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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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63話 大切なもの

「テーマ、大切なもの、かぁ……」


 帰りしな夢見さんのところへ挨拶をしに行くと、彼女はそんなことを言ってきた。

 何か話したいことでもあるのだろうか。


「そう決まったよね!」

「浅間さんは大切なものってある?」


 夢見さんは真剣な面持ちで尋ねてきた。


「え。……あ、うん一応」


 こういう時はどんな風に答えるべきなのだろう。


 ある、と、本当のことを伝えるのが良いのか。

 ない、と、少し嘘をついてでも深く言わないようにする方が良いのか。


「もしかしてリリィちゃん?」


 心臓が大きく鳴る。

 ぴったりと当てられてしまった。


「やっぱりそうなんだね」


 夢見さんはくすりと笑みをこぼす。


「何で分かったの!?」


 私は身を乗り出すようにして夢見さんに顔面を近づけた。

 ただしこれは意識しての動作ではない。ほぼ無意識に身体が動いてしまっていたのだ。厳密には違うかもしれないが、反射的に、という表現が近いかもしれない。


「何となくそんな気がしてたよ」

「はなちゃん超能力者!?」

「それは言い過ぎだよ。超能力なんてなくても、案外、想いって分かるものだよ」

「そこまでバレてたなんて」


 隠せているつもりでいた私が馬鹿だったのか……。


「えへへ。でもいいよね、大切な人がいるーっていうのは。素敵なことだと思うよ」

「そ、そうかな? ありがと! そう言ってもらえると元気出た!」


 言い終わってから数秒考えて。


「それで? はなちゃんは大切なもの何かあるの?」


 今度はこちらから質問してみた。

 こうして喋っている間にも教室内の生徒は減っていく。だがそれは悪いことではない。むしろありがたいことと言っても過言ではないだろう。こういう話は生徒が皆揃っている時より減っている時の方が話しやすい。


「うーん」

「もしかして悩んでる?」

「うん……実はね」

「そっか」


 テーマを受け入れてくれたから問題ないものと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。彼女にとって『大切なもの』というテーマは簡単に対処できるものではないのかもしれない。


「前言ってたおじさんだったかの漫画とかは?」

「それはね、大好き」

「おおっ! じゃあそれで……」

「でもね。大切なものって言うのは少し違う気もするんだ」

「そっ、か……。じゃあ何か別のもの探さないとね」


 大切なものを見つける。

 大切なものを決める。


 難しいことなのかもしれない。


「うん。あ、ごめんね、遅くなっちゃって」

「ううん! いいよ!」

「じゃあね。またね。ばいばい」

「ばいばーい!」


 この日はこれで下校した。

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