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転生はいいから、裏設定を教えてくれません?  作者: 黒雲 優
第1章 転生したのは、小説の中!?
9/11

仲良くなりたい! Ⅲ

────そんなこんなで、数日が経っていった。


 その間、暇な時間があったら、パメラたちの目を盗んで、メイドに変装していた。その間、バレることがないのだから、自分が凄いのか、この国がダメダメすぎるのか……喜ぶべきなのか、心配した方がいいのか……もう分かんない。


 色々と片付いたら、メイドさんたちの食事のこととか、警備がザルすぎる件について、相談しよ。


「あ、ミシェリア?」


「はい」


「僕、しばらく忙しくなります。城を離れることもあるので、僕のこと待たないでくださいね」


 朝食で、唐突に告げられる会わない宣言。え?私、何かやっちゃいました!?


「そ、それはいつまで……」


「ミシェリアの誕生日を祝う宴が来月ですから、それまでは忙しいですね」


「あぁ、誕生日……。え!?誕生日!?」


 あ、私、貴族だったの忘れてた。あぁ、そうだったわ。貴族って誕生日に色んな貴族呼んでパーティするんだった。私が社交界嫌がったせいで、フォンガート公爵家では、家族だけで祝ってたから忘れてた。


 皇太子妃になって初めてのパーティ。ってことは、皇太子妃のお披露目も兼ねたパーティ。


 夫であるセディ様がいるから壁の花と化すことはないんだろうけど……パーティで踊らないってことはないよね。


 最近の妃教育は政治やら歴史やらばっかで、ダンスや所作の練習してねぇ。むしろそんな時間あったら、メイドに扮して働いてるのがほとんど……。ダンスの練習しなきゃ。セディ様に恥ずかしい所は見せたくない。


 相手が兄たちなら気兼ねなくあの足を踏んでやる。だが、セディ様……。この天使の御御(おみ)足を……?無理無理無理っ!そんな非道なこと!


「セオドリック様、お仕事がんばってください!私も、がんばります!」


「ん?うん?」






─────それから、政治やら歴史やらの勉強は少しお休みしてもらい、ダンスレッスンを受け始めた。子供の頃からダンスはやっているから、体が覚えてくれているけど、不安は消えない。


 セディ様の足を踏まないために、完璧に仕上げないと。


 そんな調子で、ダンスレッスンを受けていたが、逆にダンスだけにしてもらっているから自由時間が増えた。メイドに変装するのも、ダンスで疲れたから休むで事足りる。なんて、素晴らしい。


 セディ様と会えない時間が増えたことを除けば。


「はぁ……」


「な〜に?ため息なんかついちゃって。恋?恋なのかしら?」


 カミラさんのニヤニヤが止まりません。私の顔は、火を吹きそうよ。


「え〜、ミアちゃん、恋してんの?相手は?俺?」


「残念でした。お相手は、私の夫です」


「はっ!?結婚してるの!?」


「相手は!?」


 カミラさんもロイドさん、そんな驚きます?何ですか、結婚できなさそう〜ってことだったら、マジで傷つきますよ!?泣きますよ!?


「とっても、素敵な人ですよ」


「もっと具体的に!何やってる人?いくつ?てか、ミアがいくつ?」


「そんな気になりますかねぇ。私が16で、夫は2コ上です。職業は」


 職業……皇太子?言えねぇ。貴族ってだけでも、私がメイドなのおかしいし。皇太子ってバレたら、必然的に私が皇太子妃ミシェリアってバレる。えーっと、ここは。


「騎士です」


 剣を握っている姿を見た事は無いけれど、小説の内容いわくチートですよ!チート級に強いですよ!そこいらの騎士なんて、相手にならないくらい!


