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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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71話 その日の訪れ

 色々作業があって苦労してきたが、ようやく学園祭前日になった。

 私たちが頑張って制作してきた展示物は明日から校内のホールに飾られる。


「いよいよ明日からだね!」


 学園祭前日という非日常だからか、夢見さんのテンションがいつもより高い。


「うんうん! 楽しみ!」

「飾られてるの早く見たいな」

「私も!」


 しかし小雪はあまり楽しそうでない。


「小雪は楽しみじゃないの?」

「あー、まーね。親が来るわけでもないし。そんなに楽しみでもないって感じ」


 無理もない、か。


 小雪の親は忙しくていつもあまりこの街にはいない。だから学園祭にも来ることができないのだろう。親が来てくれるわけでもない小雪が気分的に盛り上がれないのは分からないではない。皆で盛り上がれなかったら、なかなか明るい気分にもなれないものかもしれない。


「テンション低いなぁ」

「まーねー」

「学園祭は一緒に行動できたらいいね!」

「何それ? 今さら?」


 小雪はくすりと笑みをこぼす。



 翌日。

 朝から校内は若干浮かれた雰囲気に包まれている。

 生徒たち、皆、いつもより浮かれている。心なしか動きも激しいように感じる。変な意味ではなく、そのままの意味で。皆、やたらと喋ったり、変な動きをしたりしている。


「なーんかさ、全体的にテンション高くない?」


 小雪は自分の席に腰を下ろしたままやれやれとでも言いたげな顔で発する。


「だねー」


 私は流れのままに言葉を返す。

 深い意味などない。

 ちょうどその時、夢見さんが教室に入ってきた。開きっぱなしになっていた扉を通過して、自身の席へ向かうのではなく私たちの方へ歩いてくる。というのも、夢見さんの席は他の生徒に占領されていたのだ。


「おはよう! 浅間さん!」

「あ。はなちゃんおはよー」


 夢見さんは私のすぐ傍までやって来て、鞄を一旦床に置く。


「小雪ちゃんももう来てたんだね」

「まーね」

「おはよう」

「朝から元気だなぁ。ま、おはよー」


 夢見さんと小雪、タイプは違う二人だが、お互い段々慣れてきたのではないだろうか。


「浅間さん、今日は誰か来る?」


 そんなことを訪ねてくるのは夢見さん。


「母とリリィかな」

「そうなんだ! 楽しみだね」


 今までは学校の行事の時は母親だけが来るパターンが多かった。だが今回は違う。母親はもちろん来てくれるのだが、リリィも一緒に来てくれることになったのだ。もっとも、リリィはこの件に関しても相変わらずで、ずっと「ただの暇潰しだから勘違いしないで」などと言っていたけれど。


「小雪ちゃんは誰も来ないんだったね……」

「そうそう。そっちは?」

「わたしはね、実はね、まだ決まってないんだ」

「そうなの?」

「うん。当日まで分からないって」

「へー。そりゃまた厄介な」


 家庭環境なんて一人一人違う。父親がいるいないとか、母親がいるいないとか、祖父母までよく絡んでいるか否かとか。兄弟の数だって違うし、親の職業だって違う。だから、皆が一様に学園祭に来ることができるというわけではないし、大勢来る生徒もいれば誰も来ることができないという生徒もいるだろう。


 それでも、皆が、少しでも楽しめる学園祭であったなら。


 きっとそれが一番素晴らしい。

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