52話 クラス展示のテーマと宿題との戦い
中間考査は終わり、学園祭が近づいてくる。
今年はクラスで展示を行う。
最初の関門は展示内容の決定。これが妙に揉めた。夏休みの思い出派と自由な調べ物や研究派に別れたのだ。もちろんどうでもいい派もいるが。私はどうでもいい派に属しているが、こだわりが強い生徒は自身の意見を通すことに一生懸命だ。一歩も譲らない。
結局、最後は多数決で、夏休みの思い出になった。
「ねぇリリィ」
展示テーマが決定した日、帰宅して漢字練習の宿題をしながらリリィに話しかける。
「何?」
「月末、学園祭っていうのがあるんだけどね」
口を動かしつつ、手も動かす。宿題を終わらせるのだ、だらけている暇はない。会話で脳の退屈を紛らわせ面倒臭さを抑えつつも、文字を書く作業は継続する。
それにしても、このうさぎの模様のピンクのシャーペンは書きやすい。
「学園祭? 祭り?」
「うん、そんな感じ。学校で色々あるんだ。それで、うちのクラスの展示のテーマが『夏休みの思い出』なんだけどね」
「ふーん。そういうの好きね人間って」
「今日決める日でね、夏休みの思い出派と自由な調べ物や研究派が互いに譲らなくってー」
「そんなどうでもいいことに熱くなれるのが意味不明。くっだらない」
段々手首が痛くなってきた……。でも! あと少し!
「何を書いたら良いと思う?」
はい、最後の一文字。
これにて漢字練習の宿題は完成。
しかしまだ休めない。というのも、本日の宿題はこれだけではないのだ。英語の教科書の文章をノートに書き写すものがまだ残っている。
一気に終わらせてしまおう。
幸い時間には余裕がある。
「何って……夏休みの思い出について?」
リリィはベッドの上に寝転がって理科の教科書を読んでいる。
ちなみにそれは私が小学生だった頃の教科書。
「うん。リリィとのこと書いてもいいかな」
「あたし? 何を書くワケ。特別なことなんて何も——」
「可愛い女の子と楽しく暮らしました、とか」
「はぁ!? 何それ!?」
リリィの声が急に大きくなった。
「嘘嘘。それは冗談」
苦笑しつつ述べる。
安堵の溜め息を漏らすリリィ。
「良かった……」
さすがに無理のある提案だったか。
「女の子とお出掛けしましたーとかならアリ?」
「まぁそれなら……でも他に何かないワケ? べつにあたしのことじゃなくても……」
「リリィのことが書きたいよ」
「はぁ!? な、なななな、何その言い方っ!!」
いちいち面白いなぁ、リリィは。
「ま、好きにすれば……」
「ありがとう!」
「ただし嘘は書かないで」
「もちろん! それはもちろんだよっ!」
こんなに幸せな記憶があるのだ、嘘を書く必要なんてあるわけがない。
それからも手を動かし続け、十数分後、ようやく今日の宿題は片付いた。
「終っわりー!」
「お疲れ」
「はー、寝よ。ちょっとそっち行くね」
「どうぞ」
私がベッドへ歩み寄ると、リリィは場所を空けるためか移動しようと立ち上がる。その片腕を私は掴んだ。突然腕を掴まれたリリィは驚いた顔。
「ここにいて」
「は?」
「一緒にゴロゴロしよ!」
「無理」
「えーどうしてー」
「無理なものは無理!」
リリィは腕を引き抜いて部屋の隅へ移動してしまった。沈黙が訪れる。リリィはまだ理科の教科書を読んでいるが、喋り出しそうな様子はない。妙な沈黙が気まずくて、私は口を開いてみることにした。
「リリィはさ、私とゴロゴロするの嫌?」
「ゴロゴロはいいケド、敢えて二人で一緒にする必要性がないし」
「私のこと嫌い?」
「べつに。そんなことはないケド」
「じゃあ好き?」
「……何でそんなこと聞くのかが分かんない」
「リリィのこと好きだからだよ」
「は?」