「騎士かぁ、かっこいいな!給料も安定していいし、いい男捕まえたな。……で、なんでため息?まさか、不倫されてるとか!?」


「そんな人じゃありませんから!!もぅ。お仕事で会えてないんです」


「ああ、そういう」


 いくらロイドさんでも、セディ様の悪口は許しませんよ?っと、睨んでやる。でも、所詮、私たちは親同士の決めた政略結婚。他に想う人が……とかあるのかな。


「ミアが選んだ人なら、きっといい人よ。いつか紹介してよね」


「ええ」


 そうよね、いつまでもこんなことしてちゃいけないだろうし。怒られるかもだけど、セディ様にも紹介したいな。私の、新しいお友達。


「で?カミラさんとロイドさんには、居ないんですか?いいひと!」


「居ないわね。まぁ、金があればなんでもいいわ」


 カミラさんは気づいていないようだけど、隣で何か決意を新たにされている方がいますよ?ふふふ、顔がニヤケちゃいそう。


「あ、そうだ。もうひとつ、聞いても?」


「何?」


「この国で、戦争になるとしたら、どんな理由だと思います?」


 そろそろ聞こうと思ってたけど、私直球過ぎたかな?おふたりとも、固まっちゃった。


「うーん、ミシェリア妃くらいしか思いつかないけど、戦争にまでなるかなぁ?」


「?」


「今ってほら、宰相殿を次の皇帝に推す声が大きいじゃない?」


 常識みたいに言ってますけどけど、何ですかその話。セディ様が次の皇帝ですよ?


「皇帝陛下は、是か非でもあの皇太子を皇帝にしたいから宰相殿の娘を皇太子妃にしたでしょ?でも、ミシェリア妃の一言で、宰相殿は皇族と戦争だろうとしちゃう方じゃない。殆どの貴族が宰相殿に付くでしょうから、戦争の可能性があるとしたら、その場合くらいじゃない?それ以外なら、あの皇太子がどうとでもするでしょうから、戦争にもならないわ」


「ま、実質、次期皇帝の決定権はミシェリア妃にあるからな。お貴族様たちはずっとミシェリア妃への謁見を申し出ているってよく聞くな。まぁ、会えてはいないらしいけど」


「でも、次のミシェリア妃の誕生日パーティ、ミシェリア妃が出てくるって話でしょ?結婚披露宴では下に降りてこなかったみたいだけど、今回はって、お貴族様たち息巻いてるらしいわよ」


 私が振った話題だけど、え?主人公たちとじゃなくて、お父様と戦争?というか、知らず知らずのうちに私、渦中の人になってません?


 謁見の申し込み。来てたなぁ。会ったこともない人からの手紙とか恐怖でしかないってことで、ずっと拒否ってたけど、会ったとしても口添えって…。セディ様と殺しあってって?する訳ないでしょ!?


「あの、なんでセオドリック様じゃなくて、公爵を皇帝に推すんですか?」


「ミア、あなた」


 ん?あれ、私おかしなこと言いました?


「あなた、よっぽどのド田舎から来たのね」


 ん?カミラさん!?……そ、そんな風に言われるレベルですか!?


「いい?こんな常識知らないなんて、問題なのよ?」




 そうして、カミラさんが語ってくれた話はあまりにも理解不能なものだった。私の知識とは真逆で、あまりにもバカバカしい内容だった。




「なるほど?感謝いたします、カミラさん、ロイドさん」

 私の誕生日パーティ。期待して待っててくださいね、貴族の皆々様。






─────起こされると直ぐに、風呂に入れられる。そしてメイクし、ドレスを着付けて貰う。さぁ、今日は私の誕生日。準備は万全ですだ。こちとらはらわた煮えくり返っているんですからね。


「さぁ、行きましょうか!」


 戦場へ!


 会場への入口の扉の前には、あの結婚式の日と同じように、セディ様の姿があった。


「っ!」

 目が合った。


 約1ヶ月ぶりのセディ様。今日も今日とてカッコイイ!!


