47話 久々の登校日
夏休み明け、久々の登校日。
天気は晴れ。
空は青く染まっている。気温はまだ暑く感じるくらい。数分歩けば自然と汗をかく。
「おはよー!」
「元気だったー? 休み何してた?」
「例の彼とデート! そっちは?」
「こっちはねー、もう、ガチ暇だったー」
廊下を歩いていると、再会を楽しむ生徒たちの会話が聞こえてくる。
もっとも、それらの会話は私には何の関係もないものだ。彼女ら彼らが何を話そうが私の人生に変化はない。ただ、友人と久々に会えて嬉しいのだな、ということは掴めたりする。そういうところは面白いところだと思う。
どうでもいい会話。
でもそれは、この世において不必要なものというわけではない。
「久しぶり、元気にしてた?」
「あーうん。自分はね。元気だった?」
「そこそこね」
「出掛けたりした?」
「えーと、ちょっとだけ。でも、暑すぎたからあまりかな。近所だけ」
「分かる分かる」
もうすぐ教室に着く。
休み明けの教室はいつも凄まじい騒がしさだ。それこそ、耳が痛くなってくるくらい。だから多分、今日も、そんな感じになるだろう。それを思うと溜め息が出そうになってしまう。
「おひさー」
「学校だるいわー」
もちろん私だって友達に会えるのは嬉しい。その感情が理解できないわけではないのだ。ただ、嬉しいからといって教室でそこまで騒ぐかというと、そんなことはない。わざわざ大声を出したいとは思わない。
「眠すぎ」
「宿題やった? 見せて」
「はぁー? 自力でやれって自力で」
「むずいもん」
「写すとかセッコ」
教室の前に到着。閉まっている扉を開ける。いつか耳にした噂によると、世にはこの瞬間に緊張する者もいるらしい。だが私はそんなことはない。そこはあまり気にならない質である。
ガララ、というありふれた音を立てながら教室に入り、席へと向かう。
おはよーと挨拶を交わしながら。
「アンタ今日早くない?」
「宿題写させて!」
「いきなりそれ? それが他人に頼む態度でーすーかー?」
「ごめん! ごめんて!」
机と再会するのも数十日ぶり。
感慨深いものがある。
鞄を机脇のフックにかけたら、取り敢えず着席。
懐かしい眺めだ。
「そんな人には貸さなーい」
「ホント困るからっ。ごめんって、貸してーっ」
「貸さないよーん」
「えーっ! 困るってばーっ! リンゴパイ奢るからーっ」
教室内の生徒はまだ少ないが、既に話し声が聞こえてきている。
「マジ?」
「うん! 本気! 三つでもいいよ!」
「じゃあ貸すわ」
「キタァーッ!!」
こうしてまた学生生活が始まる。
新たな気持ちを抱きつつも、過去に戻ったような、そんな奇妙な感覚だ。
新しいようで、しかし、決して新しくはない。この学生生活はこれまでにも経験したことがあるもので。ただ、暫しこういう生活からは離れていたため、特別感も僅かにはある。それこそ、新入生になったような感覚が、ほんの少し胸の内に存在していたりもする。
「おはよう。浅間さん」
「あ! おはよ!」




