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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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68話 帰るなり怒られた

「遅い!!」


 帰宅するなり、リリィに怒られた。

 リリィは腕組みをしながら不機嫌な顔で家の前に立っていて。私を見るや否や、こちらが驚くような勢いで近づいて来て、怒りの言葉を飛ばしてきたのだ。


「ごめん! 今日居残りになっちゃって!」

「居残り!?」


 そんなに怒らなくても……。


「う、うん。展示のことでしなくちゃならないことがあって。それで帰りが遅くなっちゃったんだ」

「ふーん」

「え。もしかして怪しんでる?」

「べつに」


 リリィの機嫌を完全に損ねてしまった。

 こういう時というのはどうすれば良いものなのか。


 不機嫌なリリィは以降何も発さなかった。唇を僅かに尖らせ、腕組みをしたまま、彼女はすたすたと家の中へ入っていった。私もその背中を追うように家の中へと進んでいく。もっとも、二人の間には距離があるため一緒に入るという感じではないけれど。


「おかえり」


 リリィはさっさと行ってしまった。

 温かく迎えてくれるのは母親のみ。


「ただいまー。ごめん遅くなって」

「居残りか何か?」

「うん」

「そう。良かった。事件じゃないなら安心したわ」

「心配させてごめん」


 それから私は手洗いうがいをした。そして自室へ戻り服を着替える。その時リリィも私の自室内にいた。が、リリィが何か声をかけてくることはなくて。彼女は部屋の隅に腰を下ろしてずっとそっぽを向いていた。喋りたくない、とでも言いたげな顔で。だから私も声をかけることはしなかった。喋りたくない気分の人に話しかけるというのはただの迷惑行為でしかないだろうから。


 その後私は夕食をとった。


 リリィも一応参加しているが、まだ言葉を交わしてはくれない。


 今日のメニューはカレーライス。それも母親が自らの手で作ってくれたものだ。母親が作るカレーライスの美味しさは知っているから、食べる前から心が弾む。


 ただしそれは平常時の話。

 今はリリィとのことが気になっているせいで心もそれほど弾みはしない。


「あ、美味しい」


 ほんの少し口に含めば、その美味しさは容易く分かる。

 自然と本心が口から出た。


「ほんと? そう言ってもらえたら嬉しいわー」

「さすがって感じ!」

「今日は鶏肉を入れてみたのよ」

「これか! 美味しそう!」


 こうして母親と喋っている時だって、気まずさが消えるわけではない。

 だってリリィはすぐそこにいるから。


 離れているなら話は別かもしれないが。こうして近くにいるから、気まずさの海から逃れることはできず、ただただ心が疲弊していく。もっとも、カレーライスの美味しさは疲れた心にこそ響くというものなのだが。


 ルーのほどよいスパイス感、独特の香りと刺激。そこに合わさる、フルーティーな甘み。塩分が全体を引き締め、美味しさをぐっと高めて。

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