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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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46話 長期休暇の終わりが近づいてきた頃の心境

 夏休みがもうすぐ終わる。少しばかり憂鬱だ。夏期休暇の宿題は片付いている。が、それでも、休みの終わりというのは複雑な心境にならざるを得ない。


 だって、もうすぐ学校生活が始まる。

 そうしたらリリィと離れている時間が増えてしまう。


 今年の夏休みはいつも以上に楽しかった。小雪と会えたこと、リリィと一緒にいられたこと、ローザを含む四人で旅行へ行けたこと。嬉しかった。そして、夏休み後半には、二回ほど夢見さんとも遊べた。それもまた嬉しくて。充実した毎日だった。


 でもそれももう終わってしまう。


 人生そのものが終わるわけではないし、皆に会えなくなってしまうわけでもない。学校にいる時間が復活するだけのことだ。ただ、今のこの暮らしが一旦終わると思うと、どうしても物悲しさを感じてしまう。


 学生時代あるなら誰でも、一度くらいはそういう気分になったことがあるのではないだろうか。

 穏やかな日々に終止符が打たれる切なさ。


「ちょっと。浮かない顔して何なワケ?」

「あ……ごめん」

「謝らなくていいし。で、何その顔。何かあったの?」


 自覚はなかったし隠せているつもりでいた。けれどもこの心境を完全に隠しきることはできていなかったみたいだ。リリィにはバレていた。案外顔に出てしまっていたのかもしれない。


「もうすぐ休みが終わるから、寂しくってー」

「ふーん。子どもみたい」


 本音を漏らすと、馬鹿にされてしまった。


「もうっ! そんな言い方!」

「あたし間違ってる?」

「うぅ……。そりゃ、間違ってはないかもしれないけど……」


 もう少し労ってほしかった、なんて言ったら贅沢だろうか。

 あまり贅沢は言わないようにしよう。贅沢なことを言い過ぎたら、結局損をするような気がする。だから、とにかく、今あるものに感謝しよう。今あるものを見つめ、満たされていると考えるようにしよう。


「何にせよ、暗い顔してないでよね」

「……もしかして心配してくれてる?」


 するとリリィは頬を赤らめてぷいとそっぽを向いた。


 やはりそうだったようだ。

 リリィは失礼なことを言ってくるけれど、それは、私を傷つけたいからではない。やや失礼な言葉を発してくるというのは、心配の裏返しなのだ。


「なーんだ! そういうことかぁ!」


 私は急に笑みを取り戻した。


 だってだって、リリィが心配してくれたんだよ? 私のことを。それも、自ら。それが嬉しくない人なんている? ……いや、もちろん、感じ方は人それぞれだろうけど。でも私は嬉しい! 嬉しい以外の感情なんてない!


「なっ、何それっ。言い方感じ悪すぎっ」

「もー怒らないでよー」

「ベタベタしないでっ」

「心配してくれてありがとう! リリィ!」

「べっ、べつに……。一緒にいたら情が湧くのは普通だし……」


 やはりリリィの存在は大きい。彼女が近くにいてくれるだけで私は幸せな気持ちになれる。たとえ素っ気なくされても、照れ隠しに感じ悪いことを言われても。それでも、彼女がここにいてくれることが嬉しい。出て行こうとせず一緒に暮らしてくれる、それだけのことがこんなにも嬉しい。


「ありがとー!」


 私は勢いよくリリィに身を寄せる。


「うるさいってば」

「抱き締めたい!」

「あーもう、やめてっ! いい加減にしてっ」

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