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転生はいいから、裏設定を教えてくれません?  作者: 黒雲 優
第1章 転生したのは、小説の中!?
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転生したのは、小説の中!? Ⅴ

「セオドリック様、敬語をやめてください」


「はい?」


 セオドリック様と一緒にいて、ずっと思っていたこと。なんで敬語?ディアン兄様にはタメ口だったり敬語だったり。おかしいじゃん!?


「セオドリック様は皇族ですよね!?私は、元々公爵令嬢です。立場が逆なら分かりますが、私よりも上の立場なのにどうして敬語なんですか?」


「なるほど、そういう事ですか」


 何?何に納得した?何に納得した上で、何に頭を悩まされているの?まぁ、考え込んでる姿も絵になるわぁ。いやそうじゃなくて。……敬語で居続けるのって、なにか理由があるとか?


「だ、ダメですか……?」


「分かりました。その代わり、2つ条件があります」


「え、条件ですか?」


「まず、1つ目にミシェリアも敬語をやめてください」


 いいんですか?いや、不敬じゃ……いや、夫婦だし?仲良くなるには、いいかも!って思うんだけど、一旦冷静になれ〜私!


 それ、大丈夫?大丈夫じゃないよね?パメラにきつく言っておけば、母に伝わらない?うん、天地がひっくり返ってもありえない。でも、敬語やめたら、一気に距離が縮まる感じがする。どうしたものか。


「ふ、2つ目は何でしょう?」


「2人っきりのときのみ、敬語はなくしましょう」


「それなら。分かりました。そうしましょう」


 パメラに見られなければ、母のお小言は聞かずに済みそう。セオドリック様、ナイスアイデアをありがとうございます!


「分かりました……じゃなくて、分かった。たまに敬語が出るかもしれないけど、許してね」


「はい……えっと、うん!」


 お互い、敬語を辞めただけなのに、なんだか気恥しい。きっと、2人して顔は真っ赤だわ。


「次はセオドリック様です。あっ、えっと、セオドリック様の番。何か私にお願いしたいこととか、聞きたいことない?」


「え……」


 一方的はダメだよね。セオドリック様……ご不満ございませんか。出来うる限り、努力致します。


「セ、セディって呼んで欲しい……です……。あっ、やっぱなしで!え……えっと……」


 少し考えて、セオドリック様の口から出たのは愛称呼び。何故かてんやわんやするセオドリック様。え?可愛い。そんなの朝飯前ですとも〜。幼い頃のかしら?


「分かったわ、これからセディ様って呼ぶわね!」

「っ、はい……」


 もう、セディ様が照れるから、こっちにまで移っちゃう。


「セ、セディ様も私の事、愛称で呼んでも構いませんよ?私、家族にはミーシェって呼ばれてて」


「アハハ、遠慮させていただきます」


 スっと真顔になって、丁重に、そして有無を言わさぬ笑顔で断られた。残念。そんなに嫌?


「あ、えっと、嫌とかでは無いですよ?ただ、呼び慣れてしまって、その、ご家族の前で愛称呼びが出てしまったらと思うと……」


「あぁ、ナルホド。ぜひ、ミシェリアと呼んでください」


「そうさせてくれ」


 お父様、何もしないけど、皇帝陛下と一緒の時ずっと睨みながら仕事しているってパメラが言ってたな。それと同じことが、お兄様とセディ様の間で起こるなんて、考えたくもない。


 その後も、交互に質問したり、こうして欲しいという事を言い合った。


「時間がある時でいいの。王宮の中を案内してもらえない?もう、日々迷子で」


「ふふ、僕でよければ何度でも案内するよ」


「ありがとう」


 セディ様は子供の頃からここに居るらしいし?それを口実に、内心城内デートを取り付けてやったと大喜びだったことは言うまでもあるまい。


「ミシェリアって、たまに喋ってくれなくなるでしょ?沈黙っていうか、表情が固まるっていうか。あれって、何かな?何か、不満があったのかなって。……初めて会った時とか、結婚式とか披露宴の時が分かりやすいかな?覚えてる?」


