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最終話 幸福の中で眠る


「すみませんでした。ありがとうございました」


 リリアンナは部屋を出て、開口一番目にそれを言う。

 マリクさんはそんなリリアンナの真っ赤になった目元をじっと見ている。

 医者はそのリリアンナを見ながら、喋りだす。


「これからも尽力をして、エルベルトさんを……」


「その必要はないです」


 その、医者の言葉を遮る。

 医者はポカンと見ている。


「すみません。その必要は、無いです。夫は、このまま寝ていたいと。そう言っておりました。なので、寝かせておいて上げてください」


 リリアンナは一言もエルベルトが亡くなったということを言わなかった。

 が、医者は言外にそう言われたことに気付き、頭を下げる。


「……分かりました」


 リリアンナは、医者がそう残念そうに言うのを聞くと、感謝の言葉を伝え去る。


「夫のことについて尽力していただきありがとうございました」


 そうして、病院から出ると、会社ではなく、家に向った。


------------------------------------------------------------


 それから数十年後。

 リリアンナはあのあと授かっていた、一人息子に看取られていた。


「母さん、大丈夫?」


「大丈夫よ。ほら、私のことはいいから彼女のことを気にしてあげなさい」


 そう言って、自分の息子の伴侶となった女性を指す。


「あんたも老い先そんなに短くないが、大事にしな?」


 そう、リリアンナは83歳。

 その息子は60歳。


 互いに年だが、息子のがまだ生きれるし、なにより、自身の父親よりも長生きしてくれている。

 それだけが、心の支えだった。

 それに、自身は夫に先に逝かれ、一人しか産めなかったが、たくさん子を授かり、その息子たちもまた、たくさん子を授っているという。

 それだけで、うれしいことだった。


 そんな、自分の子や孫を眺めながら、ゆっくり、ゆっくり瞼を閉じる。

 そして、夢の中で再び、エルベルトと相見える。


「リリィ!!」


「エル!!」


「さぁ、一緒に行こう?」


「うん!!」


〜おしまい〜

お読みいただきありがとうございました。

逆境の騎士、Xmate2部は、しばらくかかりそうですが、お待ち下さい。

このあと、サラッとした設定集など出せればと思います。

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