3話 パフェからの帰宅
パフェを食べ終えファミリーレストランを出る。
予想していたより時間が経っていた。
リリィはというと、最初は迷っているようだったが最終的には提案に乗ってくれ、私の家に来てくれることとなった。
「パフェ美味しかったー!」
「……払ってもらって罪悪感」
注文する時も出てきた時もそれほど乗り気でなかったリリィだが、少し口にした途端、目の色を変えた。そしてあっという間にパフェを平らげてしまった。
パフェを食べている時の夢中になっている顔。
とても可愛かった。
「いいっていいって! 気にしないで」
「でも……」
腹はある程度満ちただろう。となれば、次は身体の汚れだ。身体を綺麗すればきっともっとすっきりするはず。汚れを洗い流せば爽やかな気持ちになれるに違いない。それに、入浴は、色々あった疲れを癒やすのにももってこいだ。
「帰ったらまずお風呂に入るといいかも。かなりすっきりするから」
「何を勝手に……!?」
威嚇しようと頑張る子犬のような顔をするリリィ。
「警戒しないで。変なことはしないから」
「……意味不明」
「うちはこっち! 一緒に来て」
「……ホント、意味不明」
なかなか足を進めない彼女は俯いたままぽつりと漏らす。
無理矢理動かそうとし過ぎただろうか。
善意にせよ強制するのは良くない、か。なるべく、彼女が嫌がることはしたくない。無理してほしくないし。
「ごめん、無理矢理」
取り敢えず謝罪。
するとリリィはぷいと視線を背けた。
「……それは、べつにいいケド」
「え? じゃあ何?」
「……ホントに……あたしを迎え入れる気?」
確かにリリィの話は非現実的だ。話す者が真剣な面持ちでなければ、信じられなかっただろう。そして、話が事実なら、彼女はかつて悪に染まっていた。それもまた一つの事実。けれども、話によれば、彼女はもう悪から離れた。今の彼女は昔の彼女とは違う。
それに、私はリリィが好きだ。
初対面でこんなことを思うのは珍しいことだけれど。
恋愛的な意味ではないけれど好きだし、友達になりたいし、同じ時間を過ごしたいと思う。だから、彼女を家へ招くことに躊躇いはない。
「リリィちゃんのこと、信じてる!」
「馬鹿じゃないの」
「パフェ食べた仲、よね? ね?」
「……ホント呆れる」
リリィは素直ではなかった。
すぐにぷいっと私とは違う方向を向いてしまう。
でも私には分かる、喜んでくれているのだと。いや、もちろん、根拠があるわけではないのだけれど。ただ、生物の本能的に、彼女が喜んでいると察することができる気がするのだ。
「一緒に来てくれる?」
「……ま、ね」
「やった! 嬉しい、ありがとう!」
こうして私はリリィを連れて家へ帰った。
見知らぬ少女を連れ帰宅した私を見て、母親は大層驚いていた。無理もない、いきなりのことだったから。だが、私が軽く事情を説明したところ、理解してもらうことができた。