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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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61話 幸福な時間

 親しい人と二人でのんびり過ごせる時間、それは何よりも幸福を感じられるものだ。


 特別なことなんて何もない。特別なものを貰うわけでも特別なことをするわけでもない。行動自体は敢えて言うほどのことでもないようないたって普通なもの。


 それでもこの胸の高鳴りは。

 一人でいてはなかなか味わうことのできないものだ。


「そろそろ出よっか」

「日和の好きなようにして」


 リリィの言葉選びは相変わらずぶっきらぼう。

 ただ、それに対して嫌悪感はなく、むしろほっこりできる。


 もし相手が大切な人でなかったら。そうしたら、ぶっきらぼうな発言に対して、多少不快感を抱いたかもしれない。関わりづらさを感じたり溜め息をつきたいような感覚に襲われた可能性もある。


 けれども、相手を大切に思う気持ちがあれば、負の感情なんて生まれない。


 今はただ。

 こうして二人でいられる幸せに身を浸していたい。


「ありがと! じゃそろそろ行こっかな」

「そ」

「リリィは大丈夫?」

「うん」


 そう言って、リリィはすっと立ち上がった。

 動きが早い。


「支払いは私がするね!」

「よろしく」

「オッケー、任せて!」


 持つべきものを持ち、席から立ち上がる。席から少し離れてから、一度だけ振り返り、忘れ物がないか念のため確認しておく。座席の周りに忘れ物や落し物がないことを目で確認して、支払いを行う場所へと歩く。


「お願いします」

「はい。それでは……」


 合計の金額を確認し支払けば、すべて終わり。


「ありがとうございましたー」

「ごちそうさまでした」


 控えめに一礼して喫茶店を出た。


「はー楽しかったー」

「相変わらず呑気」


 リリィは冷めた雰囲気でぽつりと発する。

 相変わらず、という感じだが、意外とそこが好きだったりもする。


「えー? リリィは楽しくなかったの?」

「いちいち聞かなくていいから」

「あ。照れてるー」

「そういうの鬱陶しいってば!」

「……そうだね」


 私は敢えて大袈裟にがっかりしたような顔をする。

 声も弱々しく。


「でも残念だなぁ……聞きたかったな、リリィの気持ち……」


 するとリリィは「そういうのやめて! これじゃ何かこっちが悪いみたい!」と大きめの声を出した。言い方はいつもと変わらず気が強そうだが、心なしか困ったような目つきになっている。


「楽しかったから」

「え」

「楽しかったって言ってんの! ……ちゃんと聞いてよホント」


 リリィがついに素直になってくれた!


 嬉しくて、思わず抱き締めてしまった。


「本当の気持ち言ってくれてありがとう!」


 距離が近すぎると分かっているし、リリィがこういうことをあまり好まないとも知っている。でも、それでも、今は感情を抑えられなくて。喜びの花が咲き、抱き締めることをやめられない。


「ああもう暑苦しいっ」

「楽しんでくれて嬉しいよー」

「は!? ちょ、何で半泣きなワケ!?」

「嬉しすぎて」

「はああぁ!? 何それホント意味分かんない!!」


 少しして平静を取り戻すと、私は素早くリリィから離れた。こんなところで抱き締めるというのはさすがにまずいな、と思ったから。男女よりかはまだ良いかもしれないが、長時間継続していたらさすがにまずい。通行人に変に思われてしまうかもしれないし。


「続きは家でね!」

「はぁ!? 続き!? 続きとか要らないし! 勝手に続けようとするとか最低だし!」

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