弾けた。


「剣を素手で割るなんて、どうなってるの?」

「側面から叩けば大体問題ないですよ」


 そんなことはねぇよ。

 しかし今の一撃は相当相手に衝撃を与えたようだった。顔が真っ青の彼女は、意を決したように手を広げた。


「一撃で決めるわ。ーー月華炎劇、キツネユリ!」


 その手から花を象った美しい炎の攻撃が繰り出され……なかった。寸前で彼女は意識を失い、辺りには火の粉だけが残った。思わずノアを見るとめちゃくちゃ首を横に振られた。


「ーーこれ、どうするんです?」

「これって言うな。連れて帰る」

「えー」


 ノアは面倒くさそうに彼女を俵担ぎにして走っていった。


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