いろんな人たち
連邦軍に乗り込まれてからの海賊艦は、あっけなく陥落した。
キャプテンを含む乗組員21人は、派手なメーキャップでヘビーな衣装を身につけてはいたが、抵抗らしい抵抗をするわけでもなく、むしろ逸美が連邦軍の銃撃から守ってやらなければそのまま殺されてしまいそうなひ弱な感じの人たちだった。
ジライド率いるエスパー隊は、連邦軍の兵士に加勢するというより、海賊たちが死なないでちゃんと逮捕されるように活動することになった。
「これで、いいんだろ?」
そう言うジライドに、逸美は満面の笑みで応えた。
捕縛された後のキャプテン・シャーロックは、あの挑発的な放送をしていた人物と同じ人物とは思えないほど弱々しく、無言で視線を落とし、うなだれたまま連行されていった。
他の「海賊」たちも、同じような感じだった。撃たれた瞬間に逸美がバリアを張って守ったのを認識していた「海賊」の1人は、通り過ぎる時に、ぺこっ、と小さくお辞儀をしていった。
何なんだろう? この人たち・・・。
海賊という言葉から連想されるような、肉体的、精神的強さが全く感じられない。
「刑罰より、カウンセリングが必要かもね。あの人たち。」
不思議そうな顔をしている逸美に、クメリアが苦笑いしながら独り言みたいな言い方で言った。
「他に自己表現の仕方を見つけられなかったんじゃないかな。」
第7分隊戦闘艦のジョダス・ダイ・ガパラ・キング艦長は、見るからに尊大な人物だった。
若いジライドをあからさまに見下したようにふんぞり返った態度で、しかし言葉だけは丁寧に挨拶をした。
「ラン・チェン殿、応援に感謝いたします。船外での戦闘はさすがに選りすぐりのエスパー部隊だけのことはありましたな。もっとも、船内戦闘はお得意ではないようで・・・。なんだか我々の足を引っ張っているようにも見えましたな。」
見下ろすような視線で、皮肉を混ぜてきた。
ジライドがムッとした表情を見せたが、クメリアがすかさずフォローに入った。
「全員を生きたまま捕らえて、捜査が進展するようお手伝いさせていただきました。第7分隊の皆さんの戦闘力が圧倒的に優っていると判断しましたので。」
「おかげさまで、おっしゃるように見事な戦果をあげられました。お心遣い、感謝いたします。」
合わせるように副艦長のサヴァン・ナム・キリ・アードが援護フォローをすると、ガパラ・キング艦長もやや納得したような顔になった。
キリ・アード副艦長は、思った以上に若い。その冷静沈着な指揮ぶりから、ジライドは20代後半かとばかり思っていたが、見かけからすると、ひょっとしたらまだ20歳前なのではないか?
「そちらの紅い髪のお嬢さんが、噂のハス・ワタリ1等士ですか? あの巨大バリアはあなたが?」
キリ・アード副館長が逸美の方を見た。澄んだ鳶色の瞳をしている。
「あ、はい。」
逸美の頬に少し紅がさした。 声のやわらかい人だ——。
「すごい大きさでしたね。さすがだなぁ。」
帰りの船の中で、逸美はなぜかキリ・アード副艦長の声が耳から離れなかった。
包むような、やわらかい声の人だったな——。こんなふうに1人の人の印象に心がとらわれてしまうのは、初めての経験だった。
ひょっとして・・・、 恋?
子どもと大人の中間にいる逸美は、まだそこまでは意識していない。