 できるだけ急いでセディ様の元に向かう。ドレスを踏まないように、汗をかかないように。でも、セディ様を待たせることのないように。


「……」

 沈黙がいたたまれない。


「お待たせしました。……変、ですか?」


「いえ、えっと、とっても綺麗です」


 お世辞であっても褒められたら、舞い上がるような気持ちになる。本当に優しくて素敵な人。


「では、行きましょう。みんな待っています」


 差し出されたセディ様の腕を借り、会場へ進んだ。





 セディ様のエスコートで、会場内に足を踏み入れる。パーティの主役である以上、セディ様の恥とならぬよう、皇太子妃の役割を果たさないと。


「ミシェリア・ドウェイン・レンゼオールです。こんなにも多くの方が祝ってくださるなんて、光栄です。どうぞ皆様も、パーティを楽しんでください」


 ずっと練習してきたセリフが、静かな会場に響く。気品と威厳を持って、決して侮られないように。セディ様や家族に、護られるだけではない。


 挨拶が終わった途端、賓客の者たちが一斉に歓喜の声を上げる。


「素晴らしい挨拶でした」


「あ、ありがとうございます」


 セディ様にお褒めの言葉を頂き、ほっと胸を撫で下ろす。上手くできた。他の誰でもない、セディ様の言葉一つで全ての努力が報われた。


 挨拶が終わると、来賓との挨拶が始まる。


「この度はお誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます、お父様、お母様」


 両親から始まり、次々と祝福の言葉とプレゼントを貰う。ちなみに、兄様たちは、それぞれ恋人さんをパートナーとして連れて来ていた。


 とても緊張している様子で、こっちまでドキドキした。私との挨拶が終わったら、お父様たちと挨拶が控えているのだろう。ファイトです、未来もお姉様っ!!


「誕生日おめでとう、ミシェリア」

「ありがとうございます」


 そして、最後に皇帝陛下と皇妃様が祝福の言葉をくれた。さぁ、そろそろだ。


「誕生日プレゼントだが、本当にあんなもので良かったのか?」


「えぇ、ソレが良かったのです。見つけてくださいましたか?」


「あぁ、見つけたよ」


 誕生日プレゼントとして、皇帝陛下に頼んだもの。それは、一冊の本だった。


「さて、挨拶はこの辺にしようか。ファーストダンスをお願いできるかな?」


「ミシェリア、僕と踊ってくれませんか?」


 皇帝の言葉で、セディ様が立ち上がり、手を差し出してくれる。ダンスのお誘いだ。主役である私と、その夫であるセディ様が、2人きりだけで踊るのだ。


 会場中の人々全員の視線が集まる中、踊る!?うわぁ、注目の的だぁ。失敗しませんように!と祈りつつ。


「ええ、もちろんです」


 さぁ、練習の成果を発揮する時だ。


「足、踏んでも怒らないでくださいね?」


「いくらでもどうぞ」


「うっ、やっぱりなしです。後でちゃんと怒ってください」


 セディ様は優しすぎるから困る。ダンスが始まる。触れ合う手や腕が、熱を帯びる。


「もっと肩の力抜いて?」


「は、はいっ」


 肩の力を抜くと、セディ様がリードしてくれて、すごく踊りやすい。今までの練習相手をしてくれた先生、ごめんなさい。セディ様の方がめっちゃ上手です。


「皇帝陛下に何をお願いしていたんですか?」


「あぁ、建国神話ですよ」


「建国神話?」


「はい、探して頂いたんです。……セディ様と同じ、青い瞳の皇帝の話を」




───タンっ

 セディ様の上手なリードで、足を踏まずに踊りきった。


「お上手でしたよ」


「セディ様のおかげです。ありがとうございます」


 セディ様、少し元気がないな。


「この後は自由にダンスですよね?お兄様たちと踊る約束しているので、少し席を離れても大丈夫ですか?」


「えぇ、楽しんできて下さい」


「はい、全力で足を踏んづけてきます!」


「え……?」






─────次、3曲分、お父様とディアン兄様、ブラント兄様と踊った。お父様は許してあげたけど、兄様たちは全力で宣言通り、足踏み大会を開催してやった。


 私は踏みつけに行って、兄様は全力で避ける。という簡単なルール。


 兄様とのダンスは、毎度こんな感じだ。会場が賑やかでよかった。ヒールへし折れるんじゃないかっていう音が鳴っていることがバレないから。


「お前、全力過ぎないか?」


「素直に踏まれてはいかがです?」


 ディアン兄様は踏みづらいリードの仕方をしてくるし、ブラント兄様は体格いいのに素早いから避けられる。今日は一回も踏めなかった。


「とても素晴らしい踊りでした。踊り続けてお疲れではありませんか?少し飲みながら、お話しませんか?ミシェリア妃」

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