「えっと〜」


 どうしよう、逃げ出したい。まさか、セディ様可愛いって頭の中で悶えて、フリーズしてるなんて言えません。だが、何か気に触ることがあったとかじゃないかと不安になっていたご様子。誤解はとかねば。でも、真実は。引かれないかな。


 考えた末、色々伏せてやんわりと伝えることにした。


「まぁ、そうですね。えっと、普段は考え事をしていてってことが多いですが、あの日は……。その、セディ様に見惚れてて、何にも考えられなくなっちゃって……」


 もう顔見れない!と思って、熱を帯びる顔を伏せるが、セディ様?反応無さすぎでは?


 恐る恐る顔を上げると、真っ赤な顔のセディ様が。そういうとこですよ、この天使め!


「つ、次!ミシェリア」


「ふふ、はーい。そうですねぇ、次は。あっ、仕事が忙しくても、朝昼晩とちゃんと食べるって約束して。健康は大事なんだから、抜いちゃダメですよ?」


「分かった、約束する。執務があるから、昼食は難しいだろうが、朝夕はできるだけミシェリアに合わせるよ」


 あら嬉しい。食事が楽しみが増えたわ。


 そうやって、ずっと話しをしていると、時間はあっという間に過ぎてしまう。気がつけば、日が暮れようとしていた。


「セオドリック様、ミシェリア様、お楽しみのところ申し訳ございません。そろそろ夕食の時間です。お食事をしながら、続きとされてはいかがでしょうか」


「あら、もうそんな時間?びっくりだわ」


「では、続きはまたと致しましょう」


「ええ、そうですね」


 自然なエスコートで、手を差し出してくれる。流石、セディ様!その手を取って、自室まで送ってもらった。


「では、また夕食の席で」


「はい」




 その後の夕食では、朝食と違って話が盛り上がった。思い出話にも花を咲かせ、共通の見知った人物として、兄様にいじめられた話までしてしまった。私のくだらない話でさえ、笑顔で聞き続けてくれて、改めてセディ様の人柄の良さを知れた。


 こんなにも、優しい人が死んでいいはずない!絶対に、今朝の夢を正夢にはさせないんだから!!


「セディ様、絶対にあなたを幸せにしますからね!」





 セディ様と話をする機会を得てから、ちょっとずつだけど仲良くなってきた。夫婦や恋人と呼べるようなものは無いけれど、良き友人くらいにはなれたんじゃないだろうか。


 あの日以来、ご飯の時や寝る前には、一緒に今日あったことや思い出話をし合うようになった。それが、いつしか日課になっていた。




「ミシェリア、明日時間ある?」

「あるけど……何かあるの?」


 二人でいる時は、もう自然と敬語を使わなくなった頃。唐突に、セディ様はそう切り出した。


「いや、前に王宮内を案内するって話があっただろ?時間が取れそうだから、どうかなって」


 やだわ、目の前に天使がいる!そんな約束、覚えててくれたなんて!本当に、いいひとなんだから。


「ぜひ!案内お願いします」

 私はセディ様の手を取って、喜んだ。


「じゃぁ、決まりだ。さぁ、今日はもう寝よう」

「ええ。明日、約束よ!」






─────その日は、ワクワクで全然眠れなかった。寝不足がバレないメイクを施してくれる、メイク術のスペシャリストのパメラたちには感謝しかない。


「ミシェリア、行きましょうか」

 慣れたエスコートで、セディ様が導いてくれる。




「ここは大広間です。宴会などのパーティに使っています」


「大きいですね」


「ふっ、あははは」


 セディ様は、私の顔を見るや否や笑い出す。えぇ、私、変なこと言っちゃった!?


「な、何で笑うんですか?」

 何がおかしかったのかも分からないが、私は恥ずかしくなりながら、そう問う。


「いや、だって、初めて来たみたいな顔するから」


「え?来たこと、あります?」


「あははは。結婚式、ここでやったじゃないですか」


 わァ~……それは笑われるわ。でも、本当に、全く記憶にない。結構長い時間やってたはずなのに、全く、まーったく!記憶にない。不思議なことってあるのね〜。


 ・・・恥ずかしい!!


