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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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67話 飲み物買って

「浅間さん、飲み物買って帰らない?」

「いいよー。飲んで帰ろー」


 作業を終えた私たちは食堂の近くへ向かう。なぜなら自動販売機で飲み物を買いたかったから。この学校では、食堂の近くに飲み物を買うことのできる自動販売機が数台設置されているのだ。お昼時であれば自動販売機を使っている生徒も少なくないため人が密集しているが、放課後のこの時間ならさすがに混雑はしていないだろう。


「良かった! 空いてる!」


 自動販売機の前に生徒はいなかった。

 近くで部活に励んでいる生徒がいるだけ。


「お昼はこの辺の混雑ぶり凄いよね」

「ねー。私いっつも怖くて近寄れないんだー。はなちゃんもここにはあまり来ない?」

「うん、わたしはあまり使わないから」

「そっか! じゃあそこは一緒だね!」


 私たち二人は、喋りながら、向かって右から二番目にある赤い自動販売機の前へ進む。


 鞄から財布を取り出そうとした——刹那、夢見さんが「待って待って」と声をかけてきた。何かと思い、私は一旦手をとめる。彼女の発言の意図が掴めず、きょとんとした顔をしてしまう。そんな私に笑顔を向けながら夢見さんは「払うよ」と言った。


 気づいた時には夢見さんの手から二百円が自動販売機に吸い込まれていた。

 投入金額表示の欄には二○○が表示されている。


「浅間さん、好きなの選んで」

「ええっ。悪いよそんなの! 払ってもらうなんて!」


 自分の飲み物くらい自分で買うというのに。


「どれでもいいよ。どれが好き? この中に好きなのある? なかったら、ちょっと好きなのでも。それとも台変える?」


 なぜだか知らないが、夢見さんはご機嫌だった。


「好きなのはこの桃ウォーターかな!」

「じゃあそれを押してね」

「いやいやいや! さすがに奢りはまずいって!」

「浅間さん、遠慮しないでいいよ」


 手伝ってもらっていたのは私の方。本来ならお礼として私が奢らなくてはならないくらいの状況だ。それなのに夢見さんは飲み物代まで払おうとしてくれている。

 でも、正直、こういう時に断るのが良いことなのか分からない。

 固く考えれば世話になったうえ飲み物を買ってもらうなんていうのは失礼というか遠慮すべきことだろうけど。でも、せっかく相手が自ら買うと言ってくれているのに断るのが良いことかというと、完全にそうとも思えない。


「本当にいいの?」

「うん」

「ありがとう! じゃあ桃ウォーターにさせてもらうね!」

「うん」


 ボタンを押せば、ガコンと音がして下の溝にペットボトルが落ちてくる。

 私はそれを慎重に取り出した。


「次の分も取るよ!」

「ありがとう」


 しゃがんだまま待つ。


「うーん、どうしようかな」

「ゆっくり決めて!」

「うん、ありがとう」


 それから数十秒、夢見さんはついに「決めたから押すね」と言った。


 落ちてきたのはアイスティーの小さいペットボトル。

 私はその小さいペットボトルをゆっくりと溝から取り出す。


「はい!」

「ありがとう」

「お礼を言わなくちゃならないのは私の方だよ! 買ってもらって。本当にありがとう、はなちゃん」


 それから私たち二人は一緒に飲み物を飲んだ。

 作業の継続で疲れ切った身体に、桃の香りの水がじんわりと染み渡る。

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