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イツミ外伝 ーオリジナルー  作者: Aju


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12/27

逸美のスキル

 その夜、マーズ支隊の宿舎に引き上げてから、逸美は質問攻めにあった。

「あの、ネスパタイトを防いだバリアが手品だって?」

「どうやってやったの?」

「弾丸だって、テレキネシスで取り出してただろ? あれは、テレキネシスじゃないのか?」

 デ・ユウラン隊長を含むアースエスパー隊の全員が逸美を取り囲んでいる。

「へへへ・・・」

 逸美は珍しく、得意そうな顔をした。こういう時、変にこまっしゃくれた謙遜をしないところも、逸美の人間的可愛げだった。

「中央エスパースクールの高等部で練習した技です。あれ、実は普通のバリアに色つけただけなんです。つまり、フェイクです。」

と、逸美はタネ明かしを始めた。

「で、バリアの少し前に、テレキネシスでこのくらいの範囲で弾丸の逆風になる突風を作るんです。」

 逸美が両手で80センチくらいの幅を示してみせる。

「なるほど、空気を動かすわけか!」

「はい。ネスパタイト弾は軽いから、それで速度を削げます。あとは、バリアに一番近いところに下向きの気流を作っておけば、弾丸はバラバラ下に落ちて、まるでバリアで防いだみたいに見えます。」

 おお! っと、一同にどよめきが上がった。


「でも・・・」と1人の若い隊員が質問する。

「別に、そんな手の込んだことをやらなくても、普通に弾丸の進路に逆風を作ればいいだけじゃないの?」

 たしかに・・・。そんなケレン味の強い演出をしなくても、普通に逆風だけ作ればネスパタイト弾は防ぐことができる。その方が合理的じゃないのか。

「バリアで防いだように見えた方が、相手もびっくりするでしょ? でもって、『これは敵わない』って戦う気力を失くしてくれると思うんです。」

 デ・ユウラン隊長が、逸美の話に補足解説を入れた。

「たしかに、それは言える。逆風を作るだけでは何をやってるかがすぐわかって、相手も真似するようになるだろうし、それに対応する新しい武器も作られるかもしれない。」


 ネスパタイト弾さえ通用しないエスパーがいる——という錯覚は、抑止力にもなるし、実際、今回の作戦では、イツミがそれをやってから敵は完全に戦意を喪失していた。

 デ・ユウラン隊長は、メリー・ベール支隊司令官から聞いたル・ハンナ校長の言葉を思い出した。

 勉強バカではない。賢い子よ。———


 もう一つの『手品』、傷口から弾丸を取り出すテレキネシス——についても、タネは同じだった。

 逸美は弾丸そのものを操ったのではなく、その周辺に付着した血液を操って弾丸を持ち上げただけだった。

 ただ、少し腑に落ちない部分もあった。通常、ESPは生体には作用しない。もし、他人の血液を好きなように操れるとしたら、心臓や血管を破裂させることも可能になるが、実際にはそんなことは起きない。

 生物の体には、様々な波動から生命システムを守る機能が備わっており、ESP波動についてもそれは同様だった。

 まだ生きている人間の血液を操って弾丸を取り出す、などということは、できることなのだろうか?


 これについては、デ・ユウラン隊長の依頼を受けて、SUN恒星系方面軍のESP研究所で逸美は検査を受けることになった。

 結論から言えば、、逸美は意識せずにテレキネシスとヒーリング能力を同時に使っていたことがわかった。


 先にESPは生体には作用しないと書いたが、例外がある。ヒーリングだ。

 治癒しようとする生体とESPの方向性が一致するので、防御機能が働かないのだ。要するに逸美は、ヒーリングの一環として外科手術をしただけだった。


「まあ、なんだな。テレキネシスとヒーラーがチームを組んで、そんな繊細で厄介なことをしなくても、軍医がその場で処置すれば済むだけの話だ。」

と、デ・ユウラン隊長は笑った。

「だが、バリアの『手品』の方は、抑止効果が大きい。これは練習して、うちの隊の専売特許にしよう。」


 しかし実際にやってみると、思ったより繊細なテレキネシス能力が必要で、逸美以外にまあまあ見れる『手品』にできたテレキネシスは2人だけだった。

「よくこんな難しいことできるなあ——。やっぱ、イツミは凄いねぇ。」

「えへへ・・・。」





 イツミを後詰めや遊撃隊に使う。

 このスタイルで、どうやらデ・ユウラン隊の能力バランスは最適化を果たしたようだった。

 その後、3回の出動でも、この隊は目覚ましいほどの戦果を上げた。


 アース支隊のエスパー部隊には、ネスパタイト弾が通用しないエスパーがいるらしい。それも3人もいるらしい。そんなウワサが、SUN恒星系周辺で囁かれた。

 1人は間違いなく、あの12歳で軍に入隊したという超エスパー、イツミ・スズ・ハス・ワタリだろう。だが、残りの2人は、いったい誰だ?


「へへへ・・・。みんな、それはバリアラーだと思ってるからな。」

 逸美の『手品』を、なんとかモノにしたテレキネシスのジライド・ラン・チェンが目配せしながら親指を立てた。

「しっかし、手品ってのは、できるようになってみるとタネ明かししてみたくてウズウズしちまうもんなんだな。」

「ダメですよ、ラン・チェンさん。タネバレしちゃったら、効果半減しちゃいますからね。」


 逸美は少しずつ『妹』から『仲間』になりつつあるようだった。



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