「あははは、気にしなくていいんですよ?何か、考え事をしていらっしゃたんでしょう?」


 恥ずかしがっている私に、セディ様は少しイタズラな笑みを向ける。そうですよね、あの日はセディ様に見惚れてフリーズしてたって言っちゃってますもんね!


 セディ様の笑顔の意味を理解し、ますます顔が熱を帯びる。まともに顔を見られません!


「城で執り行われるパーティは、基本的にここを使います。あ、えっと、パーティに参加したくないって時はそう仰ってくださいね」


 セディ様はふと思い出したように、そう付け加えて言った。一瞬、なんでそんな事言うのか分からなかったけど、そうだった。私の2つ名【妖精王の寵華】になるくらい、社交界避けて来たんだった……。


 セディ様は参加したくないなら、なんて言ってくれてるけど、流石にそれはダメだよね。皇太子妃にとっては、そういう場に参加することが仕事みたいなもんでしょ?


 でも、壁の花は……いや、待てよ。私にはセディ様がいるじゃない!問題ないわ!


「……リア?ミシェリア?」


「っ!?は、はい!」

 また自分ワールドに入ってた。すみません。


「えっと、大丈夫ですか?」


「はい!今までは壁の花になるのが嫌でパーティ避けてましたけど、セディ様がいらっしゃいますから!大丈夫です!」


「壁の花?……ふっ、あははは、なるほど。そうですか。では、これからのパーティが楽しみですね」


 何がなるほどなのか分からないけど、セディ様が笑顔だからどうでもいい。その笑顔に癒されて、私まで笑顔になる。


「次、行きましょうか」

「はい」




「ここは図書室です。地理や歴史の本がほとんどですね。恋愛ものや冒険物の小説なんかは、ここの隣の部屋にあります」


 次に来たのは大きな図書館って感じの部屋。ここにあるのがほとんど地理と歴史って……どんだけ情報量あんの。


「妃教育で使っている本も、ここから選んで使っているはずですから、分からないことがあったら似た内容が書かれている本を探すといいですよ。同じ内容なのに、違う書き方してて面白いんです」


 勉強の内容面白いって言う人初めて出会った。分厚い本ばっかりだけど、嫌にならないのかな?流石、未来の皇帝って言った方がいいのかな?


 ま、それより私は隣の部屋の小説の方が気になる。


「あ、本は司書に一言言っておけば持ち出し可能ですから、自由に見ていただいて構いませんからね」


「ホントですか!?今日は荷物になりますから、今度、いくつか借りていきますね!」


 いい息抜き見つけちゃったかも!




「ここが客室で、あっちが客間、そっちは皇帝の謁見場です」


「ここがキッチンです。今は夕食の準備で忙しいでしょうから、覗くのはやめておきましょう」


「ここはコレクションルームです。歴代の皇帝の肖像画だったり、宝石や彫刻といった価値のある献上品なんかが置いてあります」


「ここから先は、執事や侍女の部屋です」


 と、色々なところを見せてもらった。と言っても、一日じゃ見終わらなかった。まぁ、セディ様曰く、知っとけばいいってところだけ教えたから大丈夫だそうだけど。


 ……いやいやいや、広すぎじゃない!?


 説明とかしてもらったから大分時間は食ってるだろうけど、それでもかかりすぎだよ!怖いよ、ここの人たち。この広さ把握とか、びっくりだよ。


「大丈夫ですか?広すぎて困るでしょう?」


「しょ、正直、頭の中がいっぱいいっぱいです」


「過ごしていれば、そのうち自ずと覚えますから、無理しなくて大丈夫ですよ。もしどこか行きたいところがあったら、僕に行ってください。案内しますから」


「ありがとうございます」


 どこまでも優しい人。絶対に戦争なんて、起こさせない。幸せになりましょうね、セディ様。

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