51話 中間考査終了
中間考査は終わった。成績はそこそこ。だが私としてはそれほど悪くない点数だった。教師から怒られることもないだろう、それだけでも安心できる。
「あーあ、サイテー」
返却日、小雪はあまり機嫌が良くなかった。
「どうしたの?」
「数学よ、見てこの点数。また親に色々言われそうでダルい」
小雪が見せてきた自分の解答用紙には赤い五と七が並んでいた。
「それって悪い点?」
「そうそう」
「半分はあるし悪くはないんじゃない?」
五十点代なんてわりとよく見かける数字だ。確かに点数としては良くはないかもしれない。けれども驚くほど悪いわけでもない。日頃の点数がよほど良い生徒であれば、五十点代でも驚かれるかもしれないけれど。でも、親に色々言われるほどの点数かというと、私としてはそうは思わない。
「絶対言われるよ、ぎゃーぎゃー」
「厳しいんだね」
「ほんっとウザい! いつも家にいないくせにさ! こういう時だけ絡んでくるから!」
「大変だね……」
その点うちの母親はあまり厳しくない。
大抵笑って許してくれる。
「はなちゃんはどうだった?」
「普通かな」
「何点? 良かったら見せてー」
「うん……いいよ、はい」
少し恥ずかしそうに解答用紙を見せてくれる夢見さん。
その点数に愕然とする。
ほぼ全部が九十点以上だったのだ。
どこの学校にも高得点な生徒はいるもの。だからこの学校にも当然いるだろう。成績は上から下まで存在するのが一般的だ。もっとも、例外はあるだろうが。ただ、普通な学校であれば、成績の幅は大抵あるものである。
だがほぼ九十点以上というのは珍しいのではないだろうか。
少なくとも、私はあまり出会ったことがない。
「凄い! 凄いよ!」
「ううん」
「それは自慢していいよ! 何なら私が自慢してくるよ!」
「やめて」
「えー、嫌なのー?」
「あまり見せたくないかな……自慢してるみたいで変だし」
私と夢見さんが喋っている間、小雪は夢見さんの数学の解答用紙をじっくり確認していた。
どういう点を見ているのかは知らないが。
「えー! そんなことないって。凄いのは本当だもん!」
「でも……」
「これは自慢していいよ!」
「やめとく、かな」
「えー。まぁでもそっか、はなちゃんがそう言うなら仕方ないね」
ちょうど言葉が途切れたタイミングで小雪が口を挟んでくる。
「凄いじゃん」
小雪は素直に夢見さんを認めた。
「ううん、そんなこと……」
「この問題とかさ、結構難しかったでしょ。えーこれ出るのとか思ったもん。ワークでも応用扱いだったし、出そうにないと思ってた」
話についていけない。
私は入っていけそうにない会話だ。
「うん、それが出てるのはびっくりした」
「でも合ってるじゃん」
「何とか」
「やるじゃん。凄いよ。頑張ってるんだね」
「あ、ありがとう……」
小雪に褒められ、夢見さんは照れていた。
褒められればやはりまったく嬉しくないわけではないようだ。




