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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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66話 ひたすら進む

「浅間さん、どのくらい進んだ?」


 担当の作業をおおよそ終えた夢見さんが尋ねてきた。

 しかし私の方は誇れるほど進んでいない。

 得体の知れない緊迫感の中で文字を書き続けるというのはかなりの心労だ。それに、展示のためのものなので、字を丁寧に書かなくてはならない。間違っていなければそれでいい、というものではない。だから余計に時間がかかるし疲労感も大きいのだ。


 一行書き終える、それすら、私にとっては重労働。


「半分くらいかな……ごめん、遅くて……」


 謝っても謝りきれない。

 それほどに私の作業は遅い。


「ううん、浅間さん頑張ってるよ」

「はなちゃんの方は終わったんだよね? 先に帰ってていいよ」


 教室が強制的に閉まる時刻まではまだ時間があるけれど、このペースだと終わりそうにない。


 早くリリィに会いたいなぁ……。


「そんなの嫌だよ。手伝うよ」

「えっ!」

「一緒に書いてもいい?」

「そんな! 悪いよ!」

「太いペンもう一本取ってくるね」


 そう言って、夢見さんは教師机の方へ駆けていった。


 本当に情けない。どこまでも情けない、かっこ悪い。分担して取り組んでいたのに、自分の最低限のことすら片付けられず、他人に手伝わせてしまうことになるなんて。こんな恥ずかしさ、今まで一度も経験したことがない。


 内心落ち込みつつも、手は動かす。

 そうして書き進めているうちに夢見さんが戻ってきた。


「わたしはこっちを書いていくね」

「ホントごめん……」

「あと少し、一緒に頑張ろうよ。きっと今日で終わりにできるよ」

「ありがとう」


 ペンのキャップを外した瞬間、夢見さんの眼差しは一気に真剣なものへと変化した。日頃はほんわかした雰囲気をまとっているのに、今の彼女はほんわかしていない。素朴な女の子のような容姿なのに、戦士のような凛々しささえ感じられる。


 そして、手の動きも、私のそれとはまったく違っていた。

 違う世界から来た人が手伝ってくれているかのような光景だ。


 滑らかな流れで文字を書いていく。私が一文字書く間にも、夢見さんは数文字進んでいる。この速度の違いが一体何なのか、妙に気になってしまった。やはり無駄な動きの少なさだろうか。


 だが筆記スピードの遅さに絶望している暇もない。

 そんなのは今するべきことではない。


「ここ済んだよ。あ、次は、右上書くね」

「早っ」

「ゆっくりでいいよ」

「ありがとう」


 落ち込んでいても何も始まらない。私は私にできることをする、それが一番効率的だ。夢見さんの好意に頼ってしまったことは事実だし、それは今さら何をしても書き換えることはできないもの。だから今はそこへは目を向けず。自分にできることへ意識を向けよう。


 そして、遂に。


「書けた! ここ全部終わったよ!」

「やったね」

「手伝ってくれてありがとう! はなちゃん」

「大丈夫だよ。わたし意外とこういう作業好きだし得意だから」


 これにて、本日の作業は終了。

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