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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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31話 騒ぎになっていたみたい

 連れ去られた時はどうなることかと思ったが、ローザの協力もあり、無事家へ帰ることができた。

 リリィに再会したのは家の入り口の扉を開けてすぐのところ。


「ただいま」

「日和!」


 母親のみならずリリィも心配してくれていたようで、私を見た瞬間かなり驚いたような表情を浮かべていた。


「生きてたの……!」


 生きてたの、なんて、そんな風に驚かれる日が来るなんて夢にも思っていなかった。


 けれどもその驚きもおかしなものではないのかもしれない。だって、いきなり連れ去られたのだから。命があるまま帰ってくることができたのは運が良かっただけ。味方はいない状況だったのだし、相手の意図も不明だ、命を落としたとしてもおかしくはなかった。


 助かった幸運に心から感謝しなくては。

 そして、助けてくれた彼にも。


「うん、何とか」


 こちらを見つめるリリィの宝玉のような瞳は今もまだ不安げに震えている。


「誘拐されたって聞いたケド……」

「聞いたの!?」


 どうやら事情はしっかり伝わっていたらしい。

 もっとも、それも当然か。

 校門前で連れ去られたのだから目撃者がいないとは考え難い。それに、目撃者がいれば黙ってはいないだろうし。そこから本人の家族に話が流れていくというのも、不自然なことではない。


「噂になってた」

「そうなんだ……。心配させてごめん」

「なっ、何それ! 心配とか! してないしっ!」


 リリィは急に赤面する。

 何がそんなに恥ずかしいのやら。


「実はね、ローザさんが助けてくれたんだ」

「ローザ?」

「そう! 彼が迎え来てくれたんだ! 助かったー」

「……ふーん」


 リリィは何やら不満そうである。


「必要ならあたしが迎えに行ったのに」

「ええっ」

「ローザのやつ、抜け駆けして……!」


 いや、もう、何の話をしているのか分からなくなってきた。


「……でも、ま、助かって良かった」


 控えめに言うリリィを抱き締める。


「ありがとうっ!」


 今は帰ってくることができた幸運に礼を言おう。

 そして生きている今を大切にしよう。


 その後母親が学校に連絡してくれた。怪我もなく帰ってきた、と。それによって誘拐による騒ぎは一旦落ち着いた。


 だがすべてが終わったわけではない。


 後日学校で先生に呼び出され「何がどうなっていたのか」とか「どこへ連れていかれて、どうやって帰ってきたのか」とか聞かれた。けれど私はまともに答えられなかった。


 だって、あそこがどこかなんて、私は知らないんだもの。


 知人の男性が助けてくれた、とは一応伝えておいた。


 それからもしばらくは周囲の人たちから色々言われたり聞かれたりした。ただ、幸運であったのは、私を傷つけるようなことを言う者はいなかったことだ。形は様々だけれど、皆、私のことを心配してくれていた。私を批判する人はいなかった。


 そうして時が経つに連れ、騒ぎは忘れられていく。


 悲しいような、嬉しいような、だ。

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