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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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69話 浴室の前にて

 その日の晩御飯はリリィと気まずいままで終わってしまった。


 自室へ戻っても気まずさの霧が晴れることはない。


 私たちは同じ部屋で生活している。それゆえ、リリィと近くにいる時間は、母親と近くにいる時間よりも長いくらいだ。もっとも、今は学校があるから、一日中一緒にいるわけではないけれど。


 だからこそ、一度気まずくなってしまうと、とにかく気まずい。

 そんな夜の入浴直前。


「今から入るの」


 浴室の前で服を脱いでいたら、リリィが声をかけてきた。


「リリィ! どうしたの? 何か用事?」


 気まずさは今は隠し、平静を装いつつ返す。

 すると彼女は目を伏せた。


「……言いたいことがあって」


 その声は小さかった。


「言いたいこと?」


 確認すると、リリィはこくりと頷いた。


「その……さっきはごめん。帰ってきた時、一方的に怒って……悪かったと思ってる」

「いいよ。気にしてないよ」


 まったく気にしていなかったかというとそんなことはなくて、気まずさを感じてはいたけれど。でも私はリリィを責める気はない。それに、早く仲良しに戻りたい。だから、リリィが怒っていないことが分かれば、私はそれだけで幸せを感じることができる。


「でもどうして今?」


 それはシンプルに疑問だった。

 わざわざ相手が服を脱いでいる時を選んで謝らなくても……、と。


「ふと思い立って」


 リリィは露骨に視線を逸らした。

 そんな様子で本当のことを言っているとは、とても思えない。


「本当にそう?」


 私はリリィの瞳をじっと見つめて質問した。

 すると彼女は、私の機嫌を伺うかのようにさりげなくこちらへ目をやりつつ、口を開く。


「……は、半分はホント」

「え。じゃあもう半分は?」

「……もう一つ用事がある」

「もう一つ?」


 意外だった。というのも、他にリリィが私への用事を持っているとは思えなかったから。帰宅時間のことで気まずくなってしまった件を除けば、心当たりは一切ない。


「お風呂、二人で入らない?」

「え」


 思わず何も言えなくなってしまった。

 いろんな意味で驚き過ぎて。

 まさかこんなぶっ飛んだ話が来るとは、という感じだ。


「いいよ。でもどうして」

「……意外とそういうのしたことなかったな、って」

「確かにそうだね」

「試してみたい」


 試してみたい、とは、何をどう試そうとしているのか。

 言い方が謎だ。

 一緒に入ってみたいという表現なら自然だし理解もできるが、試してみたいとなるとまるで何かの実験であるかのようではないか。


「試してみたい、って……どうしてそんな言い方?」

「この国では風呂に入って仲を深めるものだ、って、本で読んだ」

「えええ……」


 何の本を読めばそんな知識がつくのか。

 もはや謎だらけだ。

 いや、もちろん、この国に大勢で入浴する文化があることは事実だけれど。


「それで試してみたくなったってことなんだね?」

「そういうこと」

「いいよ! じゃあ入ろ!」

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