48話 タイプの違う二人
「夏休みどうだった? 楽しかった?」
夢見さんは私を発見するなり寄ってきて話しかけてくる。
以前はこんなことは少なかった。それを思うと、彼女の中での私との親しさは上がっているのだろう。つまり、前より親しくなったと感じてもらえているということだ。それは、私としても、ありがたいことだし喜ばしいことである。
「うん!」
夢見さんとは夏休み中も数回顔を合わせた。が、学校で会うと、校外で会うのとはまた違った感覚がある。校内で会うのと校外で会うのとではまったく同じではないのだ。
「そういえばホテルに泊まりに行ったって言ってたね」
夢見さんはあまり教室内でうろうろしないタイプだった。だが今は、当たり前のように、私の前の席の人の椅子に腰を下ろしている。もっとも、その席の生徒が来ていなければよくあることなのだけれど。夢見さんがそれをすると少し意外だったりもする。
「そうそう。母とリリィと知り合いの人と四人で。はなちゃんは?」
「わたしはね、漫画買いに走り回ったりとかしたかな」
「漫画? おじさんのやつ?」
「それもあるし、他にも、気に入ってるのが色々あって」
「へぇー」
夢見さんと喋っていると、小雪が来た。
「おはよー」
小雪は眠そう。
「おはよ!」
取り敢えず挨拶を返す。
「ごめん喋ってた?」
「喋ってたけど大丈夫!」
小雪は夢見さんに視線を向ける。
表情を固くする夢見さん。
「えーと、確か……夢見さん、だっけ?」
「あ……う、うん」
「最近日和と仲良いじゃん」
「ちょっとだけ……」
夢見さんは小雪に苦手意識を抱いているのだろうか、畏縮してしまっているように見える。
だがそれも無理はないのかもしれない。夢見さんは元々幅広く皆と親しくする系統ではないようだから。雰囲気が違う生徒とだと、すんなり馴染むことはできないのかもしれない。
「日和と仲良いんならさ、あたしとも仲良くしてよ」
小雪は意外と積極的だ。
「えっ……」
私の前の席に座ったまま、きょとんとした顔をする夢見さん。
「何それー?」
「う、ううん! 嫌とかじゃなくって……! ……ごめん」
「いいよいいよ! 分かってるって! 夢見さんて可愛いとこあるね」
「こういうの慣れてなくて……」
「ま、無理のない範囲で仲良くしてよ」
友達と友達が友達になるのは嬉しい。
特に何をしたというわけではないのだが、架け橋になれたような気がして、よく分からない喜びが湧いてくる。
「呼び方、夢見さんでいい?」
「うん」
小雪が尋ねると、夢見さんはやや小さめの声で返し頷く。
表情は最初より少し柔らかくなったような気がする。
「あたしのことは小雪でいいから」
「小雪ちゃん、でもいい?」
「普通に呼び捨てていいって」
「慣れてなくて……」
「じゃ、段々でいいよ。好きに呼んで